Tochimoto:Crocus
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出典: 栃本天海堂創立60周年記念誌 |
サフラン (Crocus)
サフランは地中海沿岸を原産とするアヤメ科のサフラン Crocus sativus Linnéの柱頭を基原とする。日本には薬として伝来し、明治時代から栽培が行われ海外にも輸出されたことがある。海外では料理の着色に使用され、スペイン料理のパエリア、インド料理のサフランライスなどは有名で、高価な香辛料とされているが、日本では日局初版(1886年)から収載されており、冷え症、血色不良などの婦人薬の医薬品として利用されている。子宮収縮作用、通経作用があり、妊婦には禁忌とされており、また食品としての大量摂取にも注意が必要である。 スペイン・ギリシャ・イラン・インド・中国など世界各地で栽培されている。日本では大分県竹田市が主産地で、以前は約500kg/年の生産量があったが、近年は約50kg/年まで落ち込んでいる。 (より詳しく見る→栃本天海堂創立60周年記念誌)
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サフラン:洎芙蘭
『日本薬局方 第15改正(JP15)』
- サフラン:CROCUS
- サフラン Crocus sativus Linné (Iridaceae) の柱頭と規定されている。
『中華人民共和国薬典 2005年版』
- 西紅花:STIGMA CROCI
- 番紅花 Crocus sativus L. の干燥した柱頭と規定されている。
『大韓薬典 第9改正』
- 사프란 蕃紅花: CROCUS
- 사프란 Crocus sativus Linnéの柱頭と規定されている。
市場流通品と現状
日本市場にはスペイン産、イラン産、中国産と日本産が流通している。一般的な品質評価では日本産が最も良品とされ、次いで中国産、スペイン産、イラン産となっている。柱頭の大きさも品質評価に準じて小さくなり、日本産と中国産は鮮明な赤色で、スペイン産とイラン産は少し暗い赤色である。
1988年当時の年間輸入実績はスペイン1,635kg、中国70kg、イラン10kgと圧倒的にスペイン産で市場は占められ、平均輸入申告価格は14万円台/kgであった。しかし1993年には中国の生産量が増大し、年間輸入実績は中国889kg、スペイン892kg、イラン148kgとなり、平均輸入申告価格は10万円/kgを割り込んでしまった。さらに2001年にはイラン産が急増し、年間輸入実績はイラン1,637kg、中国947kg、スペイン626kgとなり、平均輸入申告価格も8万円/kgを割り込む最低価格となった。
その後、イランの輸出価格統制や、中国国内の需要拡大などで価格が上昇し、2008年には平均輸入申告価格が25万円を超える高値になり、日本産のサフランが最安値の価格となった。これら輸入サフランに翻弄され、1970年代には400戸近い生産農家があった大分県竹田地区は、現在では80戸足らずに減少し、生産量の回復は無理な状況である。約20年前に、日本産サフランの大口納入先であった薬用酒の処方変更によりサフランが外れたことも日本産サフランの生産には大きな痛手であったと考えられる。
- 中国産サフランの動向
中国産サフランは日本から球根を持ち込み、上海周辺で日本式栽培と同じ棚栽培を指導し生産させたもので、品質は日本産と同等と評価されている。日本市場では日本産サフランの代用として消費が伸びたが、中国国内の需要拡大などで価格が急騰し、日本の輸入量も激減している。
- 日本産サフランの動向
日本産サフランの生産量は下降線をたどり、わずかな農家によって約50kg/年が生産されているだけであり、2009年の新産は約40kgといわれ、生産者価格は32万円/kgを超える。
生産加工状況
- 日本の栽培 (大分県竹田市)
- 生産工程
- 11月下旬〜12月初旬 雌しべを取った球根を畑に植える
- 4月下旬〜5月初旬 球根を掘り上げ、葉を束ねて日陰に吊るして陰干しする
- 7月下旬〜8月初旬 球根を棚に移す
- 11月頃 花を摘み、雌しべを採取する
- 中国の栽培 上海崇明県
日本の球根で繁殖が進み、生産量は飛躍的に増大している。栽培方法は基本的に大分県竹田市と同じ棚栽培が行われている。
理化学的品質評価
産地 | 検体数 | 灰分 7.5%以下 |
乾燥減量 12.0%以下 |
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日 本 | 86 | 4.5 ±0.5 | 7.8 ±1.3 |
中 国 | 84 | 4.5 ±0.6 | 11.3 ±1.5 |
スペイン | 47 | 4.3 ±1.0 | 11.8 ±1.5 |
イラン | 71 | 4.8 ±0.6 | 8.4 ±1.5 |
- 灰分
- イラン > 日本,中国,スペイン ( p < 0.05 )
- 日本 > スペイン ( p < 0.05 )
- 乾燥減量
- スペイン,中国 > イラン > 日本 ( p < 0.05 )
- 成分含量の比較
- JP15 成分含量測定法の標準溶液を 100 % として、算出したDATAによる 対象:2000年〜2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む)
- 日本 > イラン,中国,スペイン ( p < 0.05 )
内部形態:鏡検
<生薬の性状> JP15 本品は細いひも状で、暗黄赤色〜赤褐色を呈し、長さ 1.5〜 3.5cm、3分枝するか又は分離し、分枝する一端は広がり他方は次第に細まる。 本品は強い特異なにおいがあり、味は苦く、だ液を黄色に染める。本品を水に浸して軟化し、鏡検するとき、柱頭の先端には長さ約150μmの多くの突起があり、少数の花粉粒を伴う。
●サフラン <イラン>
・表皮細胞は長条状を呈し、壁は薄く微かに湾曲している。外壁は乳頭状に突出して認められる。
・外壁は乳頭状に突出して認められる。
・本品を水に浸して軟化し、鏡検するとき、柱頭の先端には長さ約150μmの多くの突起があり、少数の花粉粒を伴う。
・ふつう柱頭は表皮細胞に乳頭状の突起や毛が発達し、粘液を出したりして、花粉を受けとめやすくなっている。(「植物の世界」)
・内部は中空になっている。
●サフラン <中国>
●サフラン <日本>