Aritalab:Lecture/NetworkBiology/Stability
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系の安定性
一般的な 2 次元の系 を考え、固定点 (= 時間依存しない解のこと。不動点とも呼ぶ) を としましょう。
固定点に近い位置を と書いて一次項まで近似すると
となります。関数 g についても同様です。これをヤコビ行列の形に書けば
です。ヤコビアンの簡単な場合として対角行列を考えましょう。
この解は以下のようになります。
x, y について書き直すと以下になります。
つまり の値(それぞれ固定点における関数 f, g の微分値) が共に負であれば は誘引点、共に正であれば反発点、片方だけ負であれば鞍点 (saddle point) となります。
ヤコビアンが対角行列でない場合、行がヤコビアンの左固有ベクトルに対応する行列 を用意し、 を定義します。
もし が固有値を持つならば によって対角化することで が互いに独立に時間発展することになります。
固有値が複素数になる場合 、一般解は指数的に増減する部分と振動する部分の積になります (C: 虚数, A, B: 実数)。
パラメータ α が負の場合は固定点に落ち込むスパイラル(安定点)になり、正の場合は固定点から遠ざかる不安定点です。一点に落ち込むことなく、安定した軌道を描く場合もあります。これをリミットサイクルと呼びます。
ロトカ・ヴォルテラ方程式
生態系の解析では、被食者 x と捕食者 y を扱うものが多くあります。以下の仮定を考えます。
- 被食者は一定割合 a で増加するが、個体数が多くなりすぎると餌不足で増加率が減少する。
- 捕食者は一定割合 b で死滅する。
以下の方程式を考えます。a, b, r, s, t は全て正のパラメータです。
固定点は です。周辺の挙動をみてみます。
行列の固有方程式
を考え、固有値がともに負になるかを検討します。
固定点(0,0)の場合
ヤコビアンは です。固有値の一方だけ負なので、これは鞍点です。
固定点 の場合
ヤコビアンは です。この場合の固有値は複素数となり、実数部分を持ちません。そのため、固定点に落ち込んでいくことのない(吸引的でない)安定点になります。 この方程式で r = 0 とおいた場合が、大変有名なロトカ・ヴォルテラ方程式です。