PlantBiotech:Higuchi01

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Contents

組織培養の原理と応用

  • 著者:高山真策(東海大学 開発工学部)
  • 出典:「植物組織培養の世界」樋口春三監修 (1990) 柴田ハリオ硝子株式会社刊

植物組織培養が、バイオテクノロジーの一分野として注目を集めている。バイオテクノロジーという用語については、1982年ベルギーのリュ-ヴェンで開かれた国際純正応用化学連合 (IUPAC) 総会では、その範囲を "include the application of biochemistry, biology, microbiology and chemical engineering to industrial processes and products including here the products in health care, energy, and agriculture and on the environment" と定義している。この定義にしたがって植物のバイオテクノロジーを見ると、「植物の生体およびその機能の操作とそれに関連するエンジニアリングの総称であり、産業的応用を目的とする」というようなことになり、実際的側面としては、有用代謝物質生産、種苗生産、新種苗の青笹などが大きな技術開発課題ということになる。

植物組織培養は、植物の細胞、器官、組織あるいはプロトプラストを無菌の人工培地上で培養する技術の総称であり、これに最近急激に技術開発が進んだ遺伝子操作が加わって新しい植物バイオテクノロジーの応用開発が展開しようとしている。

植物組織培養略史

植物の組織培養は、どのような歴史をたどって現在のような植物バイオテクノロジーといわれるような段階にまで発展したのであろうか。その概略を以下に紹介してみたい。

植物組織培養研究の歴史は古く、1900年代の初めにまで遡ることができるが、このような長い歴史のなかで、植物の組織や細胞などから植物体を作らせる研究は、常に最も重要な研究課題であった。その歴史を振り返ってみると、1902年にはドイツのハーバーラントが、個々の細胞には生命体としての総ての能力が存在する (全能性=トーチポーテンシー) として細胞の人工的な培養実験を手がけたことに始まるが、当時はまだ研究が余り進んでいなかったために、彼自身によって成功することはなかった。その後、 30 年を経た1930年代になって、アメリカのホワイトやフランスのゴーテレによってはじめて植物の組織や細胞を培養することができるようになった。すなわち1934年にホワイトがトマトの根の培養を、またゴーテレは同じ年にヤナギ、求プラなどの組織切片を数ヵ月間培養することに成功している。さらに1937年になって、ホワイトが植物の細胞や組織の培養にはIAAが非常に重要な役割をになっていることを見出して以免植物の組織培養技術は急速に発展することになった。

1953年には、ミラーとスクーグがタバコの髄組織からの芽の分化に関する研究を行っているが、彼らはこの研究を通して重要な植物ホルモンであるサイトカイニン (Kin) を発見している。その後、1957年にスクーグとミラーはサイトカイニンによって芽の形成が促進され、しかもIAAとサイトカイニン (Kin) のバランスによって、芽や根、カルスの形成を制御できることを明らかにしている。この研究によって植物の分化制御の基本的な技術ができあがったともいえよう。さらに1958年には、スチュワードがニンジンの培養細胞からの不定胚形成に成功し、ハーバーラントによって提唱されていた組抱の全能性が実証されるに至っている。1960年、1970年代は、プロトプラストの作成と融合を始めとするいくつかの新しい技術開発があり、組織培養に関する研究がますます活発化し、1980年には年間の発表論文数が 1、000 件を超えるまでになっている。これら多数の論文のうち、産業的応用との関わりを有する論文は全体の 1/3 を占めているが、その中では栄養繁殖、育種というような植物種苗に関する技術開発研究が多数を占めている。1980年代に入ってからは、バイオテクノロジーブームともいえる大きな潮流の中で、吹米の大学、研究機関や特に米国を中心に植物バイオテクノロジーの研究開発を専門に行う多数のベンチャー企業や大企業の研究グループが活発に研究活動を展開し、クローン増殖、育種、遺伝子操作の各分野で華々しい成果を発表するようになった。すでにクローン植物の大量増殖は全世界的に普及した技術になっているし、育用代謝物質生産研究もわが国の三井石油化学工業の研究成果であるムラサキという植物が生産する色素であるシコニンの生産や日東電工のチョウセンニンジン細胞の大意生産にみるように一部で工業的生産が実現するまでになっている。遺伝子操作研究はまだ研究開発途上の技術ではあるが、すでに様々な植物遺伝子のクローニングとクローニングした遺伝子の発現が確認された事例が次々と報告されるようになっており、莱用育種の手段としての遺伝子操作が実現するのも近い将来のことであると期待できるようになってきた。

組織培養の原理とその応用

図1 植物組織培養研究における応用技術の位置づけ

植物組織培養は、無菌操作を核とした技術であるが、これには組織培養の原理ともいえる様々な基礎技術があり、それらの技術が単一あるいは複数で用いられてクローン植物大量生産、育種、有用代謝物質生産というような応用技術の開発が展開している (図1) 。ここでは、応用技術研究の開発原理となっている個々の技術の概要を紹介してみよう。

育種研究

植物の育種は、人類の食文化の歴史ともいえる数千年来の実績を有しており、小麦、稲、ジャガイモなどを始めとする多くの作物が改良されながら利用されてきた。特に第2次世界大戦後は、交配や変異技術を軸として小麦、稲などの穀類を中心に緑の革命 (グリーンエボルーション) と呼ばれる改良が行われ、人類の食糧供給に大きく貢献してきた。しかし世界の人口は現在でも増加し続けている。現在の世界人口は 46億 であるが、西暦2000年には 60億 を超えるといわれているほどであり、しかもこのような顕著な人口増加分のほとんどが開発途上国のものであろうと推定されている。このような顕著人口増加が見込まれているにもかかわらず、可地面横は地球規模の開発と破壊によって減少しつつあるし、アフリカでは砂漠化により、求食糧が不足して飢餓が広がり、熱帯多雨林では急激な森林の伐採により、また工業先進国では酸性雨によって森林の枯死と土壌の崩壊を招いているという。これらの状況に対応するためには、生産性が高く、不良環境に対する適応性が高い植物を育種することが必須になるが、従来の育種技術のみでは決して容易なことではない。そこで最近急速に研究が進んでいる組織培養の技術を利用して育種効率を高めることが真剣に検討されている。

育種研究の原理として以下の技術が長く使用されている。

  1. 胚培養、試験管内受精
  2. プロトプラストによる細胞融合
  3. 葯培養、花粉培養
  4. 突然変異の誘起
  5. 遺伝子操作

ここにきて問題になっているのが、改良した細胞からの植物体再生が困難な植物が多いことである。現在の研究レベルでは、分化が困難な細胞や組織から植物体を再生させることは非常に困難であり、その解決法もない。遺伝子操作をも含めた細胞レベルでの育種技術がどんなに進んでも、遺伝的操作を加えた細胞からの植物体再分化がネックとなっては育種が進展しないので、特に分化については基礎から応用に至る幅広い研究展開が期待される。

クローン増殖

植物のクローン増殖は、挿木、取木、株分けなどの方法で古くから行われてきたが、この 20年間に急速に発展し普及した組織培養がいまでは重要な技術になっている。

この技術を用いると、従来から挿木、取木、株分けなどで増殖していた植物はもちろんのこと、従来の方法では増殖できなかった植物も増殖することができるようになるので、現在では世界各地に多数の組織培養を専門にしているクローン苗生産企業が設立され、活発な生産活動を繰り広げている。 組織培養によるクローン増殖の利点は、

  1. 増殖率が著しく高い。
  2. ウイルス、バクテリアなどに感染していない健全な植物を増殖して苗にするので、品質、収量が顕著に高まる。
  3. 季節や環境に左右されずに培養することができる。
  4. 計画生産、出荷ができる。
  5. わずかな空間で多数の植物の品種を収集保存できる。

などである。

組織培養によるクローン増殖は、基本的にはカルフォルニア大学のT. Murashige教授が1974年に示した以下の手順を基本にしている (図2) 。

ステージI: 無菌培養系の確立
ステージII: 植物体の増殖
ステージIII: 土壌移植のための発根と順化
図2 組織培養によるクローン増殖プロセス

これらの手順に基づき、現在、世界各地で実際に採用されている手法は、寒天培地を用いてすべて人手で操作するものである。そのため大量の苗を生産する場合でも、スケールメリットがほとんどない。そこで今後の開発課題として注目されているのが、大量培養技術である。

大量培養の手法としては様々な考え方が可能であるが、筆者らは液体培地を用い、 ジャーファーメンターで大量培養する手法を研究しているので、その概略を紹介してみたい。

図3 ジャーファーメンターによるクローン植物大量増殖プロセス

液体培地を用いた大量培養の基本的プロセスを図3に示した。図3のように、生長点培養や殺菌によって確立した無菌培養株をサイトカイニンを添加した培地に移植培養することによって多数の芽が分化した多芽状組織を形成させ、これをジャーファーメンターで培養して苗として収穫するものである。ユリ、ヒヤシンス、グラジオラス (図4) 、ジャガイモ (図5) などの球根やイモ類をこの方法で増殖すると、小さな球根やイモがジャーファーメンターから直接収穫できるので、実用生産プロセスとしても有用ある。草本類でも、イチゴ (図6) 、ベゴニア、セントポーリア、その他多数の植物のクローン増殖に応用し、イチゴなどではジャーファーメンターから収穫した苗を直接土壌に移植して80-90 % 以上が活着するようにもなってきた。今後の研究展開に期待したい。

有用代謝物質生産

植物が生産する代謝物質は、医薬、香料、色素、農薬、香水、ビタミン、ホルモン、酵素など種類が多く、様々な領域で使用されている (表1) 。これらの代謝物質は通常栽培あるいは野性株の収集によって生産されている。しかし代謝物質によっては供給が不安定なので、工業的な安定生産技術を確立することが期待されている。その手段として、ジャーファーメンターやタンクを用いた大量培養による有用代謝物質の生産技術開発が全世界で進められている。その成果として、すでに一部で有用代謝物質の工業的生産が実用段階にさしかかったことは、三井石油化学工業や日東電工による大量生産などの前述の例のとおり良く知られている事実である。しかし他の代謝物質も同じように自由に工業生産できるわけではない。まだまだ生産コストが高いとか、細胞培養では全く生産させることができないというような多くの課題が未解決のまま残されている。

さて植物が生産する有用代謝物質は有機酸、糖、アミノ酸、蛋白質、脂質、核酸など生命の維持に必須な1次代謝物質と、1次代謝からさらに代謝が進んで生成され、しかももし生成されなくても生命の維持には直接関係しないアルカロイド、ステロイド、テルペノイドなどの2次代謝物質とに大別される。これらの中で、人間が利用している代謝物質は膨大な数にのぼるが、特に医薬、香料、色素、農薬などに利用されているものは2次代謝物質が多い。様々な2次代謝物質の中で、クマリン、ステロール、フラボノイドなどは比較的容易に生産させることができるのに対して、有用代謝物質として重要度が高いアルカロイド、アントラキノン、テルペノイド、キノンなどは一般に生産性が低いうえに、特にカルスと呼ばれる細胞のみを培養増殖するとほとんど生産されなくなってしまうことが多い。これらの代謝物質の生産特性を明らかにしようという研究と平行して、工業的規模で生産できるように生産性を高めようとする研究も活発に行われている。その研究手法としては以下のものがある。

  1. 培養条件の最適化
  2. 高生産株の造成
  3. 固定化植物細胞あるいは固定化酵素による生物変換
  4. 分化誘導
  5. 微生物を作用させて生産を誘導する。
  6. 遺伝子操作
  7. 代謝物質を培地に透過させて培地から連続的に回収する。

現在までの研究成果としてアジマリシン、アントラキノン、カフェイン、ジオスゲニン、ジセノサイド、グルタミン、グルタチオン、ニコチン、ロスマリン酸、シコニン、ユビキノン、ベルベリン、 トリプディオライドなどの生産性が母植物の含量を上回るまでになったと報告され、それらの一部であるシコニンなどでは工業生産が実現している。

分化発育の制御

植物の組織培養を行う時、実際的な場面では脱分化した細胞培養と分化した器官培養とが目標となる。脱分化は、オーキシンの一種である2、4-DやNAAなどを培地に添加するだけで起こることが多く、一般に比較的容易な技術である。オーキシンのみでは脱分化しない場合でも、培地の塩類濃度 (特にアンモニウムイオン濃度) や糖濃度を高めるというような培地の改変とオーキシン処理とを組み合わせると脱分化が促進されたりもする。これに対して、分化させるのは決して簡単な技術ではない。特に一旦脱分化した細胞から不定芽や不定胚を分化させるのは非常に難しく、植物の種類によってはどのように条件を変えながら検討しても全く分化しないことも多い。分化に影響する条件は多い (表2) が、ここでは、培養環境や培地を変更した場合に分化特性がどのように変化するのかを中心にして植物の分化発育の制御を考えてみたい。

物理的条件の影響

培養環境の物理的条件を極々変更することにより、分化を制御することが可能になる。

培養適温

植物によって異なるが、 20-30 ℃ でほとんどの植物を培養できるようである。この場合、熱帯原産の植物は 25-30 ℃ というように比較的高温を好み、高山性、北方性の植物は 15-20 ℃ を好むことが多い。温度条件で分化を制御することが可能である。例えばベゴニアの芽の分化は 20-25 ℃ が適しており、 30 ℃ では著しく阻害されるが、根の分化は 30 ℃ でも阻害されることはない。

光の影響

光度、日長、波長の3つに大別して考えることができる。ベゴニアでは、光を照射することによって芽の分化が促進される。また光の光度は分化発育した植物体の形態に影響し、強光度では草丈が低く葉が良く展開した強固な植物体になるが、低照度では葉が小さく徒長した軟弱な植物体になってしまう。光の照射方法で分化を制御することも可能である。例えばフリージアの組織培養では、組織切片を最初暗黒で培養し、次いで光を照射することにより不定芽分化を著しく促進している。母植物の生育期間中の日長条件が、培養時の組織切片からの分化に影響することも知られている。

pH

pHの影響はさほど厳密なものではないので、オートクレーブ前に 5.0-6.2 の範囲に調節してあれば良いことが多い。塩類濃度が高い培地では 6.3 以上になると、オートクレーブ後に不溶性の沈滞が生じ、培地中のリン酸やマグネシウムが沈澱してしまうので注意を要する。

ガス組成

この分野の詳細な研究は少ない。植物細胞の呼吸速度は微生物に比べて著しく緩慢なので、通気量も少なくてよいが、密封してしまうと生育が停止して枯死してしまう。光を照射すると光合成により酸素を発生するので、密封容器でも生育させることが可能になる。容器内のガス組成のうちで問題となるのは培養組織片から放出されたエチレンである。エチレンは分化を抑制し、カルス化を促進する傾向が強いので好ましくないが、培地にエチレン発生阻害剤、エチレン吸収剤などを添加して培養することにより、エチレンの阻害作用を除去したり阻害作問を軽減することができる。

培地条件の影響

分化発育に影響する諸条件のうち、培地の化学的組成の影響は最も重要である。植物組培養に用いる培地には化学組成の異なるMS培地、White培地、エリックソン培地などがあり、塩類強度に差があるので、分化生育特性は異なってくる。種類の異なる培地を常に準備しておくのは大変なことなので、良く使用する培地を一種類に決めておき、植物の種類によって成分の一部を変更しながら培養すると操作が容易である。筆者らの経験では、MS培地をそのまま、あるいは成分の全部または一部の漉度を変更して用いることにより、ほとんどの植物を培養できるようである。

窒素源

NH4NO3、KNO3 などが培地に添加されており、その最適濃度は植物により異なるが、様々な植物の培養を手掛けてきた結果から見ると、窒素源の濃度を下げると発根が促進され、 濃度を高くすると芽の分化を促進する傾向がある。濃度をさらに高くするとカルスの発生が促進される。これらの現象は主としてNH 4 + の働きによるところが大きい。リン酸濃度を 2-3 倍に高めると生育を速くすることができる。

炭素源

培地には炭素源としてショ糖、ブドウ糖、果糖などが添加されるが、特にショ糖が良く用いられる。ショ糖添加濃度は 1-3 % とすることが多いが、濃度を低くする (3 % 以下) と芽の分化が促進され、濃度を高くする (3-9 %) と発根が促進される傾向が多くの植物で認められる。

植物生長調節物質

特にオーキシンとサイトカイニンは植物組織培養で長く利用される。スクーグとミラー (1957) は、オーキシンとサイトカイニンのバランスによって芽、根、カルスの形成を制御できることを明らかにしたが、これが組織培養による器官分化促進の重要な基礎技術になっている。

活性炭

培地に活性炭を添加すると芽や根の分化発育を促進することが多い。活性炭によるこれらの効果は、 i) 培養物から発生、分泌されたガスや抑制物質の吸着、 ii) 培地を暗くすることによる発根促進、 iii) 培地中のオーキシン類やサイトカイニン類の吸着、というような作用によって生じるものらしい。活性炭の添加法は結構難しく、植物ホルモンを添加してもすべて活性炭に吸著されてしまうことから、ホルモンを作用させて分化を促進しようとする場合には、ホルモンの作用が発現するに十分な処理時間を経た後に、培地に活性炭を添加して活性炭の効果を発現させるようにしなければならない。面倒なようであるが、ホルモンの作用が過剰にならずに最適処理濃度、処理時間を厳密に規定できる利点を有している。分化発育を制御する上で、ホルモン処理と活性炭処理を組み合わせることは非常に重要な技術である。

培養切片の生理的状態

分化の効率は、培養する組織切片の部位、組織の齢、切片の大きさなどによって大きな差が生じる。組織切片の大きさは数 mm - 2 cm 位とすることが多い。しかし茎頂培養の場合には 0.1-0.5 mm という著しく小さい切片を培養するので、通常の培地では培養できないこともある。このような場合には、まず生長点の採取時期、生長点の着生部位について検討するほか、培地の塩類濃度や糖濃度を下げたり、植物生長調節物質の種類、濃度、組合せを検討することで生育させることができる場合が多い。

組織切片を植物体のどの部位から得るかも重要である。例えばユリの組織培養においては、母植物の球根、花被、花茎からの芽の分化は良好であるが、葉、花糸、葯からの分化は不良であった。培養する組織の齢は若い方が長い。ベゴニアの葉の切片では、生育初期の若い葉を用いた場合の芽の形成率が 80 % 以上であったのに対し、成熟した葉では 1 % 以下であった。植物体を分化させるための材料として、カルスや液体培養細胞を用いる場合は、継代培養を繰り返すことによって分化能が次第に低下してくることが多い。一旦分化能が低下すると、培養条件のみで分化能を回復させることは困難である。またカルスから分化させた場合には変異の発生が多発するので、この点も注意が必要である。

以上のほかにも、個々の植物の種類、品種に固有の分化能力の遺伝的特性、あるいは同一の種類、品種でも季節によって分化能に周期性が見られるなど、様々な現象があるので、それぞれの現象を良く理解したうえで、培養条件を十分に検討するのが現在の技術の中での分化促進の基本であるといえよう。

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