Aritalab:Lecture/Math/Ideal

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となる。イデアルは多様体の基底となる制約を意味するため、より範囲の大きな多様体の制約(イデアル)は小さくなる。
 
となる。イデアルは多様体の基底となる制約を意味するため、より範囲の大きな多様体の制約(イデアル)は小さくなる。
  
今後、以下の問を明らかにする。
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====単項式イデアルの定義====
# 記述: 任意のイデアルは多項式の集合 f<sub>1</sub>, ... , f<sub>s</sub> を用いて < f<sub>1</sub>, ... , f<sub>s</sub> > と書けるか?
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イデアル I &isin; k[x<sub>1</sub>, ... , x<sub>n</sub>] が単項式の和として表せる多項式全体からなるとき (&sum;<sub>&alpha;&isin;A</sub>h<sub>&alpha;</sub>x<sup>&alpha;</sup>)、単項式イデアル (monomial ideal) といい、 I = < x<sup>&alpha;</sup>: &alpha; &isin; A> と書く。
# 所属: 多項式の集合 f<sub>1</sub>, ... , f<sub>s</sub> に対し、もう一つ多項式 f を与えられたら f が < f<sub>1</sub>, ... , f<sub>s</sub> > に属すか決定するアルゴリズムはあるか?
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# 零点定理: 多項式の集合に対し、< f<sub>1</sub>, ... , f<sub>s</sub> > と I( V( f<sub>1</sub>, ... , f<sub>s</sub> ) ) の関係は?
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;補題
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: I を単項式イデアルとすると、x<sup>&beta;</sup> &isin; I であることと、&alpha; &isin; A となる x<sup>&alpha;</sup> が x<sup>&beta;</sup> を割り切ることは同値
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;証明
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:  x<sup>&alpha;</sup> &isin; I が x<sup>&beta;</sup> を割り切る場合は自明。x<sup>&beta;</sup> &isin; I のとき x<sup>&beta;</sup> のとき x<sup>&beta;</sup> = &sum;<sub>&alpha;&isin;A</sub>h<sub>&alpha;</sub>x<sup>&alpha;</sup> となる。右辺の多項式 h<sub>&alpha;</sub> 部分を整理しても必ず x<sup>&alpha;</sup> で割り切れる。
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;補題
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: I を単項式イデアルとすると、f &isin; I の必要十分条件は f を構成する項が全て I に属すること
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;系
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: 2つの単項式イデアルが同じであることと、そこに含まれる単項式全体が一致することは同値
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====ディクソンの補題====
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単項式イデアル I = < x<sup>&alpha;</sup>: &alpha; &isin; A> は有限個の単項式を選んで基底にできる。
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;証明
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: 変数の数 n に関する帰納法で証明する。 n = 1 のとき、I は単項式 x<sup>&alpha;</sup> (&alpha; &isin; A) で生成される。このとき、A 中の最小元を &beta; とすれば &beta; &le; &alpha; となり x<sup>&beta;</sup> は x<sup>&alpha;</sup> を割り切る。よって I = <x<sup>&beta;</sup>> となる。次に n - 1 のときに命題が成り立つとして、 n のときを証明する。I &sub; k[x<sub>1</sub>, ..., x<sub>n-1</sub>, y] を単項式イデアルとする。この中に x<sup>&alpha;</sup>y<sup>m</sup> &isin; I が存在する。まず、変数の一つ少ない単項式イデアル、J &sub; k[x<sub>1</sub>, ..., x<sub>n-1</sub>] を構成し、有限個の生成元をとる。
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* J = < x<sup>&alpha;(0)</sup>, x<sup>&alpha;(1)</sup>, ... , x<sup>&alpha;(s)</sup> >
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次に、y<sup>M</sup> に対して以下のイデアルを順次構成する。
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# M=0のとき x<sup>&alpha;(0)</sup>, x<sup>&alpha;(1)</sup>, ... , x<sup>&alpha;(s<sub>0</sub>)</sup> という有限個の基底が帰納法の仮定により存在
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# M=1のとき x<sup>&alpha;(0)</sup>y, x<sup>&alpha;(1)</sup>y, ... , x<sup>&alpha;(s<sub>0</sub>)</sup>y という有限個の基底が帰納法の仮定により存在
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# ...
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# M=m-1のとき x<sup>&alpha;(0)</sup>y<sup>m-1</sup>, x<sup>&alpha;(1)</sup>y<sup>m-1</sup>, ... , x<sup>&alpha;(s<sub>0</sub>)</su>y<sup>m-1</sup> という有限個の基底が帰納法の仮定により存在
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I に含まれる全ての単項式は上記の基底のいずれかで割り切れるため、上の各生成元も I に属している。こうして得られる元の集合は、A の有限部分集合になっている。
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具体例を見てみる。たとえば I = < x<sup>4</sup>y<sup>2</sup>, x<sup>3</sup>y<sup>4</sup>, x<sup>2</sup>y<sup>5</sup> > を考える。ここで x の指数は 2 以上であるため y を減らした際のイデアル J = < x<sup>2</sup> > となる。また m = 5 となる。m の数に従うスライスは
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# m = 0, m = 1 のとき { 0 }
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# m = 2, m = 3 のとき < x<sup>4</sup> >
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# m = 4 のとき < x<sup>3</sup> >
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これらをあわせると I = < x<sup>2</sup>y<sup>5</sup>, x<sup>4</sup>y<sup>2</sup>, x<sup>4</sup>y<sup>3</sup>, x<sup>3</sup>y<sup>4</sup> > となる。
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;系6
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大小記号 > が整数上の二項関係で全順序、かつ &alpha; > &beta; のときに &alpha; + &gamma; > &beta; + &gamma; であるなら、> が整列順序であることと比較対象が 0 以上の整数であることは同値になる。
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;証明
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: ⇒方向は、整列順序であると仮定し、最小元が 0 以上の整数であることを示せばよい。最小元が負の数であると 0 > a<sub>0</sub> と書けるので両辺に a<sub>0</sub> を足して a<sub>0</sub> > 2 a<sub>0</sub> となるから矛盾する。⇐方向は、 0 以上の整数が要素となる集合が最小元を持つことを示せればよい。 I = < x<sup>&alpha;</sup> : &alpha; &isin; A > は単項式イデアルである。よって有限個の基底が存在する。この基底の中に最小元が存在する。

Revision as of 09:29, 6 August 2012

Contents

アフィン多様体

アフィン多様体の定義

体 k を係数とする多項式 f1, ... , fs ∈ k[ x1, ... , xn ] に対するアフィン多様体を V( f1, ... , fs ) = { (a1, ... , an) ∈ k2 : ∀i fi( a1, ... , an ) = 0 と定義する。アフィン多様体は滑らかでない点をもつ場合があり、特異点 (singular point) と呼ばれる。

  • 多項式の個数が多様体の次元をきめるとは限らない。例えば 3 次元空間における多様体 V(xz, yz) は xz = yz = 0 から (x,y) 平面全体と z 軸全体を意味する。
  • m元連立一次方程式の解はアフィン多様体である(線形多様体という)。その次元は体 k の次元 n から方程式を表現する行列のランクを引いたもの。

2つのアフィン多様体が V = V(f1, ... , fs), W = V(g1, ... , gt) とあらわされるとき

V ∩ W = V(f1, ... , fs, g1, ... , gt)
V ∪ W = V( figi : 1 ≦ i ≦ s, 1 ≦ j ≦ t)

となる。

イデアル

イデアルの定義

部分集合 I ⊂ k[ x1, ... , xn ] がイデアルであるとは

  1. 0 ∈ I
  2. f, g ∈ I ならば f + g ∈ I
  3. f ∈ I かつ h ∈ k[ x1, ... , xn ] ならば hf ∈ I

を全て満たす場合をいう。

f1, ... , fs を多項式の集合 k[ x1, ... , xn ] に含まれる式とする。 < f1, ... , fs > = Σsi=1 hifi : hi ∈ k[ x1, ... , xn ] と定義すれば、これは f1, ... , fs により生成されるイデアルである。

証明
< f1, ... , fs > は多項式集合に含まれる要素と f1, ... , fs との線形和である。 零元を含み、和と積について閉じているのはあたりまえ。

逆に任意のイデアル I について I = < f1, ... , fs > となる多項式 f1, ... , fs を用意することができ、これを I の基底という。同じイデアルは多くの異なる基底を持ちうるが、それらの張るアフィン多様体は一致する。

< 2 x2 + 3 y2 - 11 , x2 - y2 - 3 > = < x2 - 4, y2 - 1 > を示そう。

前者における2つの式から まず x2 を消去すると y2 - 1 = 0 が得られる。また y2 を消去すると x2 - 4 = 0 が得られる。つまり < x2 - 4, y2 - 1 > となる。

アフィン多様体 V に対し I(V) = { f ∈ k[ x1, ... , xn ] : ∀ (a1, ... , an) ∈ V, f(a1, ... , an) = 0 } とおくと I(V) はイデアルになる。これを V のイデアルと呼ぶ。

証明
I(V) は零元を含んでる。また f, g ∈ I(V) と仮定したとき、 f + g も 0 になるし 0 に h ∈ k[ x1, ... , xn ] をかけても 0 なのでイデアルになる。
k2 の原点のみからなる多様体 { (0,0) } のイデアルは原点で消える全ての多項式からなるので I( { (0,0) } ) = <x,y>.
kn 全体からなる多様体のイデアルは、至るところで消える多項式からなるので I(kn) = { 0 }.
よじれ3次曲線 V(y - x2, z - x3) からなる多様体のイデアルは < y - x2, z - x3 >.

ただし、多項式 f1, ... , fs からなる多様体のイデアルが常に < f1, ... , fs > とは限らない。通常は < f1, ... , fs > ⊂ I ( V(f1, ... , fs) ) となる。

x2, y2 からなる多様体は x2 = 0, y2 = 0 より原点のみである。そのイデアルは <x,y> であり、<x2, y2> よりも真に大きい。

一般に2つのアフィン多様体 V, W が与えられたとき

  • V ⊂ W と I(V) ⊃ I(W) は同値
  • V = W と I(V) = I(W) は同値

となる。イデアルは多様体の基底となる制約を意味するため、より範囲の大きな多様体の制約(イデアル)は小さくなる。

単項式イデアルの定義

イデアル I ∈ k[x1, ... , xn] が単項式の和として表せる多項式全体からなるとき (∑α∈Ahαxα)、単項式イデアル (monomial ideal) といい、 I = < xα: α ∈ A> と書く。

補題
I を単項式イデアルとすると、xβ ∈ I であることと、α ∈ A となる xα が xβ を割り切ることは同値
証明
xα ∈ I が xβ を割り切る場合は自明。xβ ∈ I のとき xβ のとき xβ = ∑α∈Ahαxα となる。右辺の多項式 hα 部分を整理しても必ず xα で割り切れる。
補題
I を単項式イデアルとすると、f ∈ I の必要十分条件は f を構成する項が全て I に属すること


2つの単項式イデアルが同じであることと、そこに含まれる単項式全体が一致することは同値

ディクソンの補題

単項式イデアル I = < xα: α ∈ A> は有限個の単項式を選んで基底にできる。

証明
変数の数 n に関する帰納法で証明する。 n = 1 のとき、I は単項式 xα (α ∈ A) で生成される。このとき、A 中の最小元を β とすれば β ≤ α となり xβ は xα を割り切る。よって I = <xβ> となる。次に n - 1 のときに命題が成り立つとして、 n のときを証明する。I ⊂ k[x1, ..., xn-1, y] を単項式イデアルとする。この中に xαym ∈ I が存在する。まず、変数の一つ少ない単項式イデアル、J ⊂ k[x1, ..., xn-1] を構成し、有限個の生成元をとる。
  • J = < xα(0), xα(1), ... , xα(s) >

次に、yM に対して以下のイデアルを順次構成する。

  1. M=0のとき xα(0), xα(1), ... , xα(s0) という有限個の基底が帰納法の仮定により存在
  2. M=1のとき xα(0)y, xα(1)y, ... , xα(s0)y という有限個の基底が帰納法の仮定により存在
  3. ...
  4. M=m-1のとき xα(0)ym-1, xα(1)ym-1, ... , xα(s0)</su>ym-1 という有限個の基底が帰納法の仮定により存在

I に含まれる全ての単項式は上記の基底のいずれかで割り切れるため、上の各生成元も I に属している。こうして得られる元の集合は、A の有限部分集合になっている。

具体例を見てみる。たとえば I = < x4y2, x3y4, x2y5 > を考える。ここで x の指数は 2 以上であるため y を減らした際のイデアル J = < x2 > となる。また m = 5 となる。m の数に従うスライスは

  1. m = 0, m = 1 のとき { 0 }
  2. m = 2, m = 3 のとき < x4 >
  3. m = 4 のとき < x3 >

これらをあわせると I = < x2y5, x4y2, x4y3, x3y4 > となる。


系6

大小記号 > が整数上の二項関係で全順序、かつ α > β のときに α + γ > β + γ であるなら、> が整列順序であることと比較対象が 0 以上の整数であることは同値になる。

証明
⇒方向は、整列順序であると仮定し、最小元が 0 以上の整数であることを示せばよい。最小元が負の数であると 0 > a0 と書けるので両辺に a0 を足して a0 > 2 a0 となるから矛盾する。⇐方向は、 0 以上の整数が要素となる集合が最小元を持つことを示せればよい。 I = < xα : α ∈ A > は単項式イデアルである。よって有限個の基底が存在する。この基底の中に最小元が存在する。
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