Aritalab:Lecture/Biochem/Saccharide/Hexose

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===6 単糖のアルドース===
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==アルドース==
  
 
多くの糖は-oseという語尾をもちます。この中でアルデヒド(aldehyde)基をもつ糖の総称をアルドース(aldose)といいます。炭素 6 個のアルドースは 4 個の不斉炭素を持ち、 2<sup>4</sup>=16 通りの異性体があります。このうちの 8 つ(L体)は自然界に存在せず、残りの 8 種についても、D-グルコース、D-ガラクトース、D-マンノース以外はほとんどみられません。
 
多くの糖は-oseという語尾をもちます。この中でアルデヒド(aldehyde)基をもつ糖の総称をアルドース(aldose)といいます。炭素 6 個のアルドースは 4 個の不斉炭素を持ち、 2<sup>4</sup>=16 通りの異性体があります。このうちの 8 つ(L体)は自然界に存在せず、残りの 8 種についても、D-グルコース、D-ガラクトース、D-マンノース以外はほとんどみられません。
  
:'''D-Glucose''' ブドウ糖は英語でも grape sugar
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;参考文献
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* Takeuchi M, Chirality, 2000;12:338 PMID 10824148
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* Zemek J, Folia Microbiol (Praha), 1975;20:467 PMID 285
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===D-Glucose===
 
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&alpha;-D-glucose グルコースが「ブドウ糖(grape sugar)」と呼ばれるのは、熟したブドウ果汁に多いからだそうです。発見者はドイツの化学者Andreas Marggraf(1747年)ですが、glucoseという名前は1838年にJean Dumasがギリシャ語の「甘い」(glykos)から作り出しました。江崎グリコと同じ語源です。不斉炭素を含む立体構造の解明は、20 世紀初頭のEmil Fischerを待たねばなりません。フィッシャーさんは、不斉炭素のフィッシャー投影図(構造一覧表にある糖を縦に引き伸ばした描き方)を始めた人です。甘さは、ショ糖を 1 とすると 0.7 程度です。
 
&alpha;-D-glucose グルコースが「ブドウ糖(grape sugar)」と呼ばれるのは、熟したブドウ果汁に多いからだそうです。発見者はドイツの化学者Andreas Marggraf(1747年)ですが、glucoseという名前は1838年にJean Dumasがギリシャ語の「甘い」(glykos)から作り出しました。江崎グリコと同じ語源です。不斉炭素を含む立体構造の解明は、20 世紀初頭のEmil Fischerを待たねばなりません。フィッシャーさんは、不斉炭素のフィッシャー投影図(構造一覧表にある糖を縦に引き伸ばした描き方)を始めた人です。甘さは、ショ糖を 1 とすると 0.7 程度です。
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L-glucoseは希少糖で、Escherichia coli(大腸菌)などの細菌が代謝できる酵素を持ちます。
 
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;参考文献
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* Van Creveld S, Biochem J, 1923;17:860 PMID 16743225
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* Rudney H, Science, 1940;92:112 PMID 17755265
  
:'''D-Galactose''' Gala湯沢ってどういう意味?
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===D-Galactose===
 
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&alpha;-D-galactoseガラクトースの語源はギリシャ語の牛乳(gala)に由来します。(Gala湯沢は、牛乳のように白いスキー場という意味なのです。)乳には、ガラクトースとグルコースで構成される乳糖が含まれます。ガラクトース自体は天然に単糖で存在しませんが、糖脂質という形で神経細胞に必須の成分です。一般に糖鎖構造の重要な成分であり、ガラクトースを認識するたんぱく質も多く存在します。とりわけ、脳神経が急速に発達する乳幼児に必須の成分です。ほとんど聞きませんが、和名は「脳糖」なのだそうです。Gala湯沢の語源は、ここをクリック (乳ではありません)。甘さは、ショ糖を 1 とすると 0.3 程度です。
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&alpha;-D-galactoseガラクトースの語源はギリシャ語の牛乳(gala)に由来します。(Gala湯沢は、牛乳のように白いスキー場という意味です。)乳には、ガラクトースとグルコースで構成される乳糖が含まれます。ガラクトース自体は天然に単糖で存在しませんが、糖脂質という形で神経細胞に必須の成分です。Lactose、Raffinoseなどのオリゴ糖、Galactan、Galactomannanなどの多糖、配糖体、糖脂質の成分として重要で、ガラクトースを認識するたんぱく質も多く存在します。とりわけ、脳神経が急速に発達する乳幼児に必須の成分です。ほとんど聞きませんが、和名は「脳糖」なのだそうです。甘さは、ショ糖を 1 とすると 0.3 程度です。
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L-galactose は希少糖で寒天、植物ゴムの成分です。
 
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:'''D-Mannose''' マンナ同様、生命に必須
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;参考文献
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* Batey JF, Carbohydr Res, 1975;43:133 PMID 1182710
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* Fried J, J Am Chem Soc, 1949;71:140 PMID 18123429
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* May F, Hoppe Seylers Z Physiol Chem, 1954;296:154 PMID 13221239
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===D-Mannose===
 
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| [[File:Alpha-D-Mannose.png|100px]]
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| [[File:Alpha-D-Mannose.png|120px]]
 
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&alpha;-D-mannoseマンノースも天然には単糖で存在しません。語源は旧約聖書(のExodus)において神が彷徨える民に与えた食料、マンナ(manna)です。そういえば森永マンナビスケット、という商品がありますが、あれと同じです。(マンナにマンノースは入っていません。)甘さは、ショ糖を 1 とすると 0.3 程度です。
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&alpha;-D-mannoseマンノースは天然には単糖で存在しませんが、多糖Mannanをはじめ、リポ多糖、糖タンパクの成分として、広く植物界に分布します。酵母の細胞壁にも含まれます。語源は旧約聖書(のExodus)において神が彷徨える民に与えた食料、マンナ(manna)です。そういえば森永マンナビスケット、という商品がありますが、あれと同じです。(マンナにマンノースは入っていません。)甘さは、ショ糖を 1 とすると 0.3 程度です。
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L-mannoseは天然に存在しません。
 
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;参考文献
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* Fried J, J Am Chem Soc, 1949;71:140 PMID 18123429
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===そのほかのaldose (allose, idose, gulose, talose, altrose)===
 
{| class="wikitable"
 
{| class="wikitable"
|+ そのほかのaldose
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! 名前 || 詳細
| allose || Protea rubropilosaという植物に含まれることが知られていますが、天然にはほとんど存在しません。そのため希少糖と呼ばれます。
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!width="40%"| 文献
 
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| idose || アルデヒド部分がカルボキシル基に変化したイヅロン酸(iduronic acid)が細胞内の糖鎖グリコサミノグリカン(アミノ糖を持つ多糖でGAGと略される)に含まれます。
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| allose<br/>[[File:Alpha-D-Allose.png|80px]] || D-alloseは [[Species:Protea|Protea]] rubropilosaという植物に含まれることが知られていますが、天然にはほとんど存在しない希少糖ですが、D-psicoseから人工合成できます。L-allose は天然に存在しません。
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| Poonperm W, J Biosci Bioeng, 2007;103:28 PMID 17434433<br/>Perold GW, J Chem Soc Perkin, 1973;6:643 PMID 4736394
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| gulose || 天然には存在しません。glucoseの不斉炭素をひっくり返して得られるため、glucoseの文字をひっくり返してguloseとつけられました。構造一覧表で確認してみましょう。(それなら本当はgulcose?)
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| idose<br/>[[File:Alpha-D-Idose.png|80px]] || D-idoseは希少糖ですが、アルデヒド部分がカルボキシル基に変化したイヅロン酸(iduronic acid)が細胞内の糖鎖グリコサミノグリカン(アミノ糖を持つ多糖でGAGと略される)に含まれます。L-idoseは天然に存在せず、1,2-O-Isopropylidene-alpha-D-glucofuranoseから人工合成されます。
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| Ali Y, J Chem Soc Perkin, 1968;14:1764 PMID 5691107<br/>Horton D, Carbohydr Res, 1977;58:89 PMID 912687
 
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| talose || 天然には存在しません。
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| gulose<br/>[[File:Alpha-D-Gulose.png|80px]] || D-gulose, L-gulose共に希少糖です。D体はCaulobacter crescentus(強力な接着物質を産生する水生菌)などの細菌から単離され、L-tagatoseとD-sorboseから人工合成できます。L体は好熱好酸性古細菌Thermoplasma acidophilumに特有です。<br/>
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構造がglucoseの不斉炭素をひっくり返して得られるため、glucoseの文字をひっくり返してguloseとつけられました。
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|Bhuiyan SH, J Biosci Bioeng, 1999;88:567 PMID 16232663<br/>Ravenscroft N, J Bacteriol, 1991;173:5677 PMID 1885545<br/>Swain M, Biochim Biophys Acta, 1997;1345:56 PMID 9084501
 
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|-
| altrose || 天然には存在しません。
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| talose<br/>[[File:Alpha-D-Talose.png|80px]] || D,L体とも天然には存在しません。D体は、タンパク質合成を阻害するアミノグリコシド系抗生物質Hygromycin Bの成分です。L体はL-tagatoseとD-sorboseから人工合成されます。
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| Paul F, J Org Chem, 1962;27:2793 DOI: 10.1021/jo01055a020<br/>Bhuiyan SH, J Biosci Bioeng, 1999;88:567 PMID 16232663
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|-
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| altrose<br/>[[File:Alpha-D-Altrose.png|80px]] || D,L体とも天然には存在しません。D体はD-psicoseから人工合成できます。
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| Poonperm W, J Biosci Bioeng, 2007;103:28 PMID 17434433<br/>Hyatt MT, J Bacteriol, 1964;88:1403 PMID 14234800
 
|}
 
|}
  
;デオキシ誘導体:
+
===デオキシ糖 (rhamnose, fucose, quinovose)===
  
酸素が足りない糖をデオキシ糖と呼びます。細胞壁の成分として有名なL-ラムノースとL-フコースはそれぞれFishcer投影法で描いたときに一番下にくる炭素( 6 位)から酸素がなくなったL-マンノースとL-ガラクトースのことです。
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糖の水酸基 (-OH) を水素 (-H) で置換したデオキシ糖と呼びます。細胞壁の成分として有名なL-ラムノースとL-フコースはそれぞれFishcer投影法で描いたときに一番下にくる炭素( 6 位)から酸素がなくなったL-マンノースとL-ガラクトースのことです。D-キノボーズは、6-デオキシグルコースのことです。
  
* L-rhamnose ... 6-deoxy-L-mannose
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{| class="wikitable"
* L-fucose ... 6-deoxy-L-galactose
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! 名前 || 構造 || 解説
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! width="40%"| 文献
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| L-rhamnose = 6-deoxy-L-mannose [[File:Alpha-L-Rhamnose.png|80px]]
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| [[File:L-Rhamnose.png|70px]]
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| L-rhamnoseは[[Species:Rhamnus|Rhamnus]]属(クロウメモドキ属)の植物Sea Buckthornから単離されました。Rhamnosideの形で、多糖、配糖体、植物ゴムの成分として、植物に普遍的に存在します。D体は希少糖で、抗酸菌糖脂質Glycopeptidolipid (GPL) に含まれます。
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| Rasputina DB, Chemistry of Natural Compounds, 1975;11:105 DOI: 10.1007/BF00567049<br/>Wilson DM, Biochim Biophys Acta, 1955;17:289 PMID 13239680<br/>Nishikawa K, Kekkaku, 1998;73:295 PMID 9613050<br/>Ramm M, Carbohydr Res, 2003;338:109 PMID 12504387
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| L-fucose  = 6-deoxy-L-galactose [[File:Alpha-L-Fucose.png|80px]]
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| [[File:L-Fucose.png|70px]]
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| L-fucoseは海藻に含まれるFucoidan(フコイダン)等の粘質多糖類をはじめ、ミルクオリゴ糖、糖タンパク、糖脂質の成分。動植物に普遍的に存在します。D体は希少糖でDigitalis(ジギタリス)配糖体の成分に含まれます。
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| James SP, J Chem Soc, 1945;Nov:746 PMID 13319278<br/>Green M, Cohen SS, J Chem Soc, 1956;219(2):557 PMID 21008345<br/>Springer GF, Biochem J, 1962;85:282 PMID 13978547
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|-
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| D-quinovose = 6-deoxy-D-glucose [[File:Alpha-D-Quinovose.png|80px]]
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| [[File:D-Quinovose.png|70px]]
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| Quina(キナ)の樹皮に含まれる配糖体Quinovinの成分です。Sulfateの形で植物に普遍的に存在します。
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L体は天然に存在しません。
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| Michaljanicova D, Folia Microbiol, 1981;26:89 PMID 7262717<br/>Sonesson A, Microbiology, 1994;140:2663 PMID 8000537
 +
|}
  
===6 単糖のケトース===
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===ウロン酸 (galacturonic acid, glucuronic acid, mannuronic acid)===
  
アルドースに対して、ケト(keto)基、つまり 2 重結合でつながった酸素をもつ糖をケトース(ketose)といいます。 6 炭糖のケトースは 3 個の不斉炭素を含むので 2<sup>3</sup>=8 通りの異性体があります。L体は自然界に存在せず、D体でも存在するのはD-フルクトースだけでしょう。
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Fishcer投影法で描いたときに一番下にくる炭素( 6 位)の炭素が酸化してカルボキシル基になっているものをウロン酸 (uronic acid) と呼びます。
  
:'''D-Fructose'''
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{| class="wikitable"
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| D-galacturonic acid [[File:Alpha-D-Galacturonic acid.png|80px]]
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| D-galactoseの酸化により得られ、pectinをはじめとする植物多糖、動物多糖、微生物多糖、ガム質の成分として、動植物に普遍的に存在します。
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L体は天然に存在しないとされますが、Paederia foetidaの葉にD/L galacturonic acidが存在するとの報告もあります。
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| Isherwood FA, Biochem J, 1956;64:13 PMID 13363799<br/>
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Kumar V, Nature Precedings, 2011 http://precedings.nature.com/documents/5752/version/1
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| D-glucuronic acid [[File:Alpha-D-Glucuronic acid.png|80px]]
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| 甘草の配糖体、植物ゴム、植物細胞壁のヘミセルロース、海藻のムコ多糖、細菌多糖の成分です。動物では毒物やホルモンと結合し輸送しやすくした融合体 (glucuronid) の形で存在します。
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 +
L体は天然に存在しません。
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| Doerschuk AP, J Biol Chem, 1952;195:855 PMID 14946198<br/>
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Burns JJ, Biochim Biophys Acta, 1959;33:215 PMID 13651202
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|-
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| D-mannuronic acid [[File:Alpha-D-Mannuronic acid.png|80px]]
 +
| 褐藻に含まれる多糖alginic acid、微生物多糖の成分として存在します。
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 +
L体は天然に存在しません。
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| Link KP, Science, 1932;76:386 PMID 17730850<br/>Haug A, Biochim Biophys Acta, 1969;192:557 PMID 5368261
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|-
 +
| L-iduronic acid [[File:Alpha-D-Iduronic acid.png|80px]]
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| 動物でdermatan sulfate、heparan sulfate、heparinなどのムコ多糖の成分として存在します。
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 +
D体は天然に存在しません。
 +
| Lindahl U, Biochem Biophys Res Commun, 1972;46:985 PMID 4621648
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|}
 +
 
 +
===アミノ糖 (galactosamine, glucosamine, mannosamine)===
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アミノ基が付加された糖をアミノ糖と呼びます。Galactosamine, glucosamine, mannosamine が代表例です。いずれもN-アセチル体の形をとるD体のみ存在し、L体は天然に存在しません。
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 +
{| class="wikitable"
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| D-galactosamine [[File:Alpha-D-Galactosamine.png|80px]]
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| N-アセチル体の形で、コンドロイチン硫酸、バクテリア多糖、FSHやLH等の糖タンパク、糖脂質の成分として存在します。動物では軟骨、各種臓器、粘液などに分布します。
 +
| Imanaga Y, J Biochem, 1963;53:80 PMID 13956399<br/>
 +
Wilkinson SG, Biochem J, 1975;149:783 PMID 54164
 +
|-
 +
| D-glucosamine [[File:Alpha-D-Glucosamine.png|80px]]
 +
| N-アセチル体の形で、ミルクオリゴ糖、抗生物質、ムコ多糖、バクテリア多糖、糖タンパク、糖脂質の成分として存在します。動物では昆虫類や甲殻類の外骨格を構成するキチン質に含まれます。
 +
| Polyakov AI, Russian Chemical Bulletin, 1974;23:1516 DOI: 10.1007/BF00929666<br/>Imanaga Y, J Biochem, 1963;53:80 PMID 13956399
 +
|-
 +
| D-mannosamine [[File:Alpha-D-Mannosamine.png|80px]]
 +
| N-アセチル体の形で、バクテリア多糖、糖タンパクの成分として存在します。Neuraminic acidの合成中間体。
 +
| Comb DG, Biochim Biophys Acta, 1958 Sep;29:653 PMID 13584377<br/>Wada M, Bioorg Med Chem, 2003;11:2091 PMID 12670660
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|}
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==ケトース==
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アルドースに対して、ケト(keto)基、つまり 2 重結合でつながった酸素をもつ糖をケトース(ketose)といいます。 6 炭糖のケトースは 3 個の不斉炭素を含むので 2<sup>3</sup>=8 通りの異性体があります。
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===D-Fructose===
 
{|
 
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| [[File:Alpha-D-Fructose_5.png|100px]]
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| [[File:Alpha-D-Fructose_5.png|110px]]
 
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&alpha;-D-fructose日本語で果糖というように、fruit sugarの意味です。果物や蜂蜜に多く含まれ、甘さはショ糖を 1 とすると 1.2 程度あります。(細かくいうと、βフルクトースが 1.8 、αフルクトースが 0.6 です。)よくジュースに「ブドウ糖果糖液糖」とありますが、これはとうもろこしや芋のでんぷんをブドウ糖に酵素で加水分解し、約半分を果糖に変化させたものです。コーンシロップやガムシロップも同様の製品です。砂糖より単価が安く(7 割程度)、ブドウ糖が多いぶん控えめな甘さになるので工業的によく使われます。JIS規格では、果糖が50%以上の場合に「果糖ブドウ糖液糖」、50%以下の場合に「ブドウ糖果糖液糖」となるそうです。(甘さ控えめと言ってもカロリーはあります。同じ甘さで比べれば高カロリーなので要注意。)
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&alpha;-D-fructose日本語で果糖というように、fruit sugarの意味です。果物や蜂蜜に多く含まれ、Raffinose、Inulin、Levanのの成分でもあります。
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甘さはショ糖を 1 とすると 1.2 程度です。(細かくいうと、βフルクトースが 1.8 、αフルクトースが 0.6 です。)よくジュースに「ブドウ糖果糖液糖」とありますが、これはとうもろこしや芋のでんぷんをブドウ糖に酵素で加水分解し、約半分を果糖に変化させたものです。コーンシロップやガムシロップも同様の製品です。砂糖より単価が安く(7 割程度)、ブドウ糖が多いぶん控えめな甘さになるので工業的によく使われます。JIS規格では、果糖が50%以上の場合に「果糖ブドウ糖液糖」、50%以下の場合に「ブドウ糖果糖液糖」となるそうです。(甘さ控えめと言ってもカロリーはあります。同じ甘さで比べれば高カロリーなので要注意。)
 
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|}
 +
;参考文献
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* Gottschalk A, Biochem J, 1946;40:621 PMID 20273651
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* Wolfrom ML, J Am Chem Soc, 1946;68:791 PMID 21024884
 +
* Leang K, J Biosci Bioeng, 2003;95:310 PMID 16233412
  
 +
===そのほかのketose (sorbose, tagatose, psicose)===
 
{| class="wikitable"
 
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|+ そのほかのketose
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! 名前  || 解説
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! width="40%"| 文献
 
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| solbose || ソルボースのアルデヒドを還元してアルコールにしたものがソルビトール(sorbitol)です。グルコースを高圧で触媒により還元させて作ります。ドイツ語ではソルビット(solbit)、日本での年間消費量が10万トンを超える有名な糖アルコールです。甘さはショ糖を1として0.6程度。ナナカマド(Sorbus属)の実から発見されたため、この名前がつきました。甘味料のほか保湿剤としても使われます。主に、コンビニのおにぎり、歯磨き粉の原材料として利用されています。
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| L-sorbose [[File:Alpha-L-Sorbose_6.png|80px]] <br/>D-sorbose [[File:Alpha-D-Sorbose_6.png|80px]] || L体がナナカマド([[Species:Sorbus|orbus]]属 Sorbus commixta)の実から発見されたため、この名前がつきました。複合多糖類Pectinの成分として、植物の細胞壁に存在します。
 +
ソルボースのアルデヒドを還元してアルコールにしたものがソルビトール(sorbitol)です。これはグルコースを高圧で触媒により還元させて作ります。ドイツ語ではソルビット(solbit)、日本での年間消費量が10万トンを超える有名な糖アルコールです。甘さはショ糖を1として0.6程度。甘味料のほか保湿剤としても使われます。主に、コンビニのおにぎり、歯磨き粉の原材料として利用されています。
 +
D体は希少糖でD-Tagatoseから合成できます。
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| Burns JJ, J Biol Chem, 1955;214:507 PMID 14381387<br/>Hyatt MT, J Bacteriol, 1964;88:1403 PMID 14234800<br/>Bhuiyan SH, J Biosci Bioeng, 1999;88:567 PMID 16232663
 
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| tagatose || ショ糖と同じ甘さですが小腸で吸収されにくく、結果としてカロリーが4割程度と低くなるため、人口甘味料として使えます。次のプシコースとともに希少糖ですが、最近になって大量生産の方法が開発され、アメリカでは既に利用されています。日本では2006年に安全性評価がおこなわれ、おそらく食品添加物として市場に出るでしょう。工業的にはガラクトースをアルカリで処理してタガトースに変換します。体内では果糖と同じ経路で代謝されます。
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| D-tagatose [[File:Alpha-D-Tagatose_6.png|80px]] || D体は希少糖で[[:Category:Sterculiaceae|Sterculiaceae]]科(アオギリ科)植物の植物ゴムの成分です。
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ショ糖と同じ甘さですが小腸で吸収されにくく、結果としてカロリーが4割程度と低くなるため、人口甘味料として使えます。最近になって大量生産の方法が開発され、アメリカでは既に利用されています。日本では2006年に安全性評価がおこなわれ、おそらく食品添加物として市場に出るでしょう。工業的にはガラクトースをアルカリで処理してタガトースに変換します。体内では果糖と同じ経路で代謝されます。
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L体は天然に存在しません。
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|Hirst EL, Nature, 1949;163:177 PMID 18213788<br/>Rao D, J Biosci Bioeng, 2008;106:473 PMID 19111643
 
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| psicose || 希少糖ですが、大量生産の方法が開発されています。ノンカロリーですが、投与するとグルコース同様インスリンを分泌すさせるなどの生理活性を持ちます。
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| D-psicose [[File:Alpha-D-Psicose_6.png|80px]] || D体は希少糖で、甘しょ廃糖蜜に存在します。抗生物質Psicofuranineの成分です。D-fructoseを原料にした大量生産の方法が開発されています。ノンカロリーですが、投与するとグルコース同様インスリンを分泌すさせるなどの生理活性を持ちます。L体は天然に存在しません。
 +
| Poonperm W, J Biosci Bioeng, 2007;103:28 PMID 17434433
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Latest revision as of 13:53, 24 August 2016

Contents

[edit] アルドース

多くの糖は-oseという語尾をもちます。この中でアルデヒド(aldehyde)基をもつ糖の総称をアルドース(aldose)といいます。炭素 6 個のアルドースは 4 個の不斉炭素を持ち、 24=16 通りの異性体があります。このうちの 8 つ(L体)は自然界に存在せず、残りの 8 種についても、D-グルコース、D-ガラクトース、D-マンノース以外はほとんどみられません。

参考文献
  • Takeuchi M, Chirality, 2000;12:338 PMID 10824148
  • Zemek J, Folia Microbiol (Praha), 1975;20:467 PMID 285

[edit] D-Glucose

Alpha-D-Glucose.png

α-D-glucose グルコースが「ブドウ糖(grape sugar)」と呼ばれるのは、熟したブドウ果汁に多いからだそうです。発見者はドイツの化学者Andreas Marggraf(1747年)ですが、glucoseという名前は1838年にJean Dumasがギリシャ語の「甘い」(glykos)から作り出しました。江崎グリコと同じ語源です。不斉炭素を含む立体構造の解明は、20 世紀初頭のEmil Fischerを待たねばなりません。フィッシャーさんは、不斉炭素のフィッシャー投影図(構造一覧表にある糖を縦に引き伸ばした描き方)を始めた人です。甘さは、ショ糖を 1 とすると 0.7 程度です。

L-glucoseは希少糖で、Escherichia coli(大腸菌)などの細菌が代謝できる酵素を持ちます。

参考文献

[edit] D-Galactose

Alpha-D-Galactose.png

α-D-galactoseガラクトースの語源はギリシャ語の牛乳(gala)に由来します。(Gala湯沢は、牛乳のように白いスキー場という意味です。)乳には、ガラクトースとグルコースで構成される乳糖が含まれます。ガラクトース自体は天然に単糖で存在しませんが、糖脂質という形で神経細胞に必須の成分です。Lactose、Raffinoseなどのオリゴ糖、Galactan、Galactomannanなどの多糖、配糖体、糖脂質の成分として重要で、ガラクトースを認識するたんぱく質も多く存在します。とりわけ、脳神経が急速に発達する乳幼児に必須の成分です。ほとんど聞きませんが、和名は「脳糖」なのだそうです。甘さは、ショ糖を 1 とすると 0.3 程度です。

L-galactose は希少糖で寒天、植物ゴムの成分です。

参考文献

[edit] D-Mannose

Alpha-D-Mannose.png

α-D-mannoseマンノースは天然には単糖で存在しませんが、多糖Mannanをはじめ、リポ多糖、糖タンパクの成分として、広く植物界に分布します。酵母の細胞壁にも含まれます。語源は旧約聖書(のExodus)において神が彷徨える民に与えた食料、マンナ(manna)です。そういえば森永マンナビスケット、という商品がありますが、あれと同じです。(マンナにマンノースは入っていません。)甘さは、ショ糖を 1 とすると 0.3 程度です。

L-mannoseは天然に存在しません。

参考文献

[edit] そのほかのaldose (allose, idose, gulose, talose, altrose)

名前 詳細 文献
allose
Alpha-D-Allose.png
D-alloseは Protea rubropilosaという植物に含まれることが知られていますが、天然にはほとんど存在しない希少糖ですが、D-psicoseから人工合成できます。L-allose は天然に存在しません。 Poonperm W, J Biosci Bioeng, 2007;103:28 PMID 17434433
Perold GW, J Chem Soc Perkin, 1973;6:643 PMID 4736394
idose
Alpha-D-Idose.png
D-idoseは希少糖ですが、アルデヒド部分がカルボキシル基に変化したイヅロン酸(iduronic acid)が細胞内の糖鎖グリコサミノグリカン(アミノ糖を持つ多糖でGAGと略される)に含まれます。L-idoseは天然に存在せず、1,2-O-Isopropylidene-alpha-D-glucofuranoseから人工合成されます。 Ali Y, J Chem Soc Perkin, 1968;14:1764 PMID 5691107
Horton D, Carbohydr Res, 1977;58:89 PMID 912687
gulose
Alpha-D-Gulose.png
D-gulose, L-gulose共に希少糖です。D体はCaulobacter crescentus(強力な接着物質を産生する水生菌)などの細菌から単離され、L-tagatoseとD-sorboseから人工合成できます。L体は好熱好酸性古細菌Thermoplasma acidophilumに特有です。

構造がglucoseの不斉炭素をひっくり返して得られるため、glucoseの文字をひっくり返してguloseとつけられました。

Bhuiyan SH, J Biosci Bioeng, 1999;88:567 PMID 16232663
Ravenscroft N, J Bacteriol, 1991;173:5677 PMID 1885545
Swain M, Biochim Biophys Acta, 1997;1345:56 PMID 9084501
talose
Alpha-D-Talose.png
D,L体とも天然には存在しません。D体は、タンパク質合成を阻害するアミノグリコシド系抗生物質Hygromycin Bの成分です。L体はL-tagatoseとD-sorboseから人工合成されます。 Paul F, J Org Chem, 1962;27:2793 DOI: 10.1021/jo01055a020
Bhuiyan SH, J Biosci Bioeng, 1999;88:567 PMID 16232663
altrose
Alpha-D-Altrose.png
D,L体とも天然には存在しません。D体はD-psicoseから人工合成できます。 Poonperm W, J Biosci Bioeng, 2007;103:28 PMID 17434433
Hyatt MT, J Bacteriol, 1964;88:1403 PMID 14234800

[edit] デオキシ糖 (rhamnose, fucose, quinovose)

糖の水酸基 (-OH) を水素 (-H) で置換したデオキシ糖と呼びます。細胞壁の成分として有名なL-ラムノースとL-フコースはそれぞれFishcer投影法で描いたときに一番下にくる炭素( 6 位)から酸素がなくなったL-マンノースとL-ガラクトースのことです。D-キノボーズは、6-デオキシグルコースのことです。

名前 構造 解説 文献
L-rhamnose = 6-deoxy-L-mannose Alpha-L-Rhamnose.png L-Rhamnose.png L-rhamnoseはRhamnus属(クロウメモドキ属)の植物Sea Buckthornから単離されました。Rhamnosideの形で、多糖、配糖体、植物ゴムの成分として、植物に普遍的に存在します。D体は希少糖で、抗酸菌糖脂質Glycopeptidolipid (GPL) に含まれます。 Rasputina DB, Chemistry of Natural Compounds, 1975;11:105 DOI: 10.1007/BF00567049
Wilson DM, Biochim Biophys Acta, 1955;17:289 PMID 13239680
Nishikawa K, Kekkaku, 1998;73:295 PMID 9613050
Ramm M, Carbohydr Res, 2003;338:109 PMID 12504387
L-fucose = 6-deoxy-L-galactose Alpha-L-Fucose.png L-Fucose.png L-fucoseは海藻に含まれるFucoidan(フコイダン)等の粘質多糖類をはじめ、ミルクオリゴ糖、糖タンパク、糖脂質の成分。動植物に普遍的に存在します。D体は希少糖でDigitalis(ジギタリス)配糖体の成分に含まれます。 James SP, J Chem Soc, 1945;Nov:746 PMID 13319278
Green M, Cohen SS, J Chem Soc, 1956;219(2):557 PMID 21008345
Springer GF, Biochem J, 1962;85:282 PMID 13978547
D-quinovose = 6-deoxy-D-glucose Alpha-D-Quinovose.png D-Quinovose.png Quina(キナ)の樹皮に含まれる配糖体Quinovinの成分です。Sulfateの形で植物に普遍的に存在します。

L体は天然に存在しません。

Michaljanicova D, Folia Microbiol, 1981;26:89 PMID 7262717
Sonesson A, Microbiology, 1994;140:2663 PMID 8000537

[edit] ウロン酸 (galacturonic acid, glucuronic acid, mannuronic acid)

Fishcer投影法で描いたときに一番下にくる炭素( 6 位)の炭素が酸化してカルボキシル基になっているものをウロン酸 (uronic acid) と呼びます。

D-galacturonic acid Alpha-D-Galacturonic acid.png D-galactoseの酸化により得られ、pectinをはじめとする植物多糖、動物多糖、微生物多糖、ガム質の成分として、動植物に普遍的に存在します。

L体は天然に存在しないとされますが、Paederia foetidaの葉にD/L galacturonic acidが存在するとの報告もあります。

Isherwood FA, Biochem J, 1956;64:13 PMID 13363799

Kumar V, Nature Precedings, 2011 http://precedings.nature.com/documents/5752/version/1

D-glucuronic acid Alpha-D-Glucuronic acid.png 甘草の配糖体、植物ゴム、植物細胞壁のヘミセルロース、海藻のムコ多糖、細菌多糖の成分です。動物では毒物やホルモンと結合し輸送しやすくした融合体 (glucuronid) の形で存在します。

L体は天然に存在しません。

Doerschuk AP, J Biol Chem, 1952;195:855 PMID 14946198

Burns JJ, Biochim Biophys Acta, 1959;33:215 PMID 13651202

D-mannuronic acid Alpha-D-Mannuronic acid.png 褐藻に含まれる多糖alginic acid、微生物多糖の成分として存在します。

L体は天然に存在しません。

Link KP, Science, 1932;76:386 PMID 17730850
Haug A, Biochim Biophys Acta, 1969;192:557 PMID 5368261
L-iduronic acid Alpha-D-Iduronic acid.png 動物でdermatan sulfate、heparan sulfate、heparinなどのムコ多糖の成分として存在します。

D体は天然に存在しません。

Lindahl U, Biochem Biophys Res Commun, 1972;46:985 PMID 4621648

[edit] アミノ糖 (galactosamine, glucosamine, mannosamine)

アミノ基が付加された糖をアミノ糖と呼びます。Galactosamine, glucosamine, mannosamine が代表例です。いずれもN-アセチル体の形をとるD体のみ存在し、L体は天然に存在しません。

D-galactosamine Alpha-D-Galactosamine.png N-アセチル体の形で、コンドロイチン硫酸、バクテリア多糖、FSHやLH等の糖タンパク、糖脂質の成分として存在します。動物では軟骨、各種臓器、粘液などに分布します。 Imanaga Y, J Biochem, 1963;53:80 PMID 13956399

Wilkinson SG, Biochem J, 1975;149:783 PMID 54164

D-glucosamine Alpha-D-Glucosamine.png N-アセチル体の形で、ミルクオリゴ糖、抗生物質、ムコ多糖、バクテリア多糖、糖タンパク、糖脂質の成分として存在します。動物では昆虫類や甲殻類の外骨格を構成するキチン質に含まれます。 Polyakov AI, Russian Chemical Bulletin, 1974;23:1516 DOI: 10.1007/BF00929666
Imanaga Y, J Biochem, 1963;53:80 PMID 13956399
D-mannosamine Alpha-D-Mannosamine.png N-アセチル体の形で、バクテリア多糖、糖タンパクの成分として存在します。Neuraminic acidの合成中間体。 Comb DG, Biochim Biophys Acta, 1958 Sep;29:653 PMID 13584377
Wada M, Bioorg Med Chem, 2003;11:2091 PMID 12670660


[edit] ケトース

アルドースに対して、ケト(keto)基、つまり 2 重結合でつながった酸素をもつ糖をケトース(ketose)といいます。 6 炭糖のケトースは 3 個の不斉炭素を含むので 23=8 通りの異性体があります。

[edit] D-Fructose

Alpha-D-Fructose 5.png

α-D-fructose日本語で果糖というように、fruit sugarの意味です。果物や蜂蜜に多く含まれ、Raffinose、Inulin、Levanのの成分でもあります。 甘さはショ糖を 1 とすると 1.2 程度です。(細かくいうと、βフルクトースが 1.8 、αフルクトースが 0.6 です。)よくジュースに「ブドウ糖果糖液糖」とありますが、これはとうもろこしや芋のでんぷんをブドウ糖に酵素で加水分解し、約半分を果糖に変化させたものです。コーンシロップやガムシロップも同様の製品です。砂糖より単価が安く(7 割程度)、ブドウ糖が多いぶん控えめな甘さになるので工業的によく使われます。JIS規格では、果糖が50%以上の場合に「果糖ブドウ糖液糖」、50%以下の場合に「ブドウ糖果糖液糖」となるそうです。(甘さ控えめと言ってもカロリーはあります。同じ甘さで比べれば高カロリーなので要注意。)

参考文献

[edit] そのほかのketose (sorbose, tagatose, psicose)

名前 解説 文献
L-sorbose Alpha-L-Sorbose 6.png
D-sorbose Alpha-D-Sorbose 6.png
L体がナナカマド(orbus属 Sorbus commixta)の実から発見されたため、この名前がつきました。複合多糖類Pectinの成分として、植物の細胞壁に存在します。

ソルボースのアルデヒドを還元してアルコールにしたものがソルビトール(sorbitol)です。これはグルコースを高圧で触媒により還元させて作ります。ドイツ語ではソルビット(solbit)、日本での年間消費量が10万トンを超える有名な糖アルコールです。甘さはショ糖を1として0.6程度。甘味料のほか保湿剤としても使われます。主に、コンビニのおにぎり、歯磨き粉の原材料として利用されています。 D体は希少糖でD-Tagatoseから合成できます。

Burns JJ, J Biol Chem, 1955;214:507 PMID 14381387
Hyatt MT, J Bacteriol, 1964;88:1403 PMID 14234800
Bhuiyan SH, J Biosci Bioeng, 1999;88:567 PMID 16232663
D-tagatose Alpha-D-Tagatose 6.png D体は希少糖でSterculiaceae科(アオギリ科)植物の植物ゴムの成分です。

ショ糖と同じ甘さですが小腸で吸収されにくく、結果としてカロリーが4割程度と低くなるため、人口甘味料として使えます。最近になって大量生産の方法が開発され、アメリカでは既に利用されています。日本では2006年に安全性評価がおこなわれ、おそらく食品添加物として市場に出るでしょう。工業的にはガラクトースをアルカリで処理してタガトースに変換します。体内では果糖と同じ経路で代謝されます。 L体は天然に存在しません。

Hirst EL, Nature, 1949;163:177 PMID 18213788
Rao D, J Biosci Bioeng, 2008;106:473 PMID 19111643
D-psicose Alpha-D-Psicose 6.png D体は希少糖で、甘しょ廃糖蜜に存在します。抗生物質Psicofuranineの成分です。D-fructoseを原料にした大量生産の方法が開発されています。ノンカロリーですが、投与するとグルコース同様インスリンを分泌すさせるなどの生理活性を持ちます。L体は天然に存在しません。 Poonperm W, J Biosci Bioeng, 2007;103:28 PMID 17434433
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