Doc:Radiation/Natural
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+ | お茶の飲料メーカー各社が「消費者を安全させることが重要」(6月4日朝日新聞報道)として独自の安全確認をするとしていますが、その方法や基準等も明らかにされていません(報道では米国製の放射線測定器を輸入とありますが、以下に書くように放射線測定では元素の特定はできません)。 | ||
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+ | * 天然には放射性のカリウム40が存在する | ||
+ | * カリウム40だけで、パセリは 300 Bq / kg 、乾燥コンブや乾燥ワカメは 1500 Bq / kg の放射線を持つ | ||
+ | * 放射線測定器(ガイガーカウンター)だけでは、セシウムの放射線か天然カリウムの放射線かは区別できない | ||
+ | * 放射線の検査では、何をどう測定したかを明らかにして判断することが重要 | ||
===自然放射線=== | ===自然放射線=== | ||
放射性物質は天然にも存在し、人体にはほぼ一定の自然放射性物質が溜まっています。 | 放射性物質は天然にも存在し、人体にはほぼ一定の自然放射性物質が溜まっています。 | ||
+ | 例えば、カリウム 1 g から必ず 30.4 ベクレルの放射線が出ています。 | ||
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+ | これら天然の放射性物質のため、カリウムを豊富に含む食品から自然に放射線が出ています。 | ||
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+ | この他の食品については、[http://www.eiyoukeisan.com/calorie/nut_list/kalium.html 栄養成分表のカリウム量] をみて 1 g あたり 30.4 Bq をかければ放射線量が割り出せます。乾燥茶葉が 500 Bq / kg を超えたときに、お茶の粉末を食べる人もいるから危険である等の議論がなされていますが、乾燥茶葉として摂取する量はグラム単位です。同じベクレル数は、フリカケ中の乾燥ワカメや、魚の切り身でも摂取しているのです。 | ||
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+ | ==食品における放射線の基準 (日本)== | ||
+ | 以下の値は NHK科学文化部がまとめた[http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/600/79101.html ブログ]から引用しました。 | ||
+ | ヨウ素とセシウムでそれぞれ基準が定められています。飲料水と乳製品は両者を合計するとよく言われる 1kg あたり 500 Bq という値になります。 | ||
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+ | * 飲料水、乳製品 300 Bq / リットル | ||
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+ | ;放射性セシウム | ||
+ | * 飲料水、乳製品 200 Bq / リットル | ||
+ | * 野菜や肉、それに卵や魚などそのほかの食品 500 Bq / kg | ||
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+ | 厚生労働省が発表する野菜等のベクレル数は、セシウムやヨウ素毎に値が出ています (値は産業技術総合研究所[http://38.127.226.20/~alca/nuclear/ 河路さん] のサイトにまとめられています)。 | ||
+ | これらの値を計測・算出するのは大変な作業で、個人的には企業等が簡単に導入・実施できることではないと思います。 | ||
+ | 茶葉に関していうと、以下のような記述になると思います。 | ||
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+ | ! 食品 || カリウム量 (g / kg) || カリウムによる放射線 (Bq / kg) || + セシウムによる放射線 | ||
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+ | | 抹茶(乾燥) || 27 || 810 || どう判断するのでしょう? | ||
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+ | 抹茶は和菓子にも使いますがもともと 810 Bq / kg あります。これに 500 Bq 上乗せされたら出荷停止だとしたら、再考が必要ではないかと(個人的には)思います。 | ||
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+ | ==食品への影響== | ||
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Revision as of 08:54, 4 June 2011
もくじ | 基礎知識 | 自然放射線 | 人体への影響 | 胎児と子供 | ファイトレメディエーション | 土壌汚染 | 移行係数 | 食品汚染 | 家畜汚染 | Q&A とリンク |
文責: 有田正規 (東大・理・生物化学) 質問、コメント、誤り指摘、リクエスト等は arita@bi.s.u-tokyo.ac.jpまで
最近はお茶から出る放射線で一騒動ありますが、個人的には過剰反応だと思います。 お茶の飲料メーカー各社が「消費者を安全させることが重要」(6月4日朝日新聞報道)として独自の安全確認をするとしていますが、その方法や基準等も明らかにされていません(報道では米国製の放射線測定器を輸入とありますが、以下に書くように放射線測定では元素の特定はできません)。
ここでは、自然界にある放射線の情報をすこしまとめます。ベクレルは Bq と記述します。
- まとめ
- 天然には放射性のカリウム40が存在する
- カリウム40だけで、パセリは 300 Bq / kg 、乾燥コンブや乾燥ワカメは 1500 Bq / kg の放射線を持つ
- 放射線測定器(ガイガーカウンター)だけでは、セシウムの放射線か天然カリウムの放射線かは区別できない
- 放射線の検査では、何をどう測定したかを明らかにして判断することが重要
自然放射線
放射性物質は天然にも存在し、人体にはほぼ一定の自然放射性物質が溜まっています。 例えば、カリウム 1 g から必ず 30.4 ベクレルの放射線が出ています。 また、成人男子は体の中に 120 g のカリウムを含みます[1]。
元素 | 存在比 (%) | 成人男子の (60kg) 体内量 | 解説 |
---|---|---|---|
カリウム40 | 0.0117 | 3600 Bq (60 Bq / kg) | 120 × 30.4 = だいたい 3600 Bq |
炭素14 | ほぼ0 | 2500 Bq (41 Bq / kg) | 同位体の存在比は 10-8 程度と大変少ないのですが、半減期も早くβ線を強く出します。 |
ルビジウム87 | 27.83 | 500 Bq (8 Bq / kg) |
また空気には大地から染み出すラドンが含まれており、40 Bq / m3 程度あるようです[2]。 これら天然の放射性物質のため、カリウムを豊富に含む食品から自然に放射線が出ています。
食品 | カリウム量 (g / kg) | ベクレル (Bq / kg) |
---|---|---|
パセリ | 10 | 300 |
ひきわり納豆 | 7 | 210 |
ホウレンソウ | 6.9 | 200 |
カツオ、タイなど | 4-5 | 120-150 |
コンブやワカメ(乾燥) | 52-53 | 1560-1590 |
この他の食品については、栄養成分表のカリウム量 をみて 1 g あたり 30.4 Bq をかければ放射線量が割り出せます。乾燥茶葉が 500 Bq / kg を超えたときに、お茶の粉末を食べる人もいるから危険である等の議論がなされていますが、乾燥茶葉として摂取する量はグラム単位です。同じベクレル数は、フリカケ中の乾燥ワカメや、魚の切り身でも摂取しているのです。
食品における放射線の基準 (日本)
以下の値は NHK科学文化部がまとめたブログから引用しました。 ヨウ素とセシウムでそれぞれ基準が定められています。飲料水と乳製品は両者を合計するとよく言われる 1kg あたり 500 Bq という値になります。
- 放射性ヨウ素
- 飲料水、乳製品 300 Bq / リットル
- 牛乳 100 Bq / kg
- 野菜(イモや根菜を除く) 2000 Bq / kg
- 魚介類 2000 Bq / kg
- 1歳未満の乳児が飲む水道水 100 Bq / kg, 1 歳以上 300 Bq / kg
- 放射性セシウム
- 飲料水、乳製品 200 Bq / リットル
- 野菜や肉、それに卵や魚などそのほかの食品 500 Bq / kg
厚生労働省が発表する野菜等のベクレル数は、セシウムやヨウ素毎に値が出ています (値は産業技術総合研究所河路さん のサイトにまとめられています)。 これらの値を計測・算出するのは大変な作業で、個人的には企業等が簡単に導入・実施できることではないと思います。 茶葉に関していうと、以下のような記述になると思います。
食品 | カリウム量 (g / kg) | カリウムによる放射線 (Bq / kg) | + セシウムによる放射線 |
---|---|---|---|
抹茶(乾燥) | 27 | 810 | どう判断するのでしょう? |
日本茶(玉露) | 3.4 | 100 | 500 Bq 以上で出荷停止 |
抹茶は和菓子にも使いますがもともと 810 Bq / kg あります。これに 500 Bq 上乗せされたら出荷停止だとしたら、再考が必要ではないかと(個人的には)思います。