< Aritalab:Lecture | NetworkBiology(Difference between revisions)
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− | ==系の安定性==
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− | 一般的な 2 次元の系 <math>f(x, y),\, g(x,y)</math> を考え、不動点を <math>(x^*, y^*)</math> としましょう。
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− | :<math>f(x^*, y^*) = 0,\ g(x^*, y^*) = 0</math>
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− | 不動点に近い位置を <math> x = x^* + \epsilon_x\, y = y^* + \epsilon_y</math> と書くと
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− | :<math>
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− | \begin{align}
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− | \frac{dx}{dt} &= \frac{d\epsilon_x}{dt} = f(x^* + \epsilon_x, y^* + \epsilon_y)\\
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− | &= f(x^*, y^*) + e_x f^{(x)}(x^*, y^*) + e_y f^{(y)}(x^*, y^*) + \cdots \\
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− | &\simeq \epsilon_x f^{(x)}(x^*, y^*) + \epsilon_y f^{(y)}(x^*, y^*)
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− | \end{align}
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− | </math>
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− | となります。関数 ''g'' についても同様です。これをヤコビ行列の形に書けば
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− | :<math>
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− | \frac{d \boldsymbol{\epsilon}}{dt} =\begin{pmatrix}
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− | \frac{\delta f}{\delta x} & \frac{\delta f}{\delta y} \\
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− | \frac{\delta g}{\delta x} & \frac{\delta g}{\delta y}
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− | \end{pmatrix} \boldsymbol{\epsilon} = \mathbf{J} \boldsymbol{\epsilon}
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− | </math>
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− | です。ヤコビアンの簡単な場合として対角行列を考えましょう。
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− | :<math>
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− | \binom{\frac{d \epsilon_x}{d t}}{\frac{d \epsilon_y}{d t}}
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− | = \begin{pmatrix}
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− | \lambda_1 & 0 \\
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− | 0 & \lambda_2
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− | \end{pmatrix} \binom{\epsilon_x}{\epsilon_y}
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− | </math>
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− | この解は以下のようになります。
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− | :<math>
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− | \epsilon_x(t) = \epsilon_x(0) e^{\lambda_1 t}, \
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− | \epsilon_y(t) = \epsilon_y(0) e^{\lambda_2 t}
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− | </math>
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− | ''x'', ''y'' について書き直すと以下になります。
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− | :<math>
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− | x(t) = x^* + \epsilon_x(0) e^{\lambda_1 t}, \
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− | y(t) = y^* + \epsilon_y(0) e^{\lambda_2 t}
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− | </math>
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− | つまり <math>\lambda_1, \lambda_2</math> の値(それぞれ不動点における関数 ''f'', ''g'' の微分値) が共に負であれば <math>(x^*, y^*)</math> は誘引点、共に正であれば反発点、片方だけ負であれば鞍点 (saddle point) となります。
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− | ヤコビアンが対角行列でない場合、行がヤコビアンの左固有ベクトルに対応する行列 <math>\mathbf{Q}</math> を用意し、<math>\xi_x, \xi_y</math> を定義します。
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− | :<math>\boldsymbol{\xi} = \mathbf{Q}\boldsymbol{\epsilon}</math>
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− | :<math>\frac{d \boldsymbol{\xi}}{dt} = \mathbf{Q}\frac{d \boldsymbol{\epsilon}}{dt} = \mathbf{QJ} \boldsymbol{\epsilon} = \mathbf{QJQ^{-1}} \boldsymbol{\xi}
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− | </math>
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− | もし <math>\mathbf{J}</math> の固有ベクトルを求めることができれば <math>\mathbf{QJQ^{-1}}</math> が対角行列になり、<math>\xi_x, \xi_y</math> は互いに独立に時間発展することになります。
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− | 固有値が複素数になる場合 <math>\lambda_1 = \alpha + i \omega\,</math>、一般解は指数的に増減する部分と振動する部分の積になります (''C'': 虚数, ''A, B'': 実数)。
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− | :<math>\, \xi_1(t) = \mbox{Re}[ C e^{(\alpha+ i\omega)t}] = e^{\alpha t} (A \cos \omega t + B \sin \omega t)</math>
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− | パラメータ α が負の場合は不動点に落ち込むスパイラル(安定点)になり、正の場合は不動点から遠ざかる不安定点です。一点に落ち込むことなく、安定した軌道を描く場合もあります。これをリミットサイクルと呼びます。
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| ==結合振動子== | | ==結合振動子== |
Revision as of 00:11, 14 July 2011
結合振動子
自然振動にばらつきのある素子が相互作用する系を考えましょう。
この分野で最も重要な貢献をした統計物理学者が 蔵本由紀 です。
同期のしやすさはネットワークの形状によりますが、ここでは最も簡単な場合として2個の振動子を考えます。
2つの振動子
振動子の振る舞いは以下の式で記述されます。
-
は i に固有の周波数です。また の部分は振動子どうしの引き込み項に対応し、位相の大きさによって周波数に影響を与えます。
周波数の差分 が のとき(つまり振動子2が1より前にいるとき)は振動子1が加速して振動子2が減速し、逆に差分が のときは振動子1が減速して振動子2が加速します。
k (>0) が十分に大きければ振動子は同期、つまり共通の振動数をとって が安定します。
もし であれば k = 0 でも同期するため、一般性を失わずに と仮定して、上式の差分を考えましょう。
-
定常状態では だから
- 、つまり ()
値 付近の振動子の振る舞いをみましょう。
関数 は正のy切片を持ち の波形を描きながら において極小値 をとり、において正の値に戻ります。よって k の値によって以下の場合があります。
- k が大きく極小値が負の場合: 解を2つ持つ。そのうち となるほうは振動子2が振動子1の前にある状態で、安定解となる。もう片方は不安定解になる。
- k が適切な値で極小値が0の場合: 解を1つ持つ。この値は不安定解になる。
- k が0に近く、極小値が正の場合: 解を持たない。つまり定常状態が存在しない。
結論として、 を満たす臨界値 が存在し、この値より k が大きい場合は安定解 が存在します。
それと等しいか、小さい場合は安定解が存在せず、二つの振動子が同期することはありません。
N個の振動子
振動子が N 個の場合は
-
結合する振動子どうしは それ以外は 0 とします。
全ての振動子が同数だけ ( K とします) 結合するグラフの場合、 の極限において解くことができます(蔵本モデル)。
基本的なアイデアとして、集団としての振幅と位相をそれぞれ R (定数), ψ とおいて
-
平均化した近似を考えます(R = 定数)。このとき、振動子集団は見かけ上
-
と簡略化でき、定常状態では です。