Aritalab:Lecture/Bioinformatics/MotifFinding

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L<sup>n</sup> や 4<sup>k</sup> という組み合わせの数は膨大で、全てのパターンをしらみつぶしに計算していると無駄も多そうです。あらかじめ設定した閾値などを用いて無駄な手続きを省略する手法を枝刈り (branch-and-bound) と呼びます。こうした枝刈りでは、残念ながら最悪計算量を下げることはできません。
 
L<sup>n</sup> や 4<sup>k</sup> という組み合わせの数は膨大で、全てのパターンをしらみつぶしに計算していると無駄も多そうです。あらかじめ設定した閾値などを用いて無駄な手続きを省略する手法を枝刈り (branch-and-bound) と呼びます。こうした枝刈りでは、残念ながら最悪計算量を下げることはできません。
  
===プロファイル行列作りの枝刈り===
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====プロファイル行列作りの枝刈り====
  
 
長さ k のモチーフと呼べるプロファイルの各ポジションにおけるエントロピーを、k 以下としてみましょう。 各位置のエントロピーが 1 以下であるためには少なくとも半分以上の文字が同一でなくてはなりません。従って、n 本の配列に対して (L - k + 1)<sup>n</sup> 通りの組み合わせを試すときに、途中で残りの文字がどのようになってもエントロピー 1 を達成できないことがわかれば、その時点で次の候補へ移ることができます。
 
長さ k のモチーフと呼べるプロファイルの各ポジションにおけるエントロピーを、k 以下としてみましょう。 各位置のエントロピーが 1 以下であるためには少なくとも半分以上の文字が同一でなくてはなりません。従って、n 本の配列に対して (L - k + 1)<sup>n</sup> 通りの組み合わせを試すときに、途中で残りの文字がどのようになってもエントロピー 1 を達成できないことがわかれば、その時点で次の候補へ移ることができます。
  
 
例えば i 本目の比較で目標のエントロピー基準を達成できないことがわかれば、i + 1 本目以降の (L - k + 1)<sup>n - i</sup> 通りをスキップできます。
 
例えば i 本目の比較で目標のエントロピー基準を達成できないことがわかれば、i + 1 本目以降の (L - k + 1)<sup>n - i</sup> 通りをスキップできます。

Revision as of 14:28, 7 November 2011

Contents

モチーフ

DNA配列の中で転写制御部位や生体分子の結合部位など、決まったパターンを持つ部分配列をモチーフと呼びます。 決まったパターンといっても全く同じ部分配列が存在することは稀で、多くは「ほとんど」一致する部分配列となります。 モチーフを表現するのに、正則表現やプロファイル行列がよく用いられます。

プロファイル行列とコンセンサス

固定長 (k とします) の配列を n 本そろえて n × k 行列の形に表現し、各列における各塩基配列の出現頻度を記した 4 × k 行列をプロファイルと呼びます。 プロファイルの ( i, j ) 要素 ( i ∈ {A,C,G,T}, j ∈ Z) には、もとの行列で塩基 i が出現する確率が入ります。

それぞれの位置で代表的な塩基が定まる場合、それをコンセンサス配列と呼びます。

アライメント行列
位置 1 2 3 4 5 6 7 8
A T C C A G C T
C T G G A T T C
G G G C A A C T
A T G G A T C T
A A G C A A C C
T T G G A A C T
A T G C C A T T
A T G G C A C T
  
頻度行列
位置 1 2 3 4 5 6 7 8
A 5 1 0 0 6 5 0 0
C 1 0 1 4 2 0 2 6
G 1 1 7 4 0 1 0 0
T 1 6 0 0 0 2 6 2
  
プロファイル行列
位置 1 2 3 4 5 6 7 8
A 0.625 0.125 0 0 0.750 0.625 0 0
C 0.125 0 0.125 0.5 0.250 0 0.250 0.750
G 0.125 0.125 0.875 0.5 0 0.125 0 0
T 0.125 0.750 0 0 0 0.250 0.750 0.250
コンセンサス A T G C/G A A T C

モチーフ発見問題

ここでは長いDNA配列 n 本と正の整数 k を与えられたとき、配列それぞれの位置 s = (s1, s2, ... sn) にから長さ k の部分配列を取り出してできるプロファイル行列を考えます。

問題. スコア関数 S( s , DNA) = − Σkj ΣiA,T,G,C pi,j log pi,j を最小化する位置の配列 s を求めよ。

これをモチーフ発見問題といいます。スコア関数は − ΣΣ p log p の形をとっており、pij はポジション j における塩基 i の確率を表しています。− p log p の総和をプロファイルのエントロピーといいます。 このエントロピーとはシャノンの平均情報量を意味し、分布の偏りを示す指標です。全ての塩基が等確率で出てくるときに平均情報量は最も大きく、塩基の出現確率に偏りがあればあるほど、平均情報量は小さくなります。

  • 完全にランダムな場合 (情報量は大きい)
− ΣkΣACGT p log p = − 4 k * { (1/4) * (−2)} = 2 k
k ビットの情報源が持ちうるエントロピーの最大値は k です。DNAは4文字あるために各位置が 2 ビットの情報を持ち得て 2k になります。もし4文字のうち2文字だけが50%ずつ利用される場合、情報量は k になります。
  • 完全に一致する場合(情報量は小さい)
− ΣkΣACGT p log p = − k * { log 1 } = 0
完全一致の場合、情報量は 0 になります。

このスコア関数をハミング距離にしても本質的な問題は変わりません。完全にランダムな場合はハミング距離の総和が最大になり、完全一致の場合はハミング距離の総和が最小になります。

モチーフ候補探しの効率

長さ L の DNA 配列が n 本与えられたとき、長さ k のモチーフを選ぶ組み合わせの数は (L - k + 1)n になります。それぞれのポジションについてプロファイル行列を kn 時間で作成していると、全体で

(L - k + 1)n × k n = O(k n Ln) 時間

かかります。これは大変無駄の多いアプローチです。代案として、コンセンサス配列を全て求めるアプローチが考えられます。例えば、プロファイル行列において一番頻度の高い文字を採用したコンセンサスでエントロピーが k 以上のものを求める問題を考えます。コンセンサス配列の数は 4k 個あり、それぞれに対して nL 配列の中に類似配列が存在するか否かを判断するのに knL 時間かかります。

4k × k n L = O(k n L 4k) 時間

こちらも無駄の多いアプローチに見えますが、n が大きかったり k が小さいときには有効なことがわかります。

枝刈り

Ln や 4k という組み合わせの数は膨大で、全てのパターンをしらみつぶしに計算していると無駄も多そうです。あらかじめ設定した閾値などを用いて無駄な手続きを省略する手法を枝刈り (branch-and-bound) と呼びます。こうした枝刈りでは、残念ながら最悪計算量を下げることはできません。

プロファイル行列作りの枝刈り

長さ k のモチーフと呼べるプロファイルの各ポジションにおけるエントロピーを、k 以下としてみましょう。 各位置のエントロピーが 1 以下であるためには少なくとも半分以上の文字が同一でなくてはなりません。従って、n 本の配列に対して (L - k + 1)n 通りの組み合わせを試すときに、途中で残りの文字がどのようになってもエントロピー 1 を達成できないことがわかれば、その時点で次の候補へ移ることができます。

例えば i 本目の比較で目標のエントロピー基準を達成できないことがわかれば、i + 1 本目以降の (L - k + 1)n - i 通りをスキップできます。

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