Tochimoto:Astragali Radix

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(New page: 黄  耆 ASTRAGALI RADIX 黄耆はマメ科のキバナオウギ Astragalus membranaceus Bunge または ナイモウオウギAstragalus mongholicus Bungeの根を基原とする。...)
 
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黄  耆
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==黄  耆==
ASTRAGALI  RADIX
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黄耆はマメ科のキバナオウギ Astragalus membranaceus Bunge または ナイモウオウギAstragalus mongholicus Bungeの根を基原とする。耆は「長」の意味があり、色が黄色く、補薬の長(長老)であることから「黄耆」の名がついた。「黄芪」ともいわれ、「耆」と「芪」は同じ発音であり、「芪」は日本で古くは黄耆の代用とされたAstragalus属のモメンズル Astragalus reflexistipulus Miq.を指し、「黄芪」でオウギを意味する。「黄耆」は漢薬名、「黄芪」は植物名ともいえるが、現在は生薬名として日本では「黄耆」、中国・韓国では「黄芪」を使っている。
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{{Tochimoto/PharmacopeiaLink|『日本薬局方 第15改正 (JP15)』|黄耆:ASTRAGALI RADIX
黄耆は海外では補薬として非常に重視される生薬である。中国では「黒皮耆」「白皮耆」「紅耆」に大別され、商品規格は30種をこえるほど多い。日本で使用される黄耆は白皮耆である。
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|キバナオウギ Astragalus membranaceus Bunge またはAstragalus mongholicus Bunge (Leguminosae) の根と規定されている。}}
「紅耆」はマメ科のイワオウギ(多序岩黄耆) Hedysarum polybotrys Handel・Mazzetti の根を基原とするもので、中華人民共和国薬典には「紅耆」として収載されており、日局には収載されていないが、局方外生薬として「晋耆」の名称で日本ではわずかに流通する。
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『日本薬局方 第15改正 (JP15)』
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{{Tochimoto/PharmacopeiaLink|『中華人民共和国薬典2005年版』|黄芪:RADIX ASTRAGALI
黄耆:ASTRAGALI RADIX
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|蒙古黄 Astragalus membranaceus (Fisch.) Bge. var. mongholicus (Bge.) Hsiao あるいは 膜莢黄 Astragalus membranaceus (Fisch.) Bge. の干燥した根と規定されている。その他に紅(晋耆ともいう)が収載されている。
 キバナオウギ Astragalus membranaceus Bunge または
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|紅芪:RADIX HEDYSARI
Astragalus mongholicus Bunge (Leguminosae) の根と規定されている。
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|多序岩黄 Hedysarum polybotrys Hand.-Mazz.の干燥した根と規定されている。}}
  
『中華人民共和国薬典2005年版』
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{{Tochimoto/PharmacopeiaLink|『大韓薬典 第9改正』|황기 黄芪:ASTRAGALI RADIX
黄芪:RADIX ASTRAGALI
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|황기 Astragalus membranaceus Bungeあるいは몽골황기(蒙古黄) Astragalus membranaceus Bunge var.mongholicus Hsiaoの根でそのまま、または周皮を取り除いたものと規定されている。}}
 蒙古黄 Astragalus membranaceus (Fisch.) Bge. var.
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mongholicus (Bge.) Hsiao あるいは
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膜莢黄 Astragalus membranaceus (Fisch.) Bge. の干燥した根と規定されている。
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 その他に紅(晋耆ともいう)が収載されている。
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紅芪:RADIX HEDYSARI
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 多序岩黄 Hedysarum polybotrys Hand.-Mazz.の干燥した根と規定されている。
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『大韓薬典 第9改正』
+
==市場流通品と現状==
황기 黄芪:ASTRAGALI RADIX
+
現在流通する黄耆は全て栽培品で、野生品は市場では見当たらない。中国産黄耆は中国東北部に産する外皮の色が灰黒色の「黒皮耆」と、山西省・陝西省などで生産される外皮の色が淡黄色か黄土色の「白皮耆」に区別されていた。ト奎耆や寧古塔耆と呼ばれていた本物の「黒皮耆」は生産が途絶えており、香港・東南アジアでは黄耆(白皮耆)を五倍子で着色したものが「黒皮耆」として使用されている。
 황기 Astragalus membranaceus Bungeあるいは
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몽골황기(蒙古黄) Astragalus membranaceus Bunge var.mongholicus Hsiaoの根でそのまま、または周皮を取り除いたものと規定されている。
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 +
中国産黄耆以外に、日本市場では北朝鮮、韓国産も流通したことがあるが、現在は中国産黄耆が100%近くを占める。北海道で栽培している北海道産黄耆もわずかに流通する。
  
 +
===中国産黄耆===
 +
1992年当時は「原生耆」「耆節」「山西正副白耆」「河北綿耆」など厳格な輸出規格で流通していたが、市場経済の導入で流通規格は崩壊した。現在の主な産地は3つあり、河北省産(栽培年数2年)、内蒙古自治区産(栽培年数2~4年)、陝西省産(栽培年数5・6年)がある。栽培黄耆は年数の長いもの程、優れた品質といわれており、経験的鑑別では柔軟で内部は黄色く、甘味が強いものが良品とされている。河北省産、内蒙古自治区産は栽培年数が短く、質は若干硬く、内部の色は薄い黄色で、甘味が薄い。当社では栽培年数の長い陝西省の黄土高原で栽培された黄耆を調剤用生薬に用いている。
  
 +
陝西省産の黄耆は、太さにより1~5等に等級分けされる。それ以外に、側根の「枝耆」と、細い側根の「須耆」があるが、これらは漢方エキス製剤の原料などに使用される。
  
 +
;1992年当時の等級規格
  
 +
===特殊な黄耆===
 +
韓国では一般的に皮去り黄耆が使われ、大韓薬典にも「・・または周皮を取り除いたもの」と記載されている。
  
 +
==生産加工状況==
  
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===中国陝西省子洲県:黄土高原栽培===
 +
海抜約1000mの黄土高原で栽培されている。初冬あるいは新春に播種し、数回/年の除草を行うが肥料などは基本的には与えない。播種後、5・6年で掘り上げるが、近年は栽培年数が4・5年に短縮されている。
  
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地下部は約2m伸びるため、高原の斜面の傾斜を利用して斜面の下から崩しながら掘り上げる。
  
 +
===㈱栃本天海堂の自社栽培===
 +
近年、中国国内の黄耆価格の低迷で栽培年数が約4年で掘り上げが行われている。良質な黄耆を生産するには栽培年数は5・6年は必要であるが、生産者は長期の栽培を嫌うため、自社で陝西省の黄土高原で栽培を行っている。
  
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==理化学的品質評価==
  
【市場流通品と現状】
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{| class="wikitable sortable"
 現在流通する黄耆は全て栽培品で、野生品は市場では見当たらない。中国産黄耆は中国東北部に産する外皮の色が灰黒色の「黒皮耆」と、山西省・陝西省などで生産される外皮の色が淡黄色か黄土色の「白皮耆」に区別されていた。ト奎耆や寧古塔耆と呼ばれていた本物の「黒皮耆」は生産が途絶えており、香港・東南アジアでは黄耆(白皮耆)を五倍子で着色したものが「黒皮耆」として使用されている。
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|+ 産地別理化学試験 DATA<br/><small>対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む) Mean±SD(%)</small>
 中国産黄耆以外に、日本市場では北朝鮮、韓国産も流通したことがあるが、現在は中国産黄耆が100%近くを占める。北海道で栽培している北海道産黄耆もわずかに流通する。
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|-
 +
! 産地 || 検体数 || 灰分<br/>5.0%以下 || 酸不溶性灰分<br/>1.0%以下 || 乾燥減量<br/>13.0%以下 || 希エタノール<br/>エキス含量
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|-
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|中国ALL || 285 || 2.8 ±0.4 || 0.3 ±0.1 || 9.1 ±1.1 || 30.1 ±3.3
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|陜西 || 230 || 2.8 ±0.2 || 0.3 ±0.1 || 9.1 ±1.0 || 30.2 ±2.7
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|-
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|山西 || 8 || 3.5 ±0.5 || 0.5 ±0.2 || 9.9 ±1.3 || 27.4 ±2.8
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|-
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|内蒙古 || 14 || 2.8 ±0.7 || 0.5 ±0.2 || 9.2 ±1.3 || 29.6 ±5.1
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|河北 || 14 || 2.9 ±0.7 || 0.3 ±0.3 || 8.9 ±0.7 || 29.7 ±6.3
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|-
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|日本 || 12 || 3.2 ±0.5 || 0.2 ±0.1 || 9.1 ±1.7 || 32.3 ±7.6
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|}
  
Ⅰ.中国産黄耆
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====中国ALLと日本産の比較====
 1992年当時は「原生耆」「耆節」「山西正副白耆」「河北綿耆」など厳格な輸出規格で流通していたが、市場経済の導入で流通規格は崩壊した。現在の主な産地は3つあり、河北省産(栽培年数2年)、内蒙古自治区産(栽培年数2~4年)、陝西省産(栽培年数5・6年)がある。栽培黄耆は年数の長いもの程、優れた品質といわれており、経験的鑑別では柔軟で内部は黄色く、甘味が強いものが良品とされている。河北省産、内蒙古自治区産は栽培年数が短く、質は若干硬く、内部の色は薄い黄色で、甘味が薄い。当社では栽培年数の長い陝西省の黄土高原で栽培された黄耆を調剤用生薬に用いている。
+
; 灰分 : 日本 > 中国ALL ( p < 0.05 )
 陝西省産の黄耆は、太さにより1~5等に等級分けされる。それ以外に、側根の「枝耆」と、細い側根の「須耆」があるが、これらは漢方エキス製剤の原料などに使用される。
+
; 希エタノールエキス含量 : 日本 > 中国ALL ( p < 0.1 )
  
*1992年当時の等級規格
+
====中国の産地による比較====
 +
; 灰分 : 山西 > 河北, 内蒙古, 陜西 ( p < 0.05 )
 +
; 希エタノールエキス含量 : 陜西 > 山西 ( p < 0.05 ).その他は有意差無し.
  
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{| class="wikitable sortable"
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|+ 中国・陜西省産:等級別理化学試験 DATA <small>Mean±SD(%)</small>
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! 等級 || 検体数 || 灰分<br/>5.0%以下 || 酸不溶性灰分<br/>1.0%以下 || 乾燥減量<br/>13.0%以下 || 希エタノール<br/>エキス含量
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|-
 +
| 2 等 || 17 || 2.8 ±0.2 || 0.3 ±0.1 || 8.9 ±0.8 || 31.0 ±3.1
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|-
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| 3 等 || 63 || 2.7 ±0.3 || 0.3 ±0.1 || 9.2 ±0.9 || 30.8 ±2.5
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|-
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| 4 等 || 56 || 2.7 ±0.2 || 0.3 ±0.1 || 9.1 ±1.0 || 30.7 ±2.2
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| 5 等 || 48 || 2.8 ±0.2 || 0.4 ±0.1 || 8.9 ±1.0 || 30.3 ±2.5
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|}                             
  
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; 灰分 : 3等 > 2等, 5等 ( p < 0.05 ).その他は有意差無し.
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; 希エタノールエキス含量 : 等級による有意差無し.
  
 
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==内部形態:鏡検==
 
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◎特殊な黄耆
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 韓国では一般的に皮去り黄耆が使われ、大韓薬典にも「・・または周皮を取り除いたもの」と記載されている。
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【生産加工状況】
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Ⅰ.中国陝西省子洲県:黄土高原栽培
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 海抜約1000mの黄土高原で栽培されている。初冬あるいは新春に播種し、数回/年の除草を行うが肥料などは基本的には与えない。播種後、5・6年で掘り上げるが、近年は栽培年数が4・5年に短縮されている。
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 地下部は約2m伸びるため、高原の斜面の傾斜を利用して斜面の下から崩しながら掘り上げる。
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*㈱栃本天海堂の自社栽培
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 近年、中国国内の黄耆価格の低迷で栽培年数が約4年で掘り上げが行われている。良質な黄耆を生産するには栽培年数は5・6年は必要であるが、生産者は長期の栽培を嫌うため、自社で陝西省の黄土高原で栽培を行っている。
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【理化学的品質評価】
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TableⅠ 産地別理化学試験 DATA (灰分,酸不溶性灰分,乾燥減量,希エタノールエキス含量)
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産地 検体数 灰分
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5.0%以下 酸不溶性灰分
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1.0%以下 乾燥減量
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13.0%以下 希エタノール
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エキス含量
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 中国ALL 285 2.8±0.4 0.3±0.1 9.1±1.1 30.1±3.3
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  陜西 230 2.8±0.2 0.3±0.1 9.1±1.0 30.2±2.7
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  山西 8 3.5±0.5 0.5±0.2 9.9±1.3 27.4±2.8
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  内蒙古 14 2.8±0.7 0.5±0.2 9.2±1.3 29.6±5.1
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  河北 14 2.9±0.7 0.3±0.3 8.9±0.7 29.7±6.3
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 日本 12 3.2±0.5 0.2±0.1 9.1±1.7 32.3±7.6
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対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む)        Mean±SD(%)
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 中国ALLと日本産の比較 
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○ 灰分 : 日本 > 中国ALL ( p < 0.05 )
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○ 希エタノールエキス含量 : 日本 > 中国ALL ( p < 0.1 )
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 中国の産地による比較 
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○ 灰分 : 山西 > 河北, 内蒙古, 陜西 ( p < 0.05 )
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○ 希エタノールエキス含量 : 陜西 > 山西 ( p < 0.05 ).その他は有意差無し.
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TableⅡ 中国・陜西省産:等級別理化学試験 DATA
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     (灰分,酸不溶性灰分,乾燥減量,希エタノールエキス含量)
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等級 検体数 灰分
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5.0%以下 酸不溶性灰分
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1.0%以下 乾燥減量
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13.0%以下 希エタノール
+
エキス含量
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2 等 17 2.8±0.2 0.3±0.1 8.9±0.8 31.0±3.1
+
3 等 63 2.7±0.3 0.3±0.1 9.2±0.9 30.8±2.5
+
4 等 56 2.7±0.2 0.3±0.1 9.1±1.0 30.7±2.2
+
5 等 48 2.8±0.2 0.4±0.1 8.9±1.0 30.3±2.5
+
                                                              Mean±SD(%)
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○ 灰分 : 3等 > 2等, 5等 ( p < 0.05 ).その他は有意差無し.
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○ 希エタノールエキス含量 : 等級による有意差無し.
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【内部形態:鏡検】
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JP15:内部形態についての記載はない。
 
JP15:内部形態についての記載はない。
<生薬の性状>JP15
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; 生薬の性状 JP15
 本品はほぼ円柱形を呈し、長さ30~100cm、径0.7~2cmで、ところどころに小さい側根の基部を付け、根頭部の近くはねじれている。外面は淡灰黄色~淡褐黄色で、不規則なあらい縦じわと横長の皮目ようの模様がある。折りにくく、折面は繊維性である。横切面をルーぺ視するとき、最外層は周皮で、皮部は淡黄白色、木部は淡黄色、形成層付近はやや褐色を帯びる。皮部の厚さは木部の径の約1/3~1/2で、細いものでは木部から皮部にわたって白色の放射組織が認められるが、太いものではしばしば放射状の裂け目となっている。通例、髄は認めない。
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本品はほぼ円柱形を呈し、長さ30~100cm、径0.7~2cmで、ところどころに小さい側根の基部を付け、根頭部の近くはねじれている。外面は淡灰黄色~淡褐黄色で、不規則なあらい縦じわと横長の皮目ようの模様がある。折りにくく、折面は繊維性である。横切面をルーぺ視するとき、最外層は周皮で、皮部は淡黄白色、木部は淡黄色、形成層付近はやや褐色を帯びる。皮部の厚さは木部の径の約1/3~1/2で、細いものでは木部から皮部にわたって白色の放射組織が認められるが、太いものではしばしば放射状の裂け目となっている。通例、髄は認めない。
 本品は弱いにおいがあり、味は甘い。
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 純度試験の項では、次のように定められている。
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・Hedysarum属植物及びその他の根
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 本品の縦切片を鏡検するとき、繊維束の外辺にシュウ酸カルシウムの単晶を含む結晶細胞列を認めない。
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本品は弱いにおいがあり、味は甘い。
  
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純度試験の項では、次のように定められている。
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* Hedysarum属植物及びその他の根
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本品の縦切片を鏡検するとき、繊維束の外辺にシュウ酸カルシウムの単晶を含む結晶細胞列を認めない。
  
 
●内部形態の比較
 
●内部形態の比較
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  <形成層付近の拡大>  <形成層付近の拡大>
 
  <形成層付近の拡大>  <形成層付近の拡大>
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市場品黄耆の細い部分
 
市場品黄耆の細い部分
 
       と 1年生の比較→
 
       と 1年生の比較→
・1年生の方が、形成層と師部繊維の距離が長く、師部が発達している(または師部が退廃していない)。
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* 1年生の方が、形成層と師部繊維の距離が長く、師部が発達している(または師部が退廃していない)。
 
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* 師部繊維について、1年生では、繊維が未発達で膜が薄い(黄耆の細いものでは、師部繊維は厚膜)。
・師部繊維について、1年生では、繊維が未発達で膜が薄い(黄耆の細いものでは、師部繊維は厚膜)。
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 以上の点で違いがあるのではないかと考えられる。また、成長の過程、季節によっても違いがあるのではないかと考えられる。
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以上の点で違いがあるのではないかと考えられる。また、成長の過程、季節によっても違いがあるのではないかと考えられる。
 
  <師部繊維の拡大>  <師部繊維の拡大>
 
  <師部繊維の拡大>  <師部繊維の拡大>

Revision as of 17:21, 4 November 2010

Contents

黄  耆

『日本薬局方 第15改正 (JP15)』

  • 黄耆:ASTRAGALI RADIX
キバナオウギ Astragalus membranaceus Bunge またはAstragalus mongholicus Bunge (Leguminosae) の根と規定されている。

『中華人民共和国薬典2005年版』

  • 黄芪:RADIX ASTRAGALI
蒙古黄 Astragalus membranaceus (Fisch.) Bge. var. mongholicus (Bge.) Hsiao あるいは 膜莢黄 Astragalus membranaceus (Fisch.) Bge. の干燥した根と規定されている。その他に紅(晋耆ともいう)が収載されている。
  • 紅芪:RADIX HEDYSARI
多序岩黄 Hedysarum polybotrys Hand.-Mazz.の干燥した根と規定されている。

『大韓薬典 第9改正』

  • 황기 黄芪:ASTRAGALI RADIX
황기 Astragalus membranaceus Bungeあるいは몽골황기(蒙古黄) Astragalus membranaceus Bunge var.mongholicus Hsiaoの根でそのまま、または周皮を取り除いたものと規定されている。

市場流通品と現状

現在流通する黄耆は全て栽培品で、野生品は市場では見当たらない。中国産黄耆は中国東北部に産する外皮の色が灰黒色の「黒皮耆」と、山西省・陝西省などで生産される外皮の色が淡黄色か黄土色の「白皮耆」に区別されていた。ト奎耆や寧古塔耆と呼ばれていた本物の「黒皮耆」は生産が途絶えており、香港・東南アジアでは黄耆(白皮耆)を五倍子で着色したものが「黒皮耆」として使用されている。

中国産黄耆以外に、日本市場では北朝鮮、韓国産も流通したことがあるが、現在は中国産黄耆が100%近くを占める。北海道で栽培している北海道産黄耆もわずかに流通する。

中国産黄耆

1992年当時は「原生耆」「耆節」「山西正副白耆」「河北綿耆」など厳格な輸出規格で流通していたが、市場経済の導入で流通規格は崩壊した。現在の主な産地は3つあり、河北省産(栽培年数2年)、内蒙古自治区産(栽培年数2~4年)、陝西省産(栽培年数5・6年)がある。栽培黄耆は年数の長いもの程、優れた品質といわれており、経験的鑑別では柔軟で内部は黄色く、甘味が強いものが良品とされている。河北省産、内蒙古自治区産は栽培年数が短く、質は若干硬く、内部の色は薄い黄色で、甘味が薄い。当社では栽培年数の長い陝西省の黄土高原で栽培された黄耆を調剤用生薬に用いている。

陝西省産の黄耆は、太さにより1~5等に等級分けされる。それ以外に、側根の「枝耆」と、細い側根の「須耆」があるが、これらは漢方エキス製剤の原料などに使用される。

1992年当時の等級規格

特殊な黄耆

韓国では一般的に皮去り黄耆が使われ、大韓薬典にも「・・または周皮を取り除いたもの」と記載されている。

生産加工状況

中国陝西省子洲県:黄土高原栽培

海抜約1000mの黄土高原で栽培されている。初冬あるいは新春に播種し、数回/年の除草を行うが肥料などは基本的には与えない。播種後、5・6年で掘り上げるが、近年は栽培年数が4・5年に短縮されている。

地下部は約2m伸びるため、高原の斜面の傾斜を利用して斜面の下から崩しながら掘り上げる。

㈱栃本天海堂の自社栽培

近年、中国国内の黄耆価格の低迷で栽培年数が約4年で掘り上げが行われている。良質な黄耆を生産するには栽培年数は5・6年は必要であるが、生産者は長期の栽培を嫌うため、自社で陝西省の黄土高原で栽培を行っている。

理化学的品質評価

産地別理化学試験 DATA
対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む) Mean±SD(%)
産地 検体数 灰分
5.0%以下
酸不溶性灰分
1.0%以下
乾燥減量
13.0%以下
希エタノール
エキス含量
中国ALL 285 2.8 ±0.4 0.3 ±0.1 9.1 ±1.1 30.1 ±3.3
陜西 230 2.8 ±0.2 0.3 ±0.1 9.1 ±1.0 30.2 ±2.7
山西 8 3.5 ±0.5 0.5 ±0.2 9.9 ±1.3 27.4 ±2.8
内蒙古 14 2.8 ±0.7 0.5 ±0.2 9.2 ±1.3 29.6 ±5.1
河北 14 2.9 ±0.7 0.3 ±0.3 8.9 ±0.7 29.7 ±6.3
日本 12 3.2 ±0.5 0.2 ±0.1 9.1 ±1.7 32.3 ±7.6

中国ALLと日本産の比較

灰分 
日本 > 中国ALL ( p < 0.05 )
希エタノールエキス含量 
日本 > 中国ALL ( p < 0.1 )

中国の産地による比較

灰分 
山西 > 河北, 内蒙古, 陜西 ( p < 0.05 )
希エタノールエキス含量 
陜西 > 山西 ( p < 0.05 ).その他は有意差無し.
中国・陜西省産:等級別理化学試験 DATA Mean±SD(%)
等級 検体数 灰分
5.0%以下
酸不溶性灰分
1.0%以下
乾燥減量
13.0%以下
希エタノール
エキス含量
2 等 17 2.8 ±0.2 0.3 ±0.1 8.9 ±0.8 31.0 ±3.1
3 等 63 2.7 ±0.3 0.3 ±0.1 9.2 ±0.9 30.8 ±2.5
4 等 56 2.7 ±0.2 0.3 ±0.1 9.1 ±1.0 30.7 ±2.2
5 等 48 2.8 ±0.2 0.4 ±0.1 8.9 ±1.0 30.3 ±2.5
灰分 
3等 > 2等, 5等 ( p < 0.05 ).その他は有意差無し.
希エタノールエキス含量 
等級による有意差無し.

内部形態:鏡検

JP15:内部形態についての記載はない。

生薬の性状 JP15

本品はほぼ円柱形を呈し、長さ30~100cm、径0.7~2cmで、ところどころに小さい側根の基部を付け、根頭部の近くはねじれている。外面は淡灰黄色~淡褐黄色で、不規則なあらい縦じわと横長の皮目ようの模様がある。折りにくく、折面は繊維性である。横切面をルーぺ視するとき、最外層は周皮で、皮部は淡黄白色、木部は淡黄色、形成層付近はやや褐色を帯びる。皮部の厚さは木部の径の約1/3~1/2で、細いものでは木部から皮部にわたって白色の放射組織が認められるが、太いものではしばしば放射状の裂け目となっている。通例、髄は認めない。

本品は弱いにおいがあり、味は甘い。

純度試験の項では、次のように定められている。

  • Hedysarum属植物及びその他の根

本品の縦切片を鏡検するとき、繊維束の外辺にシュウ酸カルシウムの単晶を含む結晶細胞列を認めない。

●内部形態の比較   ○黄耆 <中国陝西省>         ○黄耆 <北海道>          ○紅耆(晋耆)<中国甘粛省>


●内部形態の比較(サンプル) 1年生との比較用  ○正綿耆

      <中国河北省>	 ○黄耆・1年生
      <中国内蒙古自治区>	○黄耆(細いもの)
    <中国陝西省>

  <形成層付近の拡大>  <形成層付近の拡大>

市場品黄耆の細い部分        と 1年生の比較→

  • 1年生の方が、形成層と師部繊維の距離が長く、師部が発達している(または師部が退廃していない)。
  • 師部繊維について、1年生では、繊維が未発達で膜が薄い(黄耆の細いものでは、師部繊維は厚膜)。

以上の点で違いがあるのではないかと考えられる。また、成長の過程、季節によっても違いがあるのではないかと考えられる。   <師部繊維の拡大>  <師部繊維の拡大>

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