Aritalab:Lecture/Math/Groebner
グレブナ基底の応用
- イデアル所属問題
- 与えられたイデアル I = < f1, ... , fs > に対して、多項式 f が I に所属するかがわかる。
- 例
I = < f1, f2 > = < xz − y2, x3 − z2 > とおく。 f = − 4 x2y2z2 + y6 + 3z5 とする。ここで f ∈ I かどうかを知りたい。
まず xz − y2, x3 − z2 は I のグレブナ基底ではない。f1, f2 のS-pairの先頭項は LT( − x2y2 + z3 ) = -x2y2 を含むが、これは < LT(f1), LT(f2) > = < xz, x3 > には属さない。
そこでまず I のグレブナ基底を計算する。
G = ( f1, f2, f3, f4, f5 ) = ( xz - y2, x3 - z2, x2y2 - z3, x y4 - z4, y6 - z5 )
これは簡約グレブナ基底である。そして多項式が I に属するかどうかを割り算で判定できる。
f = 0 * f1 + 0 * f2 − 4 z2 f3 + 0 * f4 + 1 * f5 + 0
したがって f ∈ I となる。
- 多項式の連立方程式の解
- 例
連立方程式
- x2 + y2 + z2 = 1
- x2 + z2 = y
- x = z
を考える。この方程式はイデアル I = < x2 + y2 + z2 − 1, x2 + z2 − y, x − z > を与え、これの解空間を求めたい。
ここで lex 順序によってグレブナ基底を計算する。
- g1 = x − z
- g2 = − y + 2 z2
- g3 = z4 + (1/2)z2 - 1/4
特に g3 の多項式は z のみを使っており、これは運よく簡単に解くことができる。
- z = ± (1/2) ( ± &sqrt 5 - 1 )1/2
となる。4つある z の値を g1 , g2 に代入すると x , y の値も一意に決まる。すなわち、もとの連立方程式の解は 4 組あることがわかる。とりわけ lex 順序を使うことが重要である。3章において、lex順序が変数を順番に消去する方法に対応することを学ぶ。
- 陰関数表示化
パラメータ t1, ... , tm を用いて記述される方程式系
- x1 = f1( t1, ... , tm )
- ...
- xn = fn( t1, ... , tm )
を考える。ここからパラメータを消去して xi による多項式を求めるにはどうすればよいか。fi を多項式として、 t1, ... , tm, x1, ... , xn という lex 順序でグレブナ基底を求めると、ti のほうから順に変数が消去されると期待できる。
- 例
パラメータ表示された曲線 V を考えよう。
- x = t4
- y = t3
- z = t2
これを t, x, y, z という lex 順序でイデアル I = < t4 − x, t3 − y, t2 − z > のグレブナ基底を計算する。
- G = { − t2 + z, ty − z2, tz − y, x - z2, y2 - z3 }
最後の二つの多項式 x - z2, y2 - z3 は t を含まない。この基底に相当する多様体は V を含んでいる。問題は
- x − z2 = 0
- y2 − z3 = 0
という1次元の曲線と V との関係にある。これは一致するらしいが、その証明には 3 章の知識が必要になる。
- 例
同じように
- x = t + u
- y = t2 + 2 tu
- z = t3 + 3 t2u
を考えてみよう。t, u, x, y, z という lex 順序でグレブナ基底を計算すると、 x, y, z だけに依存する基底を同じように求められる。