Aritalab:Lecture/Basic/Archaea
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古細菌
日本語ではアーキア (Archaea) が古細菌と呼ばれることが多いのですが、アーキアが細菌の一種だと考えられていた時代に使われた archaebacteria という用語の和訳であるため、時代に合いません。そのためここではアーキアという言葉を使います。
アーキアは(真性)バクテリア (Eubacteria) 、真核生物 (Eukarya)と並ぶ、生命の三大カテゴリーの1つです。地上では余りお目にかかりませんが、温泉や塩田、海底の熱水噴出孔などの極限環境や、海底ではアーキアが優勢です。特に海底は、地下1 m でバクテリア 13 %、アーキア 87 % になり[1]、地球全体でみると、海底堆積物のアーキアが占める炭素量が、陸上の土壌微生物が占める炭素量や海中の微生物が占める炭素量を遙かに凌ぐことが知られています[1]。
- ↑ 1.0 1.1 Lipp JS, Morono Y, Inagaki F, Hinrichs KU (2008) Significant contribution of Archaea to extant biomass in marine subsurface sediments. Nature 454, 991-994
特徴
アーキアは真性細菌と同じ単細胞で、核を持たず、DNAは環状です。
- 真正細菌と似ているところ
- 核やミトコンドリアがない
- ただし、真核生物でもミトコンドリアを持たないアーケゾア(Archaezoa)と呼ばれる生物もいます。しかしアーケゾアでも核内にミトコンドリア由来の遺伝子を持つため、ミトコンドリア共生後に失ったと考えられています[1]。またアーケゾアは細胞小器官 (hydrogenosome, mitosome) も持っています。
- 単細胞、環状DNA、オペロン構造、70s リボソーム
- 細胞小器官が無い
- 高温で生育できる種がある
- 真核生物と似ているところ
- ヒストンタンパク質をもつ
- イントロンを持つ
- 真性細菌とも真核生物とも違うところ
- 細胞壁にムレインが無く、脂肪酸ではなくイソプレン由来のエーテル脂質で構成される
- メタン生成をおこなう
- ↑ Keeling PJ (1998) A kingdom’s progress: Archezoa and the origin of eukaryotes. Bioessays 20:87-95
- 古細菌研究の歴史 Cavicchioli, R. (2010) Archaea - timeline of the third domain. Nature reviews, Microbiology 9, 51-61
- Embley TM, Martin W "Eukaryotic evolution, changes and challenges" (review) Nature 440, 623-630
起源
真核生物はメタン生成菌(アーキア)とαプロテオバクテリアが融合して生まれてきたと考えられています[1]。その根拠はメタン菌のヒストンと真核生物のヒストンの類似性です[2]。
- Pyruvate より ATP を生産する hydrogenosome → trichomonads, chytridiomycetes, ciliates に見られ収斂進化?
- mitosome → entamoeba, giardia, microsporidia
- References
- ↑ Rivera MC, Lake JA (2004) The ring of life provides evidence for a genome fusion origin of eukaryotes. Nature 431(2005):152-5 PMID 15356622
- ↑ Reeve J (2003) Archaeal chromatin and transcription. Mol Microbiol 48(3):587-98 PMID 12694606
- 生物全体での系統樹
- SSU rRNA (Pace, N.R. (2009) Mapping the tree of life: progress and prospects. Microbiology and molecular biology reviews : MMBR 73, 565-76)
- Conserved Proteins (Ciccarelli, F.D. et al. (2006) Toward automatic reconstruction of a highly resolved tree of life. Science, 311, 1283-7)
ビデオレクチャー
コドン
AUAのよみかた 真核 AAU というtRNAのアンチコドンがIAUになる。
バクテリア MetのtRNAがIleも担当する。CAUというtRNAのアンチコドンがAUA, AUGとも対合する。TilSというリシジン合成酵素がCをL(リシジン)に変えてIleをコードする。 TilS はATP依存型でP-loopを持つ。
アーキア アンチコドン1文字目がAのtRNAがない。tRNA 修飾ヌクレオチドを含まない。 MAt4728というメチオニンtRNAと言われていたものは、IleのtRNAとわかった。(XAU) アンチコドン1文字目は分子量355の修飾塩基、agmatinylcytidine になっている。 構造はリシジンに似る。アグマチンを取り込む酵素は AF2259 (agmatine + ATP -> agmatidyl cytidine) TiaS(ATP依存型)ただしTilSと反応機構は異なる。 このため、アーキアはアグマチンの生合成を遮断すると致死になる。
参考文献
- 配列比較以外の系統樹構築方法についての概説 (Delsuc, F., Brinkmann, H. & Philippe, H. (2005) Phylogenomics and the reconstruction of the tree of life. Nature reviews. Genetics 6, 361-375)
- 16S rRNAをつかったアーキア系統樹で参考にした論文 (Yarza, P. et al. (2008) The All-Species Living Tree project: a 16S rRNA-based phylogenetic tree of all sequenced type strains. Systematic and applied microbiology 31, 241-50)