Doc:Radiation/Basic
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Revision as of 00:59, 2 April 2011
Contents |
放射性同位体と人体への影響
線量限度
(知恵蔵2011の要約)
個人が受ける放射線量をできるだけ抑えるために設定された値をいいます。国際放射線防護委員会(ICRP)が、主として広島、長崎の原爆被爆者のデータを解析して勧告の形で発表している値は、一般人について年間1mSv (ミリシーベルト)、放射線作業従事者には5年間の年平均で20mSv (ただしどの年も50mSvを超えない)です。ただし自然界から普通にうける放射線、レントゲン等の医療放射線は除外します。これは「合理的に達成できる限り(被曝の量を)制限する」という方針に基づいて決められた値です。
(知恵蔵ここまで)
- 主要な線量
- 1 mSv / year 国際放射線防護委員会が勧告する限度 (自然放射線、医療放射線を除く)
- 1.4 mSv / year 自然界から受ける放射線量の日本平均
- 2.4 mSv / year 自然界から受ける放射線量の世界平均 (1988年国連科学委員会報告)[1]
- 6.9 mSv 1回の胸部CTスキャンで浴びる量
- 100 mSv 国立がん研究センターの発表[2]で発ガンリスク 0 とされる線量
- 200 mSv 短期間に浴びると一部の人にがんが発生する可能性があるとされる値
- 260 mSv / year 自然放射線量が多いとされるイラン・ラムサール地域の線量最高値[3]
(ただしウェブサイト[4]に記載された平均値は 10 mSv / year)
- 参考文献
- ↑ この値を普通に生活して浴びる自然放射線量とする報道が多いようです。日本ではもっと低くなります。
- ↑ 国立がん研究センターのホームページに資料があります。
- ↑ サイエンス誌の記事 には線量が260 mグレイ/年とあります。ラムサール地域の人に発ガン率が高いことは全くなく、むしろ健康であることをradiation paradoxとして紹介しています。グレイからシーベルトへの換算には、放射線がベータ線であるとしました。換算は青森の排出放射性物質調査を参考にしました。英語版ウィキペディアを含む多くのウェブサイトでインドのラムサール地方の年間放射線量が 260 mSv/year と記述されていますが、正確には mGray の間違いでしょう。
- ↑ 公益財団法人体質研究会が公開する世界の高自然放射線地域の健康調査には詳しい情報が記載されています。放射線量が年間平均 3.5 (報告された最高値5.4) mSv の中国・陽江、3.8 (最高35) mSv のインド・ケララ地方、10.2 (最高260) mSv のイラン・ラムサール地方における疫学調査で発がん率の増加が認められないことも記されています。
ベクレル, キュリー, グレイ, シーベルト
放射線の吸収度合いを表す単位がグレイ (Gy), 特に人体への影響度合いをあらわすのがシーベルト (Sv) 、放射性物質が放射線を出す能力をベクレル (Bq) または キュリー (Ci) であらわします。ベクレルの詳細についてはウィキペディアを参考にしてください。キュリーは扱う線量が大きいので人体への影響を扱う際には使われません。
- 定義 1キュリー (Ci) = 3.7×1010 ベクレル (Bq)
グレイやシーベルトは人体への影響度合い(吸収される線量)なので、物理的に正確に計測することは難しいと思われます。グレイは吸収線量(放射線が何個吸収されたか)という量で、それに放射線の種類によって異なる係数を掛けたもの(線量当量と呼ぶ)がシーベルトです。ここでの係数は、X線, β線, γ線の場合 1 ですから、これらを出すセシウムやヨウ素については グレイ = (イコール) シーベルト と考えて問題ないでしょう。
- 1グレイ (Gy) = 1 シーベルト (Sv)
ベクレルからシーベルトへの換算は放射性物質毎に異なります。以下の表は原子力資料情報室から作成しました。
記号 | 名前 | 半減期 | 解説 | 吸入摂取した場合の実効線量係数(mSv/Bq) | 経口摂取した場合の実効線量係数 (mSv/Bq) |
---|---|---|---|---|---|
137Cs | セシウム-137 | 30.1年 | セシウムの代表的な放射性同位体。ベータ線とガンマ線を出してバリウム-137になります。 | 6.7×10-6 | 1.3×10-5 |
90Sr | ストロンチウム-90 | 29.1年 | ベータ線を放出してイットリウム-90、更にベータ線を放出してジルコニウム-90になります。 | 7.7×10-5 (チタン酸ストロンチウムの場合) 3.0×10-5 (それ以外) |
2.7×10-6 (チタン酸ストロンチウムの場合) 2.8×10-5 (それ以外) |
131I | ヨウ素-131 | 8.04日 | ベータ線を放出してキセノン-131となり、ガンマ線も出します。 | 1.1×10-5 (ヨウ素化メチル以外) | 2.2×10-5 (ヨウ素化メチル以外) |
野菜の汚染
今回、飯館村で採取された野菜からは1kg当たり放射性ヨウ素17,000ベクレル、セシウム13,900ベクレルが計測されました (2011年3月24日の報道。厚生労働省による)。1日の野菜摂取量の目安は350gなので、汚染された野菜を洗ったりせずに蒸すなどして1日分食べると
17000 × 2.2 × 10-5 × 0.35 = 0.13 mSv
13900 × 1.3 × 10-5 × 0.35 = 0.063 mSv
の被曝を受けます。単純計算で1週間食べ続けると
(0.13 + 0.063) × 7 ≒ 1.35 mSv
になります。ヨウ素-131が環境中に放出され続け、今後も減らないという仮定して上記の量を食べ続けると、37週目で放射線従事者の年間限度である 50 mSv に達します。
実際は洗い流す等の処理で圧倒的に低い放射線量に下がるでしょうから、飯館村で採取された野菜を食べ続けたとしても、発がんリスクは無いというのが科学的な判断です。
- 厚生省の基準値
厚生労働省の定める野菜の摂取制限指標は1kgあたり2,000ベクレルです。上記と同様の計算をおこなってみましょう。ヨウ素-131により基準値ぎりぎり2000ベクレルの汚染がある野菜を、洗いもしないでそのまま1年間摂取し続けた場合
2000 × 2.2 × 10-5 × 0.35 × 365 = 5.62 mSv
の被曝を受けます。
どの程度のベクレル数なら、発がんリスクが生じると考えるべきでしょうか。野菜よりもすべての食品に含まれる「水」で考えたほうが楽なので、次に進んでください。
水道水の汚染
日本における基準値は、1 リットル当たり成人が 300 ベクレル、乳児が 100 ベクレルです。 WHOから資料が出ているので参考にしてください。1 リットルあたり 300 ベクレルの水を飲んでも年間2.5 mSv と計算されています。汚染がヨウ素-131に基づくと仮定すると、1日あたり
2.5 / (2.2 × 10-5 × 300 × 365) = 1.04 リットル
汚染水を摂取する計算になっています。水として飲む分は1リットルかもしれませんが、料理に含まれる水分も考えなくてはなりません。炊いたご飯やスープも多くの水道水を含みます。人間が一日に必要とする水の量は3リットル程度と考えられるので[1]、その水分すべてが汚染されていると考えると、年間 2.5 × 3 = 7.5 mSv になるでしょう。この値でも発がんリスクは0であり、健康には何ら影響がありません。
逆に、半年ぐらい高濃度に汚染された水を飲む状況になった場合、発がんリスクが生じるのはどのくらい汚染された場合でしょうか。1日3リットル摂取するとして、半年で 100 mSv に達するレベルを計算してみます。(1年間に 200 mSv 近く被曝するという仮定です。)
100 / (2.2 × 10-5 × 3 × 180) = 8.4 × 1000
つまり 1 リットルあたり 8,000 ベクレルを超えるぐらい汚染された場合、発がんリスクがあると考えてください。水に限らず、普通の食品についても同じことが言えます。
- 参考情報
- ↑ 一日に体から排出される水分量が2.3リットルという情報がサントリーのウェブサイトにあります。
放射線量と環境
海水汚染と放射能
高度に汚染された水が福島原発2号機のトンネルの立て坑に溜まっていることが報道されています (3月30日朝 東京電力発表)。 報道における汚染度は1 cc (1 ml)のベクレル数で表記されていますが、この濃度の水が、どの程度あるのかを把握することが重要です。4月1日現在では、汚染物質の総量を教えてくれるような正確な情報は入っていません。
- 3月30日朝に発表された 1200 万ベクレルという値
- 12 × 106 Bq / 1cc = 12 × 1012 Bq / ton
発表は、690万ベクレルのヨウ素-131, 200万ベクレルのセシウム-134を含むとしています。
- 過去に廃棄された放射性物質の総量
- 758 × 109 Bq / year フランスのラ・アーグ再処理工場からの2003年の排水中への放射性物質放出量[1]
- 252 × 1012 Bq 旧ソ連が1966年から1992年にかけて極東海域に廃棄した固体放射性廃棄物 (6,812 キュリー)[2]
- 455 × 1012 Bq 旧ソ連が1966年から1992年にかけて極東海域[3]に廃棄した液体放射性廃棄物 (12,337 キュリー)
- 8.5 × 1016 Bq チェルノブイリ原発事故で10日間に放出されたセシウム-137の量
- 176 × 1016 Bq チェルノブイリ原発事故で10日間に放出されたヨウ素-131の量
もし汚染された水が 40 トン分あるとしたら、旧ソ連が25年間かけて極東海域に廃棄した液体放射性廃棄物の量に匹敵します。しかし、同じ放射線量をフランスのラ・アーグ核燃料再処理工場は毎年排出してきたと考えることもできます。(現在の排出量はこれほど多くありません。)
- 参考
- ↑ この値は原子力資料情報室に書かれていたもの。高度情報科学技術研究機構の原子力百科事典にある図によると、再処理工場からの放射性物質量はトリチウムだけで 8000 × 1012 Bq = 8000 TBq (テラベクレル) に読める。同再処理工場からの放出限度は、トリチウム37,000 TBq / year(現在は18,500 TBq)、β, γ 1,700 TBq / year(現在は30TBq)、α 1.7 TBq / year(現在は0.1TBq)とある。以前に比較して環境に影響の少ないトリチウム以外の海洋廃棄が、劇的に減っていることがわかる。
- ↑ 高度情報科学技術研究機構の原子力百科事典より
- ↑ 資料によると廃棄された放射能量が最も多いのが日本海であるが、健康被害はないとされている
喫煙とシーベルト
これから書きます。