Tochimoto:Moutan Cortex

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牡 丹 皮 MOUTAN CORTEX

牡丹皮はボタン科のボタンPaeonia suffruticosa Andrews(Paeonia moutan Sims)の根皮を基原とする。牡丹には鼠姑(ソコ)、鹿韮(ロクキュウ)、百両金、木芍薬、花王、洛陽花、富賞花などの別名がある。別名の「洛陽花」は洛陽の人々がこの牡丹の花を非常に好み親しんだことから、「花王」は花の中で牡丹が第一、芍薬が第二となっているところから花王と呼ばれた様に、観賞用の花弁に由来する別名が多くある。生薬としては丹皮、粉丹皮などの一般名がある。赤い色(丹)のものが上品とされ、たとえ種ができても芽で繁殖でき、薬用部位は根皮であることから牡丹皮と呼ばれた。牡丹の名は中国秦漢時代以前の文献には見当たらず、観賞用として花弁が称賛され、栽培が広がった隋唐時代以降において、一般の文献に見られるようになった。

『日本薬局方 第15改正(JP15)』 牡丹皮:MOUTAN CORTEX  ボタン Paeonia suffruticosa Andrews(Paeonia moutan Sims)(Paeoniaceae)の根皮と規定されている。

『中華人民共和国薬典 2005年版』 牡丹皮:CORTEX MOUTAN  牡丹 Paeonia suffruticosa Andr.の干燥した根皮と規定されている。

『大韓薬典 第9改正』 목단피 牡丹皮:MOUTAN CORTEX  목단 Paeonia suffruticosa Andrewsの根皮と規定されている。



【市場流通品と現状】  現在の日本市場は全て中国産で占められている。中国産の牡丹皮はその加工方法の違いから、下記の2種類に大別される。 1.原丹皮(皮付牡丹皮): 掘り上げた根から細根を除き、木芯を除き乾燥したもの。 2.刮丹皮(皮去牡丹皮): 掘り上げた根から細根を除き、外皮を削り取り、木芯を除き乾燥したもの。

 中国の主産地は安徽省で、「原丹皮」である『鳳丹皮』『連丹皮』と、「刮丹皮」の商品規格がある。これ以外に産地の違いにより山東丹皮、湖南丹皮、西丹皮、川丹皮、統雑丹(不特定産地)などがあるが、日本市場にはほとんど流通していない。  安徽省銅陵鳳凰山で生産される牡丹皮は最良品とされ、『鳳丹皮』と称される。また安徽省南陵などで生産されるものは『連丹皮』と称され鳳丹皮と区別されている。一般的に4段階に等級分けされ、等級は太さ、外皮の状態、肉質、断面色、粉性の度合、香気の濃淡、結晶状物質の多少などで分けられる。 『鳳丹皮』は木質部分(芯)が細く、皮部が厚く、外皮が細やかである。『連丹皮』は若干皮部が薄く、外皮も粗いとされるが、現在の流通品では明確な外観による区別は難しく、近年市場では『連丹皮』も『鳳丹皮』として流通しているようである。  経験的鑑別では白い結晶状物質が析出し、香気が強く、外皮が細やかで、木質部分が細く、皮部が厚く、肉質は白色~淡桃色なものが良品とされる。








 外皮を去っている刮丹皮は、漢方エキス製剤の指標成分であるペオニフロリンの含量が低いことから、製剤の成分の調整用として一部の漢方エキス製剤メーカーの需要があるが、流通はほとんどない。

 四川省の西昌丹皮は皮部が薄く、表皮も粗く、品質は劣り、基原植物も不明確である。

 調剤用牡丹皮は鳳丹皮、連丹皮の1級・2級が使われる。調剤用牡丹皮は伝統的には○切りに加工され、○切りにすることにより、肉厚及び木質部分の太さがわかるので品質評価が容易であった。しかし、近年は生薬自動分包機の普及により調剤しやすい刻みの剤型が多くなっている。






*流通「牡丹皮」の変遷  牡丹皮の国内流通品は1960年代まで国内生産品(信州、大和)でまかなわれていた。また海外に輸出されたこともあり、品質は高く評価されていたが、1960年頃に日本は高度経済成長期に入り、牡丹皮の生産量は激減した。牡丹皮の国内生産の減少は1970年代から韓国産牡丹皮にとって代わられ、日本市場は韓国産牡丹皮が主流を占めることになった。医療用漢方エキス製剤が保険適用になった1976年から「図Ⅰ:韓国の牡丹皮輸出量と日本の漢方エキス製剤生産額」に見られるよう韓国の牡丹皮輸入量が急増し、1978年には217トンの牡丹皮が韓国から輸出された。  中国国内の牡丹皮の生産量は平年では約1,200トン、多い年で2,400トンといわれており、1980年代に日本市場に中国産の牡丹皮が多く流通するようになった。1980年代後半には韓国産牡丹皮の価格が上昇し、安価な中国産牡丹皮との価格差が広がるにつれ韓国産牡丹皮の輸出量は減少し、中国産牡丹皮が日本市場で主流を占めるようになった。漢方エキス製剤の生産高がピークを迎えた1991年、1992年には一時的に韓国からの輸出量は増加するが、1994年には価格差が許容範囲を越え韓国の輸出量は激減し、1995年には輸出品目から姿を消した。

【生産加工状況】  牡丹皮は種子繁殖で栽培される。初冬に苗床に播種し、2年目に本圃に移植し、移植後4~6年で掘り上げる。その後、根の木質部分(芯)を除き、根皮のみを乾燥する。

*鳳丹皮 中国安徽省銅陵


















* 連丹皮・刮丹皮 中国安徽省南陵  基本的な栽培方法・加工方法は銅陵の鳳丹皮と変わらないが、栽培地の土質の違いで牡丹皮の品質が異な る。銅陵では刮丹皮の製造はないが、南陵では外皮の粗いものなどは皮を去り、刮丹皮に加工される。

【理化学的品質評価】

TableⅠ  産地&規格別理化学試験 DATA (灰分、酸不溶性灰分、乾燥減量、希エタノールエキス含量)





(注) 安徽省以外:江蘇省,四川省 etc.               Mean±SD(%) 対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む)

○ 灰分 : 中国ALL去皮 > 中国ALL皮付,日本ALL皮付 安徽省以外・皮付,安徽省・去皮 > 安徽省・皮付 ( p < 0.05 ) ○ 希エタノールエキス含量 : 日本ALL皮付 > 中国ALL皮付 > 中国ALL去皮 安徽省以外・皮付 > 安徽省・皮付, 安徽省・去皮 ( p < 0.05 )

TableⅡ 産地&規格別理化学試験 DATA (成分含量 : paeonol,paeoniflorin )





(注) 安徽省以外:江蘇省,四川省 etc.      Mean±SD(%) 対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む)

○ paeonol : 中国ALL皮付と中国ALL去皮及び安徽省・皮付と安徽省・去皮に有意差無し 安徽省・皮付 > 安徽省以外・皮付 ( p < 0.05 )  ○ paeoniflorin : 中国ALL皮付 > 中国ALL去皮 ( p < 0.05 )  安徽省以外・皮付,安徽省・皮付 > 安徽省・去皮 ( p < 0.1 )

中国安徽省産鳳丹皮の等級別比較














Topic    去周皮/刮丹皮と周皮部のpaeoniflorin含量の比較

【内部形態:鏡検】 JP15:内部形態についての記載はない。 <生薬の性状>  本品は管状~半管状の皮片で、厚さ約0.5cm、長さ5~8cm、径0.8~1.5cmである。外面は暗褐色~帯紫褐色で、横に長い小だ円形の側根の跡と縦じわがあり、内面は淡灰褐色~帯紫褐色を呈し、平らである。折面はきめがあらい。内面及び折面にはしばしば白色の結晶を付着する。  本品は特異なにおいがあり、味はわずかに辛くて苦い。

●内部形態の比較  ○鳳丹皮 <中国安徽省>  ○刮丹皮 <中国安徽省>  ○連丹皮 <中国江蘇省>    ・刮丹皮の表面で削られているのは、周皮(コルク層)までで、それより内部までは削られていない。また、わずかにコルク層が残っている部分も認められる。


●内部形態の比較  ・芯の残っているもの  ○鳳丹皮 <中国安徽省>  ○刮丹皮 <中国安徽省>  ○連丹皮 <中国江蘇省>

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