Aritalab:Lecture/NetworkBiology/Diffusion
ランダムウォークとブラウン運動
数直線上で原点から出発するランダムウォークが左(負の方向)にいく確率を q 右(正の方向)にいく確率を p とします。ここで p + q = 1 です。時刻 t において位置 x にいる確率を u ( x , t ) と書いて漸化式を作ると
となります。ここで Δx が歩幅、Δt が単位時間です。この式で右側をテイラー展開してみます。
u( x , t ) を移項して全体を Δ t で割ります。
ここで以下の収束条件を仮定します。
式を書きなおすと
このとき、離散時間のランダムウォークから話を始めましたが u ( x , t ) は連続時間・連続位置の確率分布関数になっています。これをドリフトつき拡散方程式と呼びます。また、前向きのコルモゴロフ微分方程式とも呼ばれます。
p = q = 1/2 のとき、c = 0 となります。この場合をブラウン運動と呼びます。さらに D = 1 のとき、標準ブラウン運動、またはウィーナー過程と呼びます。
この方程式を解くには初期条件が必要です。時刻 0 において確率 1 で位置 0 にいると仮定すると、解は平均が ct 分散が Dt の正規分布になります。
ここで上記の収束条件は重要です。分散と平均が有限値に収まるためには c, D が有限値に収束しなくてはなりません。
拡散過程
連続時間の確率過程 { X(t) : t ∈ [ 0, ∞ ) } における次状態が、現在の状態にのみ依存する場合をマルコフ過程と呼びます。
時刻 t で状態 x から、時刻 s で状態 y に遷移したとき、その確率密度関数を p ( y, s; x, t ) とかきます。ここでは時間について一様 (homogenious) であることを仮定します。
- p ( y, s + Δt; x, t + Δt) = p ( y, s; x, t )
つまり Δ 時間ずらしても遷移に影響はありません。連続時間のマルコフ過程が如何なる ε >0 に対しても次の条件を満たすとき、それを拡散過程と呼びます。
1.
- (微小時間 Δ t における、ε近傍より大きな移動は無視できる)
2.
- (微小時間 Δ t における移動距離の平均値は a)
3.
- (微小時間 Δ t における移動距離の分散は b)
これらの式はより条件の厳しい以下の式から導けます。
1'. for some δ > 2
2'.
3'.
この式は平均や分散を使って y - x = ΔX(t) と書きなおせば
1'. for some δ > 2
2'.
3'.
となります。条件 1'は ε近傍も含めて 3 次以上の項が 0 になることを示しています。また ε 近傍より大きなところでは
が成立するので、2'および3'が成立する際には収束する成分は ε 近傍内に限られます。
Chapman-Kolmogorov 等式
- p ( y, s; x, t ) =