Aritalab:Lecture/NetworkBiology/Coupled Oscillator
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− | <math>\omega_i/2\pi</math> は ''i'' に固有の周波数です。また <math>\,k \sin(\theta_2 - \theta_1)</math> の部分は振動子どうしの引き込み項に対応し、位相の大きさによって周波数に影響を与えます。 | + | <math>\omega_i/2\pi</math> は ''i'' に固有の周波数です。また <math>\,k \sin(\theta_2 - \theta_1)</math> の部分は振動子どうしの引き込み項に対応し、位相の大きさによって周波数に影響を与えます。''k'' が相互作用の強さです。 |
周波数の差分 <math>\phi = \theta_2 - \theta_1</math> が <math> 0 < \phi < \pi</math> のとき(つまり振動子2が1より前にいるとき)は振動子1が加速して振動子2が減速し、逆に差分が <math> \pi < \phi < 2\pi</math> のときは振動子1が減速して振動子2が加速します。 | 周波数の差分 <math>\phi = \theta_2 - \theta_1</math> が <math> 0 < \phi < \pi</math> のとき(つまり振動子2が1より前にいるとき)は振動子1が加速して振動子2が減速し、逆に差分が <math> \pi < \phi < 2\pi</math> のときは振動子1が減速して振動子2が加速します。 | ||
− | ''k'' (>0) が十分に大きければ振動子は同期、つまり共通の振動数をとって <math>\phi</math> が安定します。 | + | 相互作用のパラメータ ''k'' (>0) が十分に大きければ振動子は同期、つまり共通の振動数をとって <math>\phi</math> が安定します。 |
もし <math> \omega_1 = \omega_2</math> であれば ''k'' = 0 でも同期するため、一般性を失わずに <math> \omega_1 < \omega_2</math> と仮定して、上式の差分を考えましょう。 | もし <math> \omega_1 = \omega_2</math> であれば ''k'' = 0 でも同期するため、一般性を失わずに <math> \omega_1 < \omega_2</math> と仮定して、上式の差分を考えましょう。 | ||
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値 <math>\phi</math> 付近の振動子の振る舞いをみましょう。 | 値 <math>\phi</math> 付近の振動子の振る舞いをみましょう。 | ||
− | 関数<math> | + | 関数<math>y = -2k </math> <math> \sin \phi + (\omega_2 - \omega_1)</math> は正の y 切片を持ち <math>-\sin \phi</math> の波形を描きながら <math>\phi = \pi/2</math> において極小値 <math>(\omega_2 - \omega_1) -2k</math>をとり、<math>\phi = \pi</math>において正の値に戻ります。よって ''k'' の値によって以下の場合があります。 |
* ''k'' が大きく極小値が負の場合: 解を2つ持つ。そのうち <math>0 < \phi < \pi/2</math> となるほうは振動子2が振動子1の前にある状態で、安定解となる。もう片方は不安定解になる。 | * ''k'' が大きく極小値が負の場合: 解を2つ持つ。そのうち <math>0 < \phi < \pi/2</math> となるほうは振動子2が振動子1の前にある状態で、安定解となる。もう片方は不安定解になる。 | ||
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全ての振動子が同数だけ ( ''K'' とします) 結合するグラフの場合、<math>N \rightarrow \infty</math> の極限において解くことができます(蔵本モデル)。 | 全ての振動子が同数だけ ( ''K'' とします) 結合するグラフの場合、<math>N \rightarrow \infty</math> の極限において解くことができます(蔵本モデル)。 | ||
+ | 基本的なアイデアとして、集団としての振幅と位相をそれぞれ ''R'' (定数), ''ψ'' とおいて平均化した近似を考えます(''R'' = 定数)。N 個の振動子を円周上を回る点と考えた際の重心にあたる値です。 | ||
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− | \frac{d\theta_i}{dt} = \omega_i - RK\sin(\theta_i - \psi) | + | \frac{d\theta_i}{dt} = |
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− | と簡略化でき、定常状態では <math>\textstyle \theta_i = \psi + \arcsin(\frac{\omega_i}{RK})</math> | + | と簡略化でき、定常状態では <math>\textstyle \theta_i = \psi + \arcsin(\frac{\omega_i}{RK})</math>です。R の大きさによって同期するか否かが判断できます。 |
+ | * ''R'' = 1: 振動子全体が完全に同期している | ||
+ | * ''R'' = 0: 振動子が完全にランダム | ||
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+ | ネットワーク上に振動子がある場合、基本的には数値シミュレーションによって解析が行われています。 | ||
+ | 主な成果に以下があります。 | ||
+ | * L が大きく、局所的なつながりしかないネットワークは同期しにくい | ||
+ | * ハブがあると同期しやすい | ||
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Latest revision as of 09:56, 14 July 2011
Contents |
[edit] 結合振動子
自然振動にばらつきのある素子が相互作用する系を考えましょう。 この分野で最も重要な貢献をした統計物理学者が 蔵本由紀 です。 同期のしやすさはネットワークの形状によりますが、ここでは最も簡単な場合として2個の振動子を考えます。
[edit] 2つの振動子
振動子の振る舞いは以下の式で記述されます。
は i に固有の周波数です。また の部分は振動子どうしの引き込み項に対応し、位相の大きさによって周波数に影響を与えます。k が相互作用の強さです。 周波数の差分 が のとき(つまり振動子2が1より前にいるとき)は振動子1が加速して振動子2が減速し、逆に差分が のときは振動子1が減速して振動子2が加速します。
相互作用のパラメータ k (>0) が十分に大きければ振動子は同期、つまり共通の振動数をとって が安定します。
もし であれば k = 0 でも同期するため、一般性を失わずに と仮定して、上式の差分を考えましょう。
定常状態では だから
- 、つまり ()
値 付近の振動子の振る舞いをみましょう。
関数 は正の y 切片を持ち の波形を描きながら において極小値 をとり、において正の値に戻ります。よって k の値によって以下の場合があります。
- k が大きく極小値が負の場合: 解を2つ持つ。そのうち となるほうは振動子2が振動子1の前にある状態で、安定解となる。もう片方は不安定解になる。
- k が適切な値で極小値が0の場合: 解を1つ持つ。この値は不安定解になる。
- k が0に近く、極小値が正の場合: 解を持たない。つまり定常状態が存在しない。
結論として、 を満たす臨界値 が存在し、この値より k が大きい場合は安定解 が存在します。 それと等しいか、小さい場合は安定解が存在せず、二つの振動子が同期することはありません。
[edit] N個の振動子
振動子が N 個の場合は
結合する振動子どうしは それ以外は 0 とします。 全ての振動子が同数だけ ( K とします) 結合するグラフの場合、 の極限において解くことができます(蔵本モデル)。
基本的なアイデアとして、集団としての振幅と位相をそれぞれ R (定数), ψ とおいて平均化した近似を考えます(R = 定数)。N 個の振動子を円周上を回る点と考えた際の重心にあたる値です。
このとき、振動子集団は見かけ上
と簡略化でき、定常状態では です。R の大きさによって同期するか否かが判断できます。
- R = 1: 振動子全体が完全に同期している
- R = 0: 振動子が完全にランダム
[edit] ネットワーク上の振動子
ネットワーク上に振動子がある場合、基本的には数値シミュレーションによって解析が行われています。 主な成果に以下があります。
- L が大きく、局所的なつながりしかないネットワークは同期しにくい
- ハブがあると同期しやすい
- 参考
- ↑ 指数が虚数である指数関数の定義は である。