PlantBiotech:Species/Lotus japonicus

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==ミヤコグサ形質転換マニュアル==
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* 出典:農業生物資源研究所・生理機能部・窒素固定研究室 (2002年12月)
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* Doc URL:http://miya.bio.sci.osaka-u.ac.jp/manuals/pdfs/Transformation_NIR.pdf
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:  モデル植物としてのミヤコグサ[[Species:Lotus|''Lotus japonicus'' ]]は、マメ科植物における数少ないstableな形質転換系を提供するものです。Agrobacteriumを用いた基本的な形質転換法は1992年デンマークAarhus大学のグループによって確立されましたが(Handberg and Stougaard, 1992)、その後、当時この研究室のメンバーであったJiri Stillerらによって改訂されたプロトコルが提案され(Stiller et al., 1997)、またAarhusのグループも改訂された方法を発表しており(Thykjaer et al., 1998)、現在多くの研究室がこれらのプロトコルによって実験を行っています。
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:  以下のミヤコグサ形質転換マニュアルは、Aarhus大学の研究室の最近のプロトコルと、その後のJiri Stillerらによる改訂プロトコルをもとにし、それぞれのグループから入手したいくつかの最近のノウハウを付け加えて、現在私たちの研究室で行っている方法を整理したものです。大筋はJiri Stillerらによる改良法に準拠しています。
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:  ミヤコグサ形質転換はその効率、安定性、必要時間などの点からみて、たとえばアラビドプシスやイネ等に匹敵するほどに容易であるとはいえません。特に再生効率や、方法の安定性(再現性)、再生個体を得るまでの時間等の面で、今後さらに改良が必要だと思います。また、比較的高頻度に培養変異が起こると思われることから、in-planta法の確立を含めて今後検討が行われるべきでしょう。
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:  In vitroの培養を含む形質転換法は、材料となる植物の培養条件や、グロースキャビネットその他の様々な条件のわずかな違いによって微調整が必要で、それぞれの研究室で実際の条件に応じた最適化の工夫が必要だと思われます。しかし、以下のプロトコルが、これから形質転換実験を始めようとする方に、一応のスタンダードを提供するものとなれば幸いです。疑問点、質問など、またどんな細かい点でも、このプロトコルの改良のための示唆を期待し歓迎します。
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:  この方法は、主としてAhGifuAhを材料として最適化したものです。MG-20についても、BAP濃度の変更を要しますが、一応は適用できます。しかしいまのところ、MG-20では不稔などの培養変異に基づくと思われる異常の頻度が高いために、よい結果が得られていません。
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:  なお、ミヤコグサの種子滅菌法や栽培法、培地組成、交配法等に関して、今泉温子氏による[http://miya.bio.sci.osaka-u.ac.jp/manuals/H_IM/index.html 「ミヤコグサの基本実験系マニュアル」]が公開されていますので、併せて参考にしていただければと思います。
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==試薬==
 
==試薬==
  

Revision as of 10:46, 6 July 2011

Contents

ミヤコグサ形質転換マニュアル


 モデル植物としてのミヤコグサLotus japonicus は、マメ科植物における数少ないstableな形質転換系を提供するものです。Agrobacteriumを用いた基本的な形質転換法は1992年デンマークAarhus大学のグループによって確立されましたが(Handberg and Stougaard, 1992)、その後、当時この研究室のメンバーであったJiri Stillerらによって改訂されたプロトコルが提案され(Stiller et al., 1997)、またAarhusのグループも改訂された方法を発表しており(Thykjaer et al., 1998)、現在多くの研究室がこれらのプロトコルによって実験を行っています。
 以下のミヤコグサ形質転換マニュアルは、Aarhus大学の研究室の最近のプロトコルと、その後のJiri Stillerらによる改訂プロトコルをもとにし、それぞれのグループから入手したいくつかの最近のノウハウを付け加えて、現在私たちの研究室で行っている方法を整理したものです。大筋はJiri Stillerらによる改良法に準拠しています。
 ミヤコグサ形質転換はその効率、安定性、必要時間などの点からみて、たとえばアラビドプシスやイネ等に匹敵するほどに容易であるとはいえません。特に再生効率や、方法の安定性(再現性)、再生個体を得るまでの時間等の面で、今後さらに改良が必要だと思います。また、比較的高頻度に培養変異が起こると思われることから、in-planta法の確立を含めて今後検討が行われるべきでしょう。
 In vitroの培養を含む形質転換法は、材料となる植物の培養条件や、グロースキャビネットその他の様々な条件のわずかな違いによって微調整が必要で、それぞれの研究室で実際の条件に応じた最適化の工夫が必要だと思われます。しかし、以下のプロトコルが、これから形質転換実験を始めようとする方に、一応のスタンダードを提供するものとなれば幸いです。疑問点、質問など、またどんな細かい点でも、このプロトコルの改良のための示唆を期待し歓迎します。
 この方法は、主としてAhGifuAhを材料として最適化したものです。MG-20についても、BAP濃度の変更を要しますが、一応は適用できます。しかしいまのところ、MG-20では不稔などの培養変異に基づくと思われる異常の頻度が高いために、よい結果が得られていません。
 なお、ミヤコグサの種子滅菌法や栽培法、培地組成、交配法等に関して、今泉温子氏による「ミヤコグサの基本実験系マニュアル」が公開されていますので、併せて参考にしていただければと思います。


試薬

B5 Vitamin (1000x)
B5 Vitamin Stock (Sigma: #G1019) 1000x
滅菌済みだが、0.22μm メンブレンフィルターで濾過し、1mlずつ分注して-20℃に保存。
フィルター滅菌には、注射器とDISMIC (ADVANTEC, 0.22μm)などを用いる(作業はクリーンベンチ内)。以下同様。
1M MES pH5.2
MES 21.3g を約80mlの滅菌水に溶かす。
1M NaOHでpH 5.2とし、100mlに定容する。
フィルター滅菌し、1.5mlずつに分注して-20℃に保存。
BAP (1mg/ml)
BAP (Sigma: #B-9395) 50mgを1mlの1M NaOHに溶かし、滅菌水で50mlとする。
フィルター滅菌し、1mlずつに分注して-20℃に保存。
または、BAP solution (Sigma: #B3274, 1mg/ml)をフィルター滅菌し、1mlずつに分注。
NAA (1mg/ml)
NAA (Sigma; #N-0640) 50mg を24mlの95% EtOHに溶かし、滅菌水で50mlとする。
またはNAA solution (Sigma: N1641, 1mg/ml)。
フィルター滅菌し、1mlずつに分注して-20℃に保存。
4M (NH4)22SO4
(NH4)22SO4 26.4g を50mlの滅菌水に溶かす。
フィルター滅菌し、1.5mlずつに分注して-20℃に保存。
G418 (50mg/ml)
Geneticine solution (Sigma #G-7014, 50mg/ml)
フィルター滅菌し、1mlずつに分注して-20℃に保存。
Hygromycin B (10mg/ml)
Hygromycin B (Sigma: #H-9773) 250mg を16mlの滅菌水に溶かす。(純度は通常70%くらい。ロットにより違う)
フィルター滅菌し、1mlずつに分注して-20℃に保存。
またはHygromycin B solution (Sigma: H5527, 50mg/ml)を用いる(純度は50%以上)。
Cefotaxime (30mg/ml)
Cefotaxime (Sigma: #C-7912) 3 g を100mlの滅菌水に溶かす。
フィルター滅菌し、10mlずつ#2059に分注して-20℃に保存。
Acetosyringone (20mg/ml)
Acetosyringone (Aldrich #D134406) をDMSOに20mg/mlになるように溶かす。
フィルター滅菌し、1mlずつに分注して-20℃に保存。


アグロバクテリウム用培地

YEP寒天培地(注1)
YE 10g
Peptone 10g
NaCl 5g
を1000mlの水に溶かす。
寒天1.5gを200mlメジューム瓶にとり、YEPを100mlずつ分注。
オートクレーブして、室温に保存。
使用に際して、電子レンジで溶かす。
60℃程度に冷えてから、必要な抗生物質を加える。
Kanamycin 100μg/ml
Tetracyclin 5μg/ml
Rifampicin 100μg/ml
Spectinomycin 100μg/ml
Carbenicilin 100μg/ml
Gentamycin 100μg/ml
クリーンベンチ内で、9cmプレート6-8枚に注いで固める。


YMB液体培地
Mannitol 1.0g
YE 0.2g
MgSO4.7H2O 0.1g
NaCl 0.05g
を500mlの水に溶かし、100mlずつに分注してオートクレーブ、室温に保存。


用事、1mlの0.3Mリン酸カリウム緩衝液(pH6.8)を加える。
0.3M K2HPO4/KH2PO4 (pH6.8)
K2HPO4 2.59g
KH2PO4 2.05g
を水にとかし100mlとする。オートクレーブ。

(注1) LB培地でも可。


植物用培地

Co-cultivation培地
(1/10 B5, BAP 0.5μg/ml, NAA 0.05μg/ml, MES5.2 5mM, Acetosyringone 20μg/ml)
B5 basal salts (Wako: #399-00621) 0.33 g を1000mlの水に溶かす。
250mlボトルに200mlずつ分注し、オートクレーブ、室温保存(1/10 B5)。
使用時、次のものを加える。
1000x Vitamin stock 20μl (0.1x)
NAA (1mg/ml) 10μl (0.05μg/ml)
BAP (1mg/ml) 100μl (0.5μg/ml)
1M MES (pH5.2) 1.00ml (5mM)
Acetosyringone (20mg/ml) 200μl (20μg/ml)


Callus培地およびShoot Induction培地
(1x B5, 2% sucrose, BAP 0.5μg/ml, NAA 0.05μg/ml, 10mM NH4, 0.3% phytagel)
B5 basal salts 1.66g
sucrose 10g
を500mlの水に溶かす。
1N NaOHでpH5.5に調整する。
1.5gのphytagelを加えてオートクレーブ。
熱いうちに
4M (NH4)2SO4 625μl (10mM NH4+)
を加える。
70℃以下に冷やしてから、次のものを加える。
1000x Vitamin stock 500μl (1x)
NAA (1mg/ml) 25μl (0.05μg/ml)
BAP (1mg/ml) 250μl (0.5μg/ml)(注2)
cefotaxime (30mg/ml) 5ml (300μg/ml)
Selection(注3)
G418 (50mg/ml) 100-200μl/500ml (10-20μg/ml)
HygromycinB (10mg/ml) 0.75-2ml/500ml (15-40μg/ml)


Shoot Elongation培地
(1x B5, 2% sucrose, BAP 0.2μg/ml, 0.3% phytagel)
B5 basal salts 1.66g
sucrose 10g
を500mlの水に溶かす。
1N NaOH でpH5.5に調整する。
1.5gのphytagelを加えてオートクレーブ。
70℃以下に冷やしてから、次のものを加える。
1000x Vitamin stock 500μl (1x)
BAP stock (1mg/ml) 100μl (0.2μg/ml)
cefotaxime (30mg/ml) 2.5ml (150μg/ml)
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