Tochimoto:Ephedrae Herba

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(New page: 麻  黄 EPHEDRAE HERBA 麻黄はマオウ科のEphedra sinica Stapf、Ephedra intermedia Schrenk et C. A. Meyer またはEphedra equisetina Bungeの地上茎を基原とする。舐...)
 
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麻  黄
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==麻  黄==
EPHEDRAE  HERBA
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麻黄はマオウ科のEphedra sinica Stapf、Ephedra intermedia Schrenk et C. A. Meyer またはEphedra equisetina Bungeの地上茎を基原とする。舐めたときに麻ひ感があり、外観が黄色であることから麻黄と呼ばれている。また麻黄は六陳八新の六陳の一つであり、古いものが好まれる。甘草と並んで麻黄の採集は中国の砂漠化や自然破壊の一因とされ、安定供給に不安がある生薬である。また「違法薬物」である覚醒剤原料に麻黄が使用される経緯から、米国は「違法薬物」の不法輸出の規制を強化するよう関係国に要請した。その要請を受けて中国は、1998年に覚醒剤の原料となる「麻黄類」の輸出規制を強化し、現在では麻黄原形での輸出は完全に禁止されている。ただし麻黄を刻んだものは、麻黄草粉(切断麻黄)として規制の枠から外され、現在も中国から輸入されている。
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『日本薬局方 第15改正(JP15)』
 
『日本薬局方 第15改正(JP15)』
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 초마황(草麻黄) Ephedra sinica Stapf、중마황(中麻黄) Ephedra intermedia Schrenk et C. A. Meyer または목적마황(木賊麻黄)Ephedra equisetina Bungeの草質茎と規定されている。
 
 초마황(草麻黄) Ephedra sinica Stapf、중마황(中麻黄) Ephedra intermedia Schrenk et C. A. Meyer または목적마황(木賊麻黄)Ephedra equisetina Bungeの草質茎と規定されている。
  
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==市場流通品と現状==
 +
市場品は草麻黄E. sinicaが主流で、一部プソイドエフェドリン含量の高い中麻黄E. intermediaが流通する。商品規格は基原植物に関係なく「束麻黄」「散麻黄」の2種類に分けられていたが、現在は刻んだ状態の剤形しか輸入できなくなった。束麻黄はきれいに砲弾形に束ね紐でしばったもの、散麻黄は屈曲や枝分かれの多いばらばらのものである。
  
【市場流通品と現状】
+
特殊な麻黄類としては「去節麻黄」「麻黄根」があるがほとんど流通していない。
 市場品は草麻黄E. sinicaが主流で、一部プソイドエフェドリン含量の高い中麻黄E. intermediaが流通する。商品規格は基原植物に関係なく「束麻黄」「散麻黄」の2種類に分けられていたが、現在は刻んだ状態の剤形しか輸入できなくなった。束麻黄はきれいに砲弾形に束ね紐でしばったもの、散麻黄は屈曲や枝分かれの多いばらばらのものである。
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 特殊な麻黄類としては「去節麻黄」「麻黄根」があるがほとんど流通していない。
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調剤用の麻黄として草麻黄と中麻黄がある。その違いは、含有するエフェドリンとプソイドエフェドリンの含量比であり、中麻黄は抗炎症作用が強く、利尿作用に優れているプソイドエフェドリンを多く含む。
  
 +
当社では、麻黄は六陳八新の六陳の一つであることから、採集後1年以上経過したものを市場に供給している。また漢方エキス製剤メーカーも緑色の強い新物(シンモノ:採集後1年以内のもの)の麻黄は、エキスの色調に影響するので、古物(ヒネモノ:採集から1年以上経過したもの)の黄褐色の麻黄を好む傾向がある。
  
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===近年の中国の麻黄生産および輸入数量(通産省輸出統計より)===
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1984年ころから中国は草原資源の保護、環境保全を推し進め「退耕還林・退耕還草」の方針を打ち出し、色々な規制通達が出たことにより1996年には麻黄の供給不安がおこり、輸入が増大した。また1998年には麻黄類製品出荷の管理強化が打ち出され1999年~2002年にも輸入量が600トン前後と急増する。
  
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1970年ころはパキスタンから、また1991年まで旧ソ連から輸入されたことがあるが、現在では、麻黄の輸入は100%中国に依存している。また現在、中国政府は日本向けとして300トン/年の上限の輸出枠を設定しており、需要が増大しても中国からの輸入増大は困難な状況である。
  
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自然保護といわれながら、2000年の内蒙古自治区だけの麻黄生産量は23,000トンにのぼる。麻黄の輸出規制の目的は、資源枯渇の問題というよりは、むしろ中国のWTO加盟に関連した「麻薬関係の取り締まり」と、黄砂問題に象徴される砂漠の砂を固定する「固砂植物の保護」であると考えられる。
  
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{| class="wikitable sortable"
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|+ 内蒙古自治区2000年全市麻黄草採集区及採集量統計表
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! 旗県市区 || 採集区 || 採集量(トン)
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| 科爾泌区 || 莫力廟蘇木、哈日干吐、慶和郷 || 100
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| 開魯県 || 叉和、北清河、俊昌、北興 || 1,200
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| 扎  旗 || 巴彦芒哈、道老杜、烏力吉木仁、査嘎吐布 5,000
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| 左  中 || 花胡碩、珠日河牧場、花吐古拉、哈日干吐、白音花、烏斯図、協代 6,000
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| 後  旗 || 甘鎮、朝魯吐、伊胡塔、白音毛都、巴胡塔、努古斯台、花灯、烏蘭敦道、<br/>協尓塔拉、哈拉勿蘇、査金台牧場 || 9,500
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| 庫侘旗 || 額勒順、茫汗、三家子、庫侘鎮、哈尓稿、六家子、三道、白音花 || 1,900
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| 合  計 || || 23,700
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==生産加工状況==
  
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===中国内蒙古自治区の自生地(草麻黄E. sinica)===
  
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===中国甘粛省における加工(中麻黄E. intermedia)===
  
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==理化学的品質評価==
  
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|+ 産地別理化学試験 DATA<br/><small>対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む) Mean±SD(%)</small>
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! 産地 || 検体数 || 灰分<br/>11.0%以下 || 酸不溶性灰分<br/>2.0%以下 || 乾燥減量 || 希エタノール<br/>エキス含量
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| 中国ALL || 138 || 7.8 ±1.0 || 0.5 ±0.3 || 8.6 ±1.5 || 28.7 ±3.6
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| 青海 || 5 || 6.7 ±0.4 || 0.5 ±0.2 || 7.5 ±1.6 || 28.0 ±2.4
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| 甘粛 || 15 || 7.1 ±0.9 || 0.8 ±0.4 || 8.8 ±1.5 || 26.9 ±5.0
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| 内蒙古 || 37 || 7.9 ±0.8 || 0.5 ±0.2 || 8.4 ±1.4 || 28.7 ±2.6
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| 天津 || 5 || 7.5 ±2.1 || 0.5 ±0.2 || 8.0 ±0.6 || 27.6 ±2.0
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| 遼寧 || 19 || 8.2 ±0.9 || 0.4 ±0.2 || 9.2 ±0.9 || 29.1 ±2.4
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| 吉林 || 14 || 8.1 ±0.7 || 0.6 ±0.2 || 8.9 ±2.4 || 29.9 ±1.8
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;灰分
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:遼寧省、吉林省、内蒙古 > 甘粛省、 青海省 ( p < 0.05 ) その他は有意差無し
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;希エタノールエキス含量
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:吉林省> 天津省、甘粛省 ( p < 0.05 )  
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:吉林省> 内蒙古、青海省 ( p < 0.1 ) その他は有意差無し
  
 
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{| class="wikitable sortable"
 
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|+ 産地別理化学試験 DATA<br/><small>対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む)Mean±SD %)</small>
 
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! 産地 || 検体数 || 総アルカロイド(E+PE)<br/>0.7%以上 || ephedrine || pseudoephedrine
 
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| 青海 || 10 || 1.44 ±0.45 || 0.30 ±0.36 || 1.14 ±0.55
 調剤用の麻黄として草麻黄と中麻黄がある。その違いは、含有するエフェドリンとプソイドエフェドリンの含量比であり、中麻黄は抗炎症作用が強く、利尿作用に優れているプソイドエフェドリンを多く含む。
+
|-
 当社では、麻黄は六陳八新の六陳の一つであることから、採集後1年以上経過したものを市場に供給している。また漢方エキス製剤メーカーも緑色の強い新物(シンモノ:採集後1年以内のもの)の麻黄は、エキスの色調に影響するので、古物(ヒネモノ:採集から1年以上経過したもの)の黄褐色の麻黄を好む傾向がある。
+
| 甘粛 || 19 || 1.31 ±0.36 || 0.50 ±0.52 || 0.81 ±0.34
 
+
|-
*近年の中国の麻黄生産および輸入数量(通産省輸出統計より)
+
| 陜西 || 9 || 1.30 ±0.36 || 0.66 ±0.14 || 0.64 ±0.26
 1984年ころから中国は草原資源の保護、環境保全を推し進め「退耕還林・退耕還草」の方針を打ち出し、色々な規制通達が出たことにより1996年には麻黄の供給不安がおこり、輸入が増大した。また1998年には麻黄類製品出荷の管理強化が打ち出され1999年~2002年にも輸入量が600トン前後と急増する。
+
|-
 1970年ころはパキスタンから、また1991年まで旧ソ連から輸入されたことがあるが、現在では、麻黄の輸入は100%中国に依存している。また現在、中国政府は日本向けとして300トン/年の上限の輸出枠を設定しており、需要が増大しても中国からの輸入増大は困難な状況である。
+
| 内蒙古 || 55 || 1.30 ±0.31 || 0.85 ±0.24 || 0.45 ±0.28
 
+
|-
 
+
| 河北 || 3 || 1.22 ±0.13 || 0.93 ±0.14 || 0.29 ±0.03
 自然保護といわれながら、2000年の内蒙古自治区だけの麻黄生産量は23,000トンにのぼる。麻黄の輸出規制の目的は、資源枯渇の問題というよりは、むしろ中国のWTO加盟に関連した「麻薬関係の取り締まり」と、黄砂問題に象徴される砂漠の砂を固定する「固砂植物の保護」であると考えられる。
+
|-
 
+
| 天津 || 4 || 1.44 ±0.29 || 1.03 ±0.18 || 0.41 ±0.12
内蒙古自治区2000年全市麻黄草採集区及採集量統計表
+
|-
旗県市区 採集区 採集量(トン)
+
| 遼寧 || 16 || 1.47 ±0.31 || 1.14 ±0.27 || 0.32 ±0.12
科爾泌区 莫力廟蘇木、哈日干吐、慶和郷 100
+
|-
開魯県 叉和、北清河、俊昌、北興 1,200
+
| 吉林 || 16 || 1.41 ±0.27 || 1.10 ±0.33 || 0.31 ±0.15
扎  旗 巴彦芒哈、道老杜、烏力吉木仁、査嘎吐布 5,000
+
|-
左  中 花胡碩、珠日河牧場、花吐古拉、哈日干吐、白音花、烏斯図、協代 6,000
+
| 黒竜江 || 9 || 1.47 ±0.37 || 0.93 ±0.27 || 0.54 ±0.47
後  旗 甘鎮、朝魯吐、伊胡塔、白音毛都、巴胡塔、努古斯台、花灯、烏蘭敦道、
+
|}
協尓塔拉、哈拉勿蘇、査金台牧場 9,500
+
庫侘旗 額勒順、茫汗、三家子、庫侘鎮、哈尓稿、六家子、三道、白音花 1,900
+
合  計 23,700
+
 
+
【生産加工状況】
+
*中国内蒙古自治区の自生地(草麻黄E. sinica)
+
 
+
 
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*中国甘粛省における加工(中麻黄E. intermedia)
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【理化学的品質評価】
+
 
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TableⅠ 産地別理化学試験 DATA (灰分、酸不溶性灰分、乾燥減量、希エタノールエキス含量)
+
 
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産地 検体数 灰分
+
11.0%以下 酸不溶性灰分
+
2.0%以下 乾燥減量 希エタノール
+
エキス含量
+
中国ALL 138 7.8±1.0 0.5±0.3 8.6±1.5 28.7±3.6
+
青海 5 6.7±0.4 0.5±0.2 7.5±1.6 28.0±2.4
+
甘粛 15 7.1±0.9 0.8±0.4 8.8±1.5 26.9±5.0
+
内蒙古 37 7.9±0.8 0.5±0.2 8.4±1.4 28.7±2.6
+
天津 5 7.5±2.1 0.5±0.2 8.0±0.6 27.6±2.0
+
遼寧 19 8.2±0.9 0.4±0.2 9.2±0.9 29.1±2.4
+
吉林 14 8.1±0.7 0.6±0.2 8.9±2.4 29.9±1.8
+
対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む)      Mean±SD(%)
+
 
+
○ 灰分 : 遼寧省、吉林省、内蒙古 > 甘粛省、 青海省 ( p < 0.05 ) その他は有意差無し
+
○ 希エタノールエキス含量 : 
+
吉林省> 天津省、甘粛省 ( p < 0.05 )  
+
吉林省> 内蒙古、青海省 p < 0.1 ) その他は有意差無し
+
 
+
 
+
TableⅡ 産地別理化学試験 DATA (総アルカロイド(E+PE)、ephedrine、pseudoephedrine )
+
 
+
産地 検体数 総アルカロイド(E+PE)
+
0.7%以上 ephedrine pseudoephedrine
+
青海 10 1.44±0.45 0.30±0.36 1.14±0.55
+
甘粛 19 1.31±0.36 0.50±0.52 0.81±0.34
+
陜西 9 1.30±0.36 0.66±0.14 0.64±0.26
+
内蒙古 55 1.30±0.31 0.85±0.24 0.45±0.28
+
河北 3 1.22±0.13 0.93±0.14 0.29±0.03
+
天津 4 1.44±0.29 1.03±0.18 0.41±0.12
+
遼寧 16 1.47±0.31 1.14±0.27 0.32±0.12
+
吉林 16 1.41±0.27 1.10±0.33 0.31±0.15
+
黒竜江 9 1.47±0.37 0.93±0.27 0.54±0.47
+
 
+
対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む)    Mean±SD (%)
+
 
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Topic
 
Topic
  
 
1.産地別 総アルカロイド mean ( ephedrine : 赤,  pseudoephedrine : 青 )
 
1.産地別 総アルカロイド mean ( ephedrine : 赤,  pseudoephedrine : 青 )
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
  
 
2.去節麻黄
 
2.去節麻黄
  
 
+
==内部形態:鏡検==
 
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【内部形態:鏡検】
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JP15:内部形態についての記載はない。
 
JP15:内部形態についての記載はない。
<生薬の性状>
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;生薬の性状
 本品は細い円柱状~だ円柱状を呈し、径0.1~0.2cm、節間の長さ3~5cm、淡緑色~黄緑色である。外面に多数の平行する縦みぞがあり、節部にはりん片状の葉がある。葉は長さ0.2~0.4cm、淡褐色~褐色で、通例、対生し、その基部は合着して、筒状になっている。茎の横切面をルーぺ視するとき、円形~だ円形で、周辺部は灰緑色~黄緑色を呈し、中心部は赤紫色の物質を充満するか又は中空である。節間部を折るとき、折面の周辺部は繊維性で、縦に裂けやすい。
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本品は細い円柱状~だ円柱状を呈し、径0.1~0.2cm、節間の長さ3~5cm、淡緑色~黄緑色である。外面に多数の平行する縦みぞがあり、節部にはりん片状の葉がある。葉は長さ0.2~0.4cm、淡褐色~褐色で、通例、対生し、その基部は合着して、筒状になっている。茎の横切面をルーぺ視するとき、円形~だ円形で、周辺部は灰緑色~黄緑色を呈し、中心部は赤紫色の物質を充満するか又は中空である。節間部を折るとき、折面の周辺部は繊維性で、縦に裂けやすい。
 本品はわずかににおいがあり、味は渋くてわずかに苦く、やや麻ひ性である。
+
  
 +
本品はわずかににおいがあり、味は渋くてわずかに苦く、やや麻ひ性である。
  
 
・ E. sinica(草麻黄)  ・ E. intermedia(中麻黄)  ・ E. equisetina(木賊麻黄)
 
・ E. sinica(草麻黄)  ・ E. intermedia(中麻黄)  ・ E. equisetina(木賊麻黄)
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○ 表皮拡大
 
○ 表皮拡大
 
 
一般的に茎の鱗片葉は2片で1/2分裂。茎の髄部は円形~だ円形で、茎表皮にクチクラ瘤が認められる。 一般的に茎の鱗片葉は3片で1/3分裂。茎の髄部は鈍三角形で、茎表皮に比較的多くのクチクラ瘤が認められる。 一般的に茎の鱗片葉は2片で1/4分裂。茎の髄部は円形~だ円形で、茎表皮にクチクラ瘤は認められない。
+
一般的に茎の鱗片葉は2片で1/2分裂。茎の髄部は円形~だ円形で、茎表皮にクチクラ瘤が認められる。
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一般的に茎の鱗片葉は3片で1/3分裂。茎の髄部は鈍三角形で、茎表皮に比較的多くのクチクラ瘤が認められる。
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一般的に茎の鱗片葉は2片で1/4分裂。茎の髄部は円形~だ円形で、茎表皮にクチクラ瘤は認められない。
  
 
・麻黄 <甘粛省> ① ・麻黄 <甘粛省> ② ・麗江麻黄
 
・麻黄 <甘粛省> ① ・麻黄 <甘粛省> ② ・麗江麻黄
○ 基部 ○ 基部  
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○ 基部
+
○ 基部  
・麻黄 <甘粛省> ③
+
・麻黄 <甘粛省> ③
+
 
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○先端部
 
○先端部
 
 
○ 表皮 ・麻黄 <甘粛省> ④ ○ 表皮  
 
○ 表皮 ・麻黄 <甘粛省> ④ ○ 表皮  
 
 
○ 表皮拡大 ・麻黄 <甘粛省> ⑤ ○ 表皮拡大
 
○ 表皮拡大 ・麻黄 <甘粛省> ⑤ ○ 表皮拡大
 
 
茎の髄部は鈍三角形で、茎表皮に比較的多くのクチクラ瘤が認められる。 茎の髄部は円形~だ円形で、茎表皮に非常に多いクチクラ瘤が認められる。
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茎の髄部は鈍三角形で、茎表皮に比較的多くのクチクラ瘤が認められる。
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茎の髄部は円形~だ円形で、茎表皮に非常に多いクチクラ瘤が認められる。

Revision as of 17:05, 3 November 2010

Contents

麻  黄

『日本薬局方 第15改正(JP15)』 麻黄:EPHEDRAE HERBA  Ephedra sinica Stapf、Ephedra intermedia Schrenk et C. A. MeyerまたはEphedra equisetina Bunge(Ephedraceae)の地上茎と規定されている。

『中華人民共和国薬典 2005年版』 麻黄:HERBA EPHEDRAE  草麻黄Ephedra sinica Stapf、中麻黄Ephedra intermedia Schrenk et C. A. Mey.あるいは木賊麻黄Ephedra equisetina Bge.の干燥した草質茎と規定されている。

『大韓薬典 第9改正』 마황 麻黄:EPHEDRAE HERBA  초마황(草麻黄) Ephedra sinica Stapf、중마황(中麻黄) Ephedra intermedia Schrenk et C. A. Meyer または목적마황(木賊麻黄)Ephedra equisetina Bungeの草質茎と規定されている。

市場流通品と現状

市場品は草麻黄E. sinicaが主流で、一部プソイドエフェドリン含量の高い中麻黄E. intermediaが流通する。商品規格は基原植物に関係なく「束麻黄」「散麻黄」の2種類に分けられていたが、現在は刻んだ状態の剤形しか輸入できなくなった。束麻黄はきれいに砲弾形に束ね紐でしばったもの、散麻黄は屈曲や枝分かれの多いばらばらのものである。

特殊な麻黄類としては「去節麻黄」「麻黄根」があるがほとんど流通していない。

調剤用の麻黄として草麻黄と中麻黄がある。その違いは、含有するエフェドリンとプソイドエフェドリンの含量比であり、中麻黄は抗炎症作用が強く、利尿作用に優れているプソイドエフェドリンを多く含む。

当社では、麻黄は六陳八新の六陳の一つであることから、採集後1年以上経過したものを市場に供給している。また漢方エキス製剤メーカーも緑色の強い新物(シンモノ:採集後1年以内のもの)の麻黄は、エキスの色調に影響するので、古物(ヒネモノ:採集から1年以上経過したもの)の黄褐色の麻黄を好む傾向がある。

近年の中国の麻黄生産および輸入数量(通産省輸出統計より)

1984年ころから中国は草原資源の保護、環境保全を推し進め「退耕還林・退耕還草」の方針を打ち出し、色々な規制通達が出たことにより1996年には麻黄の供給不安がおこり、輸入が増大した。また1998年には麻黄類製品出荷の管理強化が打ち出され1999年~2002年にも輸入量が600トン前後と急増する。

1970年ころはパキスタンから、また1991年まで旧ソ連から輸入されたことがあるが、現在では、麻黄の輸入は100%中国に依存している。また現在、中国政府は日本向けとして300トン/年の上限の輸出枠を設定しており、需要が増大しても中国からの輸入増大は困難な状況である。

自然保護といわれながら、2000年の内蒙古自治区だけの麻黄生産量は23,000トンにのぼる。麻黄の輸出規制の目的は、資源枯渇の問題というよりは、むしろ中国のWTO加盟に関連した「麻薬関係の取り締まり」と、黄砂問題に象徴される砂漠の砂を固定する「固砂植物の保護」であると考えられる。

内蒙古自治区2000年全市麻黄草採集区及採集量統計表
旗県市区 採集区 採集量(トン)
科爾泌区 莫力廟蘇木、哈日干吐、慶和郷 100
開魯県 叉和、北清河、俊昌、北興 1,200
扎  旗 巴彦芒哈、道老杜、烏力吉木仁、査嘎吐布 5,000
左  中 花胡碩、珠日河牧場、花吐古拉、哈日干吐、白音花、烏斯図、協代 6,000
後  旗 甘鎮、朝魯吐、伊胡塔、白音毛都、巴胡塔、努古斯台、花灯、烏蘭敦道、
協尓塔拉、哈拉勿蘇、査金台牧場
9,500
庫侘旗 額勒順、茫汗、三家子、庫侘鎮、哈尓稿、六家子、三道、白音花 1,900
合  計 23,700

生産加工状況

中国内蒙古自治区の自生地(草麻黄E. sinica)

中国甘粛省における加工(中麻黄E. intermedia)

理化学的品質評価

産地別理化学試験 DATA
対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む) Mean±SD(%)
産地 検体数 灰分
11.0%以下
酸不溶性灰分
2.0%以下
乾燥減量 希エタノール
エキス含量
中国ALL 138 7.8 ±1.0 0.5 ±0.3 8.6 ±1.5 28.7 ±3.6
青海 5 6.7 ±0.4 0.5 ±0.2 7.5 ±1.6 28.0 ±2.4
甘粛 15 7.1 ±0.9 0.8 ±0.4 8.8 ±1.5 26.9 ±5.0
内蒙古 37 7.9 ±0.8 0.5 ±0.2 8.4 ±1.4 28.7 ±2.6
天津 5 7.5 ±2.1 0.5 ±0.2 8.0 ±0.6 27.6 ±2.0
遼寧 19 8.2 ±0.9 0.4 ±0.2 9.2 ±0.9 29.1 ±2.4
吉林 14 8.1 ±0.7 0.6 ±0.2 8.9 ±2.4 29.9 ±1.8
灰分
遼寧省、吉林省、内蒙古 > 甘粛省、 青海省 ( p < 0.05 ) その他は有意差無し
希エタノールエキス含量
吉林省> 天津省、甘粛省 ( p < 0.05 )  
吉林省> 内蒙古、青海省 ( p < 0.1 ) その他は有意差無し
産地別理化学試験 DATA
対象:1985年~2009年市場品(一部、蒐集サンプルを含む)Mean±SD (%)
産地 検体数 総アルカロイド(E+PE)
0.7%以上
ephedrine pseudoephedrine
青海 10 1.44 ±0.45 0.30 ±0.36 1.14 ±0.55
甘粛 19 1.31 ±0.36 0.50 ±0.52 0.81 ±0.34
陜西 9 1.30 ±0.36 0.66 ±0.14 0.64 ±0.26
内蒙古 55 1.30 ±0.31 0.85 ±0.24 0.45 ±0.28
河北 3 1.22 ±0.13 0.93 ±0.14 0.29 ±0.03
天津 4 1.44 ±0.29 1.03 ±0.18 0.41 ±0.12
遼寧 16 1.47 ±0.31 1.14 ±0.27 0.32 ±0.12
吉林 16 1.41 ±0.27 1.10 ±0.33 0.31 ±0.15
黒竜江 9 1.47 ±0.37 0.93 ±0.27 0.54 ±0.47

Topic

1.産地別 総アルカロイド mean ( ephedrine : 赤,  pseudoephedrine : 青 )

2.去節麻黄

内部形態:鏡検

JP15:内部形態についての記載はない。

生薬の性状

本品は細い円柱状~だ円柱状を呈し、径0.1~0.2cm、節間の長さ3~5cm、淡緑色~黄緑色である。外面に多数の平行する縦みぞがあり、節部にはりん片状の葉がある。葉は長さ0.2~0.4cm、淡褐色~褐色で、通例、対生し、その基部は合着して、筒状になっている。茎の横切面をルーぺ視するとき、円形~だ円形で、周辺部は灰緑色~黄緑色を呈し、中心部は赤紫色の物質を充満するか又は中空である。節間部を折るとき、折面の周辺部は繊維性で、縦に裂けやすい。

本品はわずかににおいがあり、味は渋くてわずかに苦く、やや麻ひ性である。

・ E. sinica(草麻黄)  ・ E. intermedia(中麻黄)  ・ E. equisetina(木賊麻黄) ○ 茎の鱗片葉

○ 基部

○ 先端部

○ 表皮

○ 表皮拡大

一般的に茎の鱗片葉は2片で1/2分裂。茎の髄部は円形~だ円形で、茎表皮にクチクラ瘤が認められる。 一般的に茎の鱗片葉は3片で1/3分裂。茎の髄部は鈍三角形で、茎表皮に比較的多くのクチクラ瘤が認められる。 一般的に茎の鱗片葉は2片で1/4分裂。茎の髄部は円形~だ円形で、茎表皮にクチクラ瘤は認められない。

・麻黄 <甘粛省> ① ・麻黄 <甘粛省> ② ・麗江麻黄 ○ 基部 ○ 基部 ・麻黄 <甘粛省> ③ ○先端部 ○ 表皮 ・麻黄 <甘粛省> ④ ○ 表皮 ○ 表皮拡大 ・麻黄 <甘粛省> ⑤ ○ 表皮拡大

茎の髄部は鈍三角形で、茎表皮に比較的多くのクチクラ瘤が認められる。 茎の髄部は円形~だ円形で、茎表皮に非常に多いクチクラ瘤が認められる。

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