Aritalab:Lecture/NetworkBiology/Diffusion
(→拡散過程) |
(→Chapman-Kolmogorov 等式) |
||
Line 87: | Line 87: | ||
が成立するので、2'および3'が成立する際には収束する成分は ε 近傍内に限られます。 | が成立するので、2'および3'が成立する際には収束する成分は ε 近傍内に限られます。 | ||
− | == | + | ==Kolmogorov 微分方程式== |
− | : p ( y, s; x, t ) = <math>\int^{\infty}_{-\infty} p(y, s; z, u) p(z, u,; x, t) dz,\ \ t < u < s </math> | + | コルモゴロフ微分方程式には前向きと後ろ向きがあります。遷移確率が移動先(未来)の状態、あるいは移動元(過去)の状態を用いて記述されるかの違いです。 |
+ | |||
+ | *前向き: (y,s) を用いて記述 | ||
+ | : <math>\textstyle \frac{\partial p(y,s;x,t)}{\partial s} = - \frac{\partial [a(y,s)p(y,s;x,t)]}{\partial y} + \frac{1}{2} \frac{\partial^2[b(y,s)p(y,s;x,t)]}{\partial y^2}</math> | ||
+ | *後ろ向き: (x,t) を用いて記述 | ||
+ | : <math>\textstyle \frac{\partial p(y,s;x,t)}{\partial t} = -a(x,t)\frac{\partial p(y,s;x,t)}{\partial x} - \frac{1}{2}b(x,t)\frac{\partial^2 p(y,s;x,t)}{\partial x^2}</math> | ||
+ | |||
+ | 以下のChapman-Kolmogorov等式と | ||
+ | : <math>\textstyle p ( y, s; x, t ) = \int^{\infty}_{-\infty} p(y, s; z, u) p(z, u,; x, t) dz,\ \ t < u < s </math> | ||
+ | : <math>\textstyle 1 = \int^{\infty}_{-\infty} p(z,t;x,t-\Delta t)dz</math> | ||
+ | という式を使って z についてテーラー展開します。 | ||
+ | :<math> | ||
+ | \begin{align} | ||
+ | \textstyle & p(y,s;x,t-\Delta t) - p(y,s;x,t)\\ | ||
+ | &=\textstyle [p(y,s;x,t-\Delta t) - p(y,s;x,t)] \int^{\infty}_{-\infty} p(z,t;x,t-\Delta t)dz\\ | ||
+ | &=\textstyle \int^{\infty}_{-\infty} p(z,t;x,t-\Delta t)[p(y,s;z,t) - p(y,s;x,t)] dz\\ | ||
+ | &=\textstyle \int^{\infty}_{-\infty} p(z,t;x,t-\Delta t)\Big[ (z-x) \frac{\partial p(y,s;x,t)}{\partial x} + \frac{(z-x)^2}{2} \frac{\partial^2 p(y,s;x,t)}{\partial x^2} + O( (z-x)^3 ) \Big] | ||
+ | \end{align} | ||
+ | </math> | ||
+ | ここで両辺を Δ t で割って Δ t → 0 とおけば後ろ向きの微分方程式が得られます。 |
Revision as of 13:55, 27 June 2012
ランダムウォークとブラウン運動
数直線上で原点から出発するランダムウォークが左(負の方向)にいく確率を q 右(正の方向)にいく確率を p とします。ここで p + q = 1 です。時刻 t において位置 x にいる確率を u ( x , t ) と書いて漸化式を作ると
となります。ここで Δx が歩幅、Δt が単位時間です。この式で右側をテイラー展開してみます。
u( x , t ) を移項して全体を Δ t で割ります。
ここで以下の収束条件を仮定します。
式を書きなおすと
このとき、離散時間のランダムウォークから話を始めましたが u ( x , t ) は連続時間・連続位置の確率分布関数になっています。これをドリフトつき拡散方程式と呼びます。また、前向きのコルモゴロフ微分方程式とも呼ばれます。
p = q = 1/2 のとき、c = 0 となります。この場合をブラウン運動と呼びます。さらに D = 1 のとき、標準ブラウン運動、またはウィーナー過程と呼びます。
この方程式を解くには初期条件が必要です。時刻 0 において確率 1 で位置 0 にいると仮定すると、解は平均が ct 分散が Dt の正規分布になります。
ここで上記の収束条件は重要です。分散と平均が有限値に収まるためには c, D が有限値に収束しなくてはなりません。
拡散過程
連続時間の確率過程 { X(t) : t ∈ [ 0, ∞ ) } における次状態が、現在の状態にのみ依存する場合をマルコフ過程と呼びます。
時刻 t で状態 x から、時刻 s で状態 y に遷移したとき、その確率密度関数を p ( y, s; x, t ) とかきます。ここでは時間について一様 (homogenious) であることを仮定します。
- p ( y, s + Δt; x, t + Δt) = p ( y, s; x, t )
つまり Δ 時間ずらしても遷移に影響はありません。連続時間のマルコフ過程が如何なる ε >0 に対しても次の条件を満たすとき、それを拡散過程と呼びます。
1.
- (微小時間 Δ t における、ε近傍より大きな移動は無視できる)
2.
- (微小時間 Δ t における移動距離の平均値は a)
3.
- (微小時間 Δ t における移動距離の分散は b)
これらの式はより条件の厳しい以下の式から導けます。
1'. for some δ > 2
2'.
3'.
この式は平均や分散を使って y - x = ΔX(t) と書きなおせば
1'. for some δ > 2
2'.
3'.
となります。条件 1'は ε近傍も含めて 3 次以上の項が 0 になることを示しています。また ε 近傍より大きなところでは
が成立するので、2'および3'が成立する際には収束する成分は ε 近傍内に限られます。
Kolmogorov 微分方程式
コルモゴロフ微分方程式には前向きと後ろ向きがあります。遷移確率が移動先(未来)の状態、あるいは移動元(過去)の状態を用いて記述されるかの違いです。
- 前向き: (y,s) を用いて記述
- 後ろ向き: (x,t) を用いて記述
以下のChapman-Kolmogorov等式と
という式を使って z についてテーラー展開します。
ここで両辺を Δ t で割って Δ t → 0 とおけば後ろ向きの微分方程式が得られます。