Tochimoto:Pinelliae Tuber
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輸出規格は周皮が完全に除かれ、変色していないものとされている。農家での皮去りは不十分であり、水洗兼研磨機では完全に周皮を去ることができないため、目視選別が必要となる。当然、粒度の大きい甲・乙級などと珍珠では時間あたりの選別重量が異なるため、珍珠規格の選別加工賃は割高に設定されている。選別作業員の賃金は出来高支払い制により、選別の精度に問題はなく、選別速度は速い。 | 輸出規格は周皮が完全に除かれ、変色していないものとされている。農家での皮去りは不十分であり、水洗兼研磨機では完全に周皮を去ることができないため、目視選別が必要となる。当然、粒度の大きい甲・乙級などと珍珠では時間あたりの選別重量が異なるため、珍珠規格の選別加工賃は割高に設定されている。選別作業員の賃金は出来高支払い制により、選別の精度に問題はなく、選別速度は速い。 | ||
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Image:Tochimoto-Pinellia-CIMG0781.jpg|選別中の作業員 | Image:Tochimoto-Pinellia-CIMG0781.jpg|選別中の作業員 | ||
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| ○天南星<br/>・横切面(大きな油道が認められる) | | ○天南星<br/>・横切面(大きな油道が認められる) | ||
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<半夏と天南星の比較> | <半夏と天南星の比較> | ||
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・シュウ酸カルシウムの束針晶は、半夏、天南星ともに認められるが、集晶は、天南星には認められ、半夏には認められない。なお、中国で天南星として用いられる Arisaema 属植物の塊茎で、集晶が認められないものもある。 | ・シュウ酸カルシウムの束針晶は、半夏、天南星ともに認められるが、集晶は、天南星には認められ、半夏には認められない。なお、中国で天南星として用いられる Arisaema 属植物の塊茎で、集晶が認められないものもある。 | ||
・横切面において、天南星には油道が認められることが多いが、半夏には認められない。 | ・横切面において、天南星には油道が認められることが多いが、半夏には認められない。 |
Revision as of 09:24, 3 December 2010
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General Index | Names | Prescriptions | Books | Journals | Terminology | Chinese Medicines |
出典: 栃本天海堂創立60周年記念誌 |
半夏 (Pinellia Tuber)
半夏はサトイモ科のカラスビシャクPinellia ternata Breitenbachのコルク層を除いた塊茎を基原とする。生産期は5月中旬で、半分夏であることから「半夏」と言われるようになった。節季の七十二候に「半夏生(ハンゲショウズ)」の雑節があるが、これは半夏(烏柄杓:カラスビシャク)という薬草が生えるころを意味していることも興味深い。半夏は畑や田んぼの畔に多く自生しており、本草書に「守田」「水玉」の名があるのも理解できる。残念なことだが水田で農薬が使用されるようになり、野生品が減少している。 流通する半夏の多くは野生品の採集で生産されている。そのためか同じサトイモ科の「天南星」が混入することが多く、生薬の外部形態からは識別が難しいのが現状である。また古来、半夏は白くて大きなものが良品とされ、中国の生産では漂白を目的に硫黄燻蒸が一般的に行われており、SO2残留の安全性や、硫黄酸化物による大気汚染の問題があるため、当社では硫黄燻蒸を施さない「無硫半夏」を特別に生産し、「有硫半夏」と区別している。 (より詳しく見る→栃本天海堂創立60周年記念誌)
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半 夏
『日本薬局方 15改正(JP15)』
- 半夏:PINELLIAE TUBER
- カラスビシャク Pinellia ternata Breitenbach (Araceae) のコルク層を除いた塊茎と規定されている。
『中華人民共和国薬典2005年版』 半夏:RHIZOMA PINELLIAE
- 半夏 Pinellia ternata (Thunb.) Breit. の乾燥した塊茎と規定されている。
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『大韓薬典 第9改正』
- 반하 半夏:PINELLIAE TUBER
- 반하 Pinellia ternata Breitenbachの塊茎で周皮を完全に除いたものと規定されている。
市場流通品と現状
戦前は日本国内でも採集されていたが、現在は北海道などで少量栽培されているに過ぎない。韓国から輸入されて流通したことはあるが、現在は中国産が市場を占めている。半夏の等級は粒の大きさで特級(150-180粒/500g)、甲級(350-400粒/500g)、乙級(700-800粒/500g)、丙級(1350-1500粒/500g)、珍珠(1500粒以上/500g)の5段階がある。それ以外に粒度選別をしない統庄品も市場には流通する。 調剤用の半夏は伝統的に○切り加工される。これは原形の規格がわかることと、表面積を大きくし抽出効率を増やすためである。
生産加工状況
半夏は乾燥すると周皮がはがれにくいため、一般的には採集した農家が新鮮な時に皮を去り、乾燥して加工場、購買所で取引を行う。
輸出用選別
輸出規格は周皮が完全に除かれ、変色していないものとされている。農家での皮去りは不十分であり、水洗兼研磨機では完全に周皮を去ることができないため、目視選別が必要となる。当然、粒度の大きい甲・乙級などと珍珠では時間あたりの選別重量が異なるため、珍珠規格の選別加工賃は割高に設定されている。選別作業員の賃金は出来高支払い制により、選別の精度に問題はなく、選別速度は速い。
中国の半夏栽培
半夏は四川省、甘粛省、雲南省、貴州省、湖北省、湖南省など各地で小麦の収穫後に生産されていたが、農薬使用の拡大にともなって生産量は減少している。現在、半夏の価格上昇によって甘粛省、四川省などで栽培が進んできているが生産量はまだ少ない。
理化学的品質評価
産地 | 検体数 | 灰分 3.5%以下 |
酸不溶性灰分 | 乾燥減量 14.0%以下 |
希エタノール エキス含量 |
---|---|---|---|---|---|
中国ALL | 296 2.2±0.4 | 0.12±0.06 | 11.6±2.4 | 4.0±1.4 | |
四川 | 80 | 2.2±0.5 | 0.11±0.03 | 11.4±2.8 | 3.6±1.6 |
甘粛 | 60 | 2.1±0.4 | 0.11±0.02 | 10.8±2.6 | 3.6±1.4 |
貴州 | 44 | 2.4±0.3 | 0.14±0.10 | 12.8±1.7 | 4.8±0.9 |
雲南 | 24 | 2.3±0.3 | 0.16±0.13 | 11.8±1.2 | 4.3±0.9 |
- 灰分
- 貴州 > 四川,甘粛 ( p < 0.05 ). 雲南 > 甘粛 ( p < 0.05 ).
- 希エタノールエキス含量
- 貴州, 雲南 > 四川,甘粛 ( p < 0.05 ). 貴州 > 雲南 ( p < 0.1 ).
等級 | 検体数 | 灰分 3.5%以下 |
酸不溶性灰分 | 乾燥減量 14.0%以下 |
希エタノール エキス含量 |
---|---|---|---|---|---|
甲級 | 34 | 2.0 ±0.3 | 0.11 ±0.04 | 11.9 ±2.3 | 3.9 ±1.7 |
乙級 | 71 | 2.1 ±0.3 | 0.11 ±0.05 | 11.7 ±2.4 | 4.2 ±1.5 |
丙級 | 91 | 2.1 ±0.4 | 0.11 ±0.02 | 11.3 ±2.6 | 3.9 ±1.6 |
珍珠 | 70 | 2.4 ±0.4 | 0.13 ±0.10 | 12.5 ±1.6 | 4.5 ±1.0 |
- 灰分
- 珍珠 > 丙級, 乙級, 甲級 ( p < 0.05 ).
- 希エタノールエキス含量
- 珍珠 > 丙級, 甲級 ( p < 0.05 ). その他は有意差無し.
内部形態:鏡検
本品はやや偏圧された球形~不整形を呈し、径0.7~2.5cm、高さ0.7~1.5cmである。外面は白色~灰白黄色で、上部には茎の跡がくぼみとなり、その周辺には根の跡がくぼんだ細点となっている。質は充実する。切面は白色、粉性である。 本品はほとんどにおいがなく、味は初めなく、やや粘液性で、後に強いえぐ味を残す。 本品の横切片を鏡検するとき、主としてでんぷん粒を充満した柔組織からなり、わずかにシュウ酸カルシウムの束晶を含む粘液細胞が認められる。でんぷん粒は主として2~3個の複粒で、通例、径10~15μm、単粒は、通例、径3~7µmである。束晶は長さ25~150μmである。 |
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各種比較
○半夏 甲級 <中国甘粛省> |
○天南星 ・横切面(大きな油道が認められる) |
・横切面(油道は認められるが小さい) |
・束針晶 | ・集晶 |
<半夏と天南星の比較>
・シュウ酸カルシウムの束針晶は、半夏、天南星ともに認められるが、集晶は、天南星には認められ、半夏には認められない。なお、中国で天南星として用いられる Arisaema 属植物の塊茎で、集晶が認められないものもある。 ・横切面において、天南星には油道が認められることが多いが、半夏には認められない。