Aritalab:Lecture/Programming/Cpp
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C++プログラミング
C++はC言語の完全な上位互換ですが、オブジェクト指向型という点でC言語とは全く違うプログラミング思想に基づいています。 簡単に言うと、JavaのようなプログラムをCで書く為に作られたと言ってよいと思います。
マクロ, inlineの利用
C言語でマクロが果たしていた役割を、C++ではinline関数を用いて実現できます。 関数定義を
inline int cmp(const char& x, const char& y) { if (x < y) return -1; else if (x > y) return 1; else return 0; }
と書いておくと、cmp(x,y)という呼び出しはコンパイル時に全てソース中に展開されます。 実行ファイルが大きくなる点は欠点ですが、処理速度を犠牲にせずに可読性が上がります。
ヘッダーファイル
利用する関数の型情報は.hや.hhという拡張子を持つヘッダーファイルに記述し、それをプログラムの先頭で読み込みます。一番有名なヘッダーは<stdio.h>と<iostream>でしょう。
#include <stdio.h>
iostreamも以前は拡張子(.h)を付けてインクルードしていたのですが、標準化の際に付けないことが決まりました。なので以下のように書いてください。
#include <iostream> using namespace std;
二行目のusing以下は、iostreamで定義される標準入出力 std::cin, std::cout を、std::というネームスペース名無しで利用するために記述します。
ヘッダーファイルはクラスを定義するソースプログラム毎に用意します。ディレクトリ内に.cや.cpp等のファイルと混在してくると面倒です。例えばinclというディレクトリを作り、その中にヘッダーを集めておくと便利でしょう。(コンパイル方法は後述。)
各ヘッダーファイルは、プログラム中で複数回読み込むとエラーになります。ヘッダーファイルの先頭に
#ifndef LIST_HH #define LIST_HH #include "iterator.hh" : #endif
のように、ifndefのおまじないを入れておきましょう。
コンパイルの仕方
統合環境を使わない場合は、Makefileを作りましょう。Makeではタブが意味を持つので注意します。下の例では、ヘッダーをinclディレクトリに記述する場合です。(タブが重要なので、下の内容を単にcopy&pasteしても動きません。)
- 簡単な Make ファイル
CXX = g++ -pg -ansi -g -Wall -Iincl DIRS = src SRCS = $(wildcard *.cc) OBJS = $(wildcard *.o) all clean: rm -f main main: $(SRCS) $(OBJS) $(CXX) S(OBJS) -pg -o main
これを用意しておくと、make main や make cleanと打つだけでコンパイルや片づけができます。
- 与えられたファイルを全て結合して表示する cat.cpp
#include <iostream> #include <string> #include <vector> #include <fstream> using namespace std; int main(int argc, char *argv[]) { for(int i=1; i < argc; i++) { //argv[0]には実行ファイル名が入っている vector<string> lines; string line; ifstream inf(argv[i], ios::in); while(getline(inf, line)) lines.push_back(line); inf.close(); for(vector<string>::iterator itr=lines.begin(); itr != lines.end(); itr++) cout << itr->c_str() << endl; } }
クラス定義
class class名 { private: // 外からアクセスできない変数やメンバー関数 public: // 外からアクセス可能な変数やメンバー関数 };
と定義します。C言語における構造体との主な違いはアクセス制限です。 クラス定義の中では、自分自身をthisポインタで参照することができます。
メモリ管理
コンストラクタとデストラクタ
C++のクラス定義では、例えば以下のような記述をします。
class list_node; typedef list_node* lnode; class list_node { private: list_node(const list_node&); list_node& operator=(const list_node&); public: void* key; lnode list_pred; lnode list_succ; list_node(GenPtr x=0x0) : key(x), list_pred(0), list_succ(0) {} ~list_node() {} };
この中でlist_node(GenPtr x=0x0)とあるのがコンストラクタ、~list_node()がデストラクタで、それぞれクラスのインスタンス生成、消去時に呼び出されます。コンストラクタ内ではクラス変数の初期化、デストラクタ内では必要なくなったポインタのnull化などをしておくと良いでしょう。(後者は無駄に思えるかもしれませんが、バグをなくすのに役立ちます。)
コピーコンストラクタと演算子のオーバーロード
上の例でprivate指定でアクセス制限されているのが、コピーコンストラクタlist_node(const list_node&)と演算子=の定義list_node& operator=(const list_node&)になります。 コピーコンストラクタは、
list_node x = 既に定義されているlist_nodeクラス;
と=をつけて初期化する場合と、関数にクラスを(参照渡しではなく)値渡しするときに実行されます。 また、演算子=のほうは、
list_node x,y; x = y = 既に定義されているlist_nodeクラス;
と書かれたときに実行されます。上の例では、list_nodeクラスがユーザに無闇にコピーされることを防ぐためにprivate指定にしています。
new と delete
Cにおけるmalloc/freeと、new/deleteは同じではありません。 クラスのnew/deleteでは、コンストラクタとデストラクタが呼ばれることに注意しましょう。 基本データ型のnew/deleteは、基本的にmalloc/freeと同じですが、void*しか返さないmallocに比較して型キャストの必要がありません。
ですから、C++らしいプログラムを心がけるには、常にnew/deleteを使うと良いでしょう。
- 働きの全く同じ二つの例
char** cArray = new char*[10]; delete[] cArray; char** cArray2 = (char**) malloc(sizeof(char)*10); free(cArray2);
Garbage Collection
Javaとの最大の違いは、メモリ管理を自分で行う点です。これは単に「遅れている」という訳ではなく、実時間プログラミングのようなGarbage collector(GC)が致命的となる場合でも用いられる「汎用性」と捉えましょう。メモリ管理を放棄したい人は、C++で非常に有名なBoehm GCを使いましょう。