Doc:Radiation/Contamination
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もくじ | 基礎知識 | 自然放射線 | 人体への影響 | 胎児と子供 | ファイトレメディエーション | 土壌汚染 | 移行係数 | 食品汚染 | 家畜汚染 | Q&A とリンク |
文責: 有田正規 (東大・理・生物化学) 質問、コメント、誤り指摘、リクエスト等は arita@bi.s.u-tokyo.ac.jpまで
Contents |
土壌汚染の程度
- まとめ
- 土壌が「汚染」されたとする指標は 1m2あたり37000 Bq (ベクレル) = 1km2あたり 1 Ci (キュリー) = 1m2あたり 1850 ∼ 493 Bq / kg 土壌
- チェルノブイリでは、上記の汚染地域には立ち入り禁止 (長期的に住むことは健康被害の可能性がある)
- 福島県の各所では、上記の汚染基準よりも高い放射線量が観測されている[1]
3月20日の報道によると、原発から北西に約40kmの福島県飯舘村で163000 Bq/kg Cs-137によるの土壌汚染が見つかっています。この時の朝日新聞記事に、京都大原子炉実験所の今中哲二助教(原子力工学)の換算で1m2あたり3,260,000 Bq[4]、金沢大の山本政儀教授(環境放射能学)の換算(1m2×5cm, 土壌密度1.5程度と仮定)でセシウム濃度約12,000,000 Bqと算定しています[5]。セシウムがすぐに土壌 5cm に浸透することは考えにくいですが (ファイトレメディエーションのページを参考にしてください)、kgあたりのベクレル数を20∼75倍する換算法は下限値および上限値の見積もりとして妥当でしょう。
- 参考情報
- ↑ 福島県における放射性物質の測定結果
- ↑ 旧ソ連では30km圏内にいた1987年5月に5万の牛, 1万3千の豚, 3300の羊, 700の馬を移住させています。同時に2万の家畜や犬猫が埋められました。その後7月までに移住させた家畜も含み95500の牛, 23000の豚が埋められました。(Nadtochiy P, Malinovskiy A, Mogar AO, Lazarev N, Kashparov V, Melnik A. Experience of liquidation of the Chernobyl accident consequences. Kiev: Svit; 2003)
- ↑ IAEA. International Atomic Energy Agency. Environmental consequences of the Chernobyl accident and their remediation: twenty years of experience. Report of the UN Chernobyl Forum Expert Group “Environment” (EGE). Vienna, IAEA; 2006
- ↑ これはkgあたりのベクレル数を20倍
- ↑ これはkgあたりのベクレル数を73.6倍
食品汚染対策
ソビエト連邦で1986-1991に定められた、食品における放射線の暫定基準値(Temporary Permissible Levels (TPL), Bq/kg)[1][2] を示します。現在の日本の基準値はこれよりも厳しくなっています。
TPL | 4104-88 | 129-252 | TPL-88 | TPL-91 | |
---|---|---|---|---|---|
採択日 | 06.05.1986 | 30.05.1986 | 15.12.1987 | 22.01.1991 | |
核種 | 131I | β-emitters | 134+137Cs | 134+137Cs | 90Sr |
牛乳 | 370–3700 | 370–3700 | 370 | 370 | 37 |
乳製品 | 18,500–74,000 | 3700–18,500 | 370–1850 | 370–1850 | 37–185 |
肉・肉製品 | – | 3700 | 1850–3000 | 740 | – |
魚介類 | 37,000 | 3700 | 1850 | 740 | – |
卵 | – | 37,000 | 1850 | 740 | – |
野菜・果実・根菜類 | – | 3700 | 740 | 600 | 37 |
パン・小麦・穀類 | - | 370 | 370 | 370 | 37 |
食品汚染への対策
- 半減期の短い放射性ヨウ素汚染の広がりを防ぐために
- 牛乳の放射線検査を徹底すること
- 放射線検査に不合格の牛乳は、粉末ミルク、チーズやバターに加工する
- 家畜は放牧せずに屋内で汚染されていない飼料を与えること
- 半減期の長い放射性セシウム汚染の広がりを防ぐために
- セシウム濃度の高い家畜は市場に流通させない
- 農作物はできるだけ外気に触れさせずに(屋内で)栽培する
- 汚染された家畜の糞を肥料として利用しない
- 牧草でなくとうもろこし等を飼料に与える
- 地元で牛乳を消費しない
- 農産物、牛乳はかならず放射線検査をする
土壌汚染対策
表土を入れ替えるという措置は、コストが非常に高いため農地にはおこなえないという報告[3]があります。表土をどこに廃棄するかも問題になります。また、ファイトレメディエーションは放射性セシウムに対して有効ではありません。
- 土壌汚染を減らす手段
- 表土の入れ替え (skim and burial ploughing)
- 表土5cm部分を中間部分はそのままに地下45cm に移します。単に耕すことで植物に取り込まれる放射性元素は1/2に減りますが、この入れ替え手法で1/15-1/20に減らせるとあります [4]
- 土を中性に保つ
- セシウムやストロンチウムは酸性土壌で植物に吸収されやすくなるので、石灰を撒くなどして中性にします[5] 1 haあたり2-10トンの消石灰を施すと、植物に取り込まれる放射性元素が2/3から1/3に減少します。
- ミネラル性の肥料を施す
- セシウムはカリウムの代わりとして取り込まれるため、Cs:K 比をできるだけK側に偏らせることが重要です。植物がセシウムをとりこまないための最適の肥料成分は N:P:K = 1:1.5:2 という比率です[6]。 チェルノブイリ近隣国におけるカリウム肥料の平均量は60 kg/ha K2Oで、肥料が足りない時には農作物中におけるセシウム量が増加しました。
- 大幅な土壌改良をほどこす
- チェルノブイリ周辺国では、生えている植物をすべて取り除き、耕してから、石灰と施肥、再度撒種するという大幅な土壌改良がおこなわれました(特にウクライナでは800ヘクタールに及ぶ)。この手法は、肥沃な部分が浅い土壌(耕すとその層が失われてしまう)や傾斜地、川沿いには適用できませんが(侵食や土砂崩れの可能性があるため)、土地の種類によって1/2から1/15にまで植物のセシウム吸収量を抑えることができています。
- セシウムをよく吸収する作物は植えない
- セシウムの吸収率は植物によって大幅に異なります。吸収率が高いとされているアカザ科、ヒユ科の作物は植えないようにします。植えるべきではない代表的作物名は、ホウレンソウ、サトウダイコン(ビート)、ホウキグサ(ニワクサ)、オカヒジキ、アマランサスです。
- 菜種、菜の花を植える
- ベラルーシでは、セシウムとストロンチウムの吸収量が少ない菜種 (rape seed)の耕作地を22000ヘクタールに増やしました。菜種は油が採れる上に家畜の飼料になり、広範囲におよぶ汚染地域の場合、有効な利用法になります。(菜種油にすることでセシウム量は0.004倍に減ります。)植物によるセシウムの吸収を抑えるために、ヘクタールあたり6トンの石灰と肥料を施します。
- 参考
- ↑ IAEA. International Atomic Energy Agency. The International Chernobyl Project. Assessment of radiological consequences and evaluation of protective measures. Report by an International Advisory Committee. Vienna, IAEA; 1991
- ↑ Balonov MI (1993) Overview of dose to the Soviet population from the Chernobyl accident and protective actions applied. In: Merwin S, Balonov M, editors. The Chernobyl papers, I, doses to the Soviet population and early health effects studies. Richland: Research Enterprises, pp.23–45
- ↑ Jacob P, Fesenko S, Firsakova SK, Likhtarev IA, Schotola C, Alexakhin RM, et al (2001) Remediation strategies for rural territories contaminated by the Chernobyl accident. J. Environ Radioact 56:51–76
- ↑ J. Roed, K. G. Andersson and H. Prip (1996) The skim and burial plough: A new implement for reclamation of radioactively contaminated land J Environ Radioactivity 33(2):117-128 journal PDF
- ↑ Alexakhin RM. (1993) Countermeasures in agricultural production as an effective means of mitigating the radiological consequences of the Chernobyl accident. Sci Total Environ 137:9–20
- ↑ RIARAE (1991) Russian Institute of Agricultural Radiology and Agroecology. In: Alexakhin RM, editor. Recommendations. Guide on agriculture administrating in areas subjected to contamination as a result of the accident at the Chernobyl NPP for 1991–1995. Moscow: State Commission of the USSR on food and purchases