Tochimoto:Sinomeni Caulis et Rhizoma

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Tochimoto-logo.gif出典: 栃本天海堂創立60周年記念誌

防已 (Sinomeni Caulis et Rhizoma)

Sinomenium acutum Rehder et Wilson: 日本
Sinomenium acutum Rehder et Wilson: 中国(青風藤)

防已はツヅラフジ科のオオツヅラフジSinomenium acutum Rehder et Wilson のつる性の茎および根茎を基原とする。防已は日本と中国で基原が異なり、文字も「已」「己」の違いがある。中国には広防已(木防已)と粉防已(漢防已)の2種類の防已がある。広防已はウマノスズクサ科で、アリストロキア酸による腎障害を起こす恐れがあるため中華人民共和国薬典2000年版から削除された。粉防已はシマハスノハカズラStephania tetrandra S. Mooreの根茎である。日本の防已と同じオオツヅラフジの茎は、中国では青風藤と称し別名で流通する。中国産防已には広防已・木防已・粉防已・漢防已と呼称が多いため、日本市場では混乱し、1970年頃に漢防已として広防已が中国から輸入されており、当時の市場では漢防已はオオツヅラフジと考えられていた。 (より詳しく見る→栃本天海堂創立60周年記念誌

Contents

防  已

『日本薬局方 第15改正(JP15)』

  • 防已:SINOMENI CAULIS ET RHIZOMA
オオツヅラフジSinomenium acutum Rehder et Wilson

(Menispermaceae)のつる性の茎および根茎と規定されている。

『中華人民共和国薬典 2005年版』

  • 防己:RADIX STEPHANIAE TETRANDRAE
粉防己 Stephania tetrandara S. Moore の干燥した根
  • 青風藤:CAULIS SINOMENII
青藤 Sinomenium acutum (Thunb.) Rehd. et Wils. 及び毛青藤 Sinomenium acutum (Thunb.) Rehd. et Wils. var. cinereum Rehd. et Wils.の干燥したつる性の茎

以上2種が規定されている。

『大韓薬典 第9改正』

  • 방기 防己:SINOMENI CAULIS ET RHIZOMA
청풍등(青風藤) 방기Sinomenium acutum Rehder et Wilsonのつる性の茎及び根茎と規定されている。

『大韓薬典外生薬規格集2007年』

  • 목방기 木防己:COCCULI RADIX
댕댕이덩굴 Cocculus trilobus De Candolleの根と規定されている。

市場流通品と現状

新鮮なつる性の茎及び根茎を野晒しして黒変させた「防已」が一般的であるが、黒変させる工程は成分のシノメニンを低下させるとの考えから、一部の製薬メーカーでは野晒しをしないでそのまま刻み乾燥した「白防已」を使用している。防已は古くから日本の民間薬として有名であり、野晒し工程は先人の知恵である。野晒しをしない場合は、アクが強いため煎じて飲む場合は服用しにくい。 防已は現在、国内生産で需要は十分まかなえているが、資源確保の多角化の取り組みとして中国産「青風藤」を、一部輸入している。また、「粉防已」は防已とは全く異なる楼根のような形状で、中医学派で使用されるため、日本市場でわずかに流通する。

生産加工状況

防已(四国地方)の生産

多くは林業従事者によって、11~3月に全て野生品の採集で生産される。冬季に採集するのは雑草などが枯れて入山しやすいことや、林業などの閑散期であるためであり、特に品質的な理由によるものではない。オオツヅラフジは、沢沿いなど空中水分の多い場所に密生していることが多い。山頂などから生育場所を探す場合、葉の裏が白いため風が吹くと見つけやすい。採集者は乾燥せずに新鮮な防已を加工業者(集荷業者)に納入し、加工業者が野晒しや刻み加工を行う。一般的に原形で市場に流通することはない。

防已の採集

防已の採集は林業従事者の副収入になり、山林整備にも役立つが、近年の林業不振による採集者の高齢化に伴い、将来の防已生産に不安を残している。

防已の加工

採集者から集荷された防已は加工業者によって、空き地で黒変するまで野晒しされたのち、刻み加工される。一部需要により野晒しせず新鮮な防已をそのまま刻み加工する場合もある。

青風藤の採集 中国安徽省

オオツヅラフジの生育地は日本と同じで、沢沿いの山間に多く自生している。採集するのは一般の農民で採集時期は農繁期を除いた初冬に行なわれる。これら各村から集荷された青風藤は輸出会社によって日本市場の要望で野晒しされる。

理化学的品質評価

産地&規格別理化学試験 DATA
( )内は検体数  Mean±SD(%) 対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む)
産地 灰分
7.0%以下
酸不溶性灰分
0.5%以下
乾燥減量 希エタノール
エキス含量
sinomenine含量
日本(黒)ALL 5.2 ±0.6(356) 0.2 ±0.1(356) 7.8 ±1.4(295) 9.4 ±2.8(248) 0.26 ±0.17(217)
中国(黒)ALL 5.7 ±0.6(97) 0.2 ±0.1(97) 7.9 ±1.4(97) 7.9 ±2.4(97) 0.43 ±0.34(106)
日本・香川 5.1 ±0.6(255) 0.2 ±0.1(255) 7.7 ±1.5(205) 9.5 ±3.4(160) 0.29 ±0.18(137)
日本・徳島 5.3 ±0.5(63) 0.3 ±0.1(63) 8.0 ±1.5(55) 10.0 ±2.9(51) 0.24 ±0.15(48)
中国・湖南 5.8 ±0.4(41) 0.2 ±0.1(41) 8.1 ±1.2(41) 9.4 ±2.0(41) 0.64 ±0.26(51)
中国・江蘇 5.8 ±0.8(35) 0.3 ±0.1(35) 7.9 ±1.7(35) 7.1 ±2.8(35) 0.29 ±0.28(32)
日本・白防已 5.1 ±0.6(24) 0.2 ±0.1(24) 7.9 ±1.5(23) 19.6 ±1.5(17) 0.38 ±0.16(19)
灰分
中国(黒) ALL > 日本(黒) ALL ( p < 0.05 )
日本・徳島 > 日本・香川 ( p < 0.05 )
中国・湖南と中国・江蘇は有意差無し
日本(黒) ALLと日本・白防已は有意差無し
希エタノールエキス含量
日本(黒) ALL > 中国(黒) ALL ( p < 0.05 )
日本・香川と日本・徳島は有意差無し
中国・湖南 > 中国・江蘇 ( p < 0.05 )
日本・白防已 > 日本(黒) ALL ( p < 0.05 )
sinomenine含量
中国(黒) ALL > 日本(黒) ALL ( p < 0.05 )
日本・香川 > 日本・徳島 ( p < 0.1 )
中国・湖南 > 中国・江蘇 ( p < 0.05 )
日本・白防已 > 日本(黒) ALL ( p < 0.05 )

内部形態:鏡検

生薬の性状 JP15

本品は円形又はだ円形の切片で、厚さ0.2~0.4cm、径1~4.5cmである。両切面の皮部は淡褐色~暗褐色を呈し、木部は灰褐色の道管部と暗褐色の放射組織とが交互に放射状に配列する。側面は暗灰色で、縦みぞといぼ状突起がある。

本品はほとんどにおいがなく、味は苦い。

本品の横切面を鏡検するとき、一次皮部及び内しょうには著しく膜の厚い石細胞が認められ、道管部では大小の道管がほぼ階段状に配列する。放射組織の細胞はおおむね木化せず、ところどころに著しく膜の厚い大きな石細胞が散在する。一次皮部にはシュウ酸カルシウムの針晶を含み、放射組織中にはでんぷん粒及びシュウ酸カルシウムの小針晶を含む。でんぷん粒は単粒で、径は3~10μmである。

Tochimoto-Sinomenium-cmt433.jpg
原植物による違い
  • シュウ酸カルシウムは針状で、一次皮部中に石細胞、厚膜組織の内鞘、木部では道管内に填充体が認められ、中心部に髄がある。
  • 以上より、S. acutumの茎であると考えられる。
○青風藤 <中国江蘇省> ○防已 <日本> ○防已 <日本>
Tochimoto-Sinomenium-中国産防已8J.jpg Tochimoto-Sinomenium-日本産防已-1J.jpg Tochimoto-Sinomenium-日本産防已-2J.jpg
Tochimoto-Sinomenium-粉防已J.jpg

○粉防已 <中国浙江省>

  • シュウ酸カルシウムの結晶は小さい柱状又は砂状で、木部の道管はほぼ単列に放射状に配列し、道管の周りに木部繊維が存在する。中心部は二原型の原生木部で、髄はない。
  • 以上より、 S. tetrandra の塊根であると考えられる。
Tochimoto-Sinomenium-漢中防已411-HJ.jpg

○漢中防已 <香港市場品>

  • シュウ酸カルシウムの結晶は集晶で、皮部、放射組織、髄にも見られる。一次皮部中に石細胞群及び繊維群が連続して環状をなしている。またところどころに石細胞群が散在している。木部の道管はほぼ単列で放射状に配列し、道管の周りに木部繊維が存在する。中心部には髄が認められる。
  • 以上より、A. kaempferi Willd. f. heterophylla の塊根であると考えられる。
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