Aritalab:Lecture/Biophysics/Molecule

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ヘムやクロロフィルは補欠分子族(タンパク質に結合する非タンパク性の小分子)の1つで、結合するタンパク質があります。それぞれポルフィリン環の中央に鉄かマグネシウムイオンが配位しており、まわりの窒素原子とは結合手がはっきりしない平面状態をとっています。(クロロフィルには炭化水素の尻尾もあります。)
 
ヘムやクロロフィルは補欠分子族(タンパク質に結合する非タンパク性の小分子)の1つで、結合するタンパク質があります。それぞれポルフィリン環の中央に鉄かマグネシウムイオンが配位しており、まわりの窒素原子とは結合手がはっきりしない平面状態をとっています。(クロロフィルには炭化水素の尻尾もあります。)
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===ヘムとクロロフィル===
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ポルフィリン環は半径 0.48 nm の平面構造で、中央にFeイオンを持つのがヘムです。ヘム a と ヘム b があり、それぞれシトクロム a, b タンパク質の活性部位に含まれています。ヘム b は 鉄プロトポルフィリン IV とも呼ばれます。クロロフィルはマグネシウムが中心にあり、疎水性の尾部を持ちます。
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いずれも環上の電子は緩く共有されており、可視光域を吸収します。
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===アミノ酸、塩基===
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塩基にはプリン (アデニンとグアニン) とピリミジン (シトシンとチミン) があります。
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グアニンはプロトンを供与できる NH2, NH グループとそれを受け取る二重結合のOを持ちます。アデニンも NH2 と、隣にアクセプターとなる N を持ちます。シトシンとチミンも同様で、これらの部位が塩基の対合に使われます。DNAとRNAとの違いは、糖であるリボースの2位に酸素があるかどうかです。Figure 5.12 にはよく出てくる糖が記されています。
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===分子間の力===
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ポテンシャルエネルギー V(x) と力 F(x) の関係は F(x) = d V(x) / dx で表されます。
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バネの場合は V(x) = k x<sup>2</sup> / 2 と書けるため、F(x) = - kx になります。バネの力は究極には原子間の力からくるものです。熱力学では多分子の系でギブスの自由エネルギーが G = H - TS ≒ (K+V) - TS と習います。力学的エネルギーが K, ポテンシャルエネルギーが V です。
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F(x) = - d G(x) / dx = ...
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===タンパク質===
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1次構造から4次構造まである。構造に関する3つの問題。
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・配列から3次元構造を予測
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・折りたたみ過程の記述
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・構造から機能の予測
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配列に変異を入れて構造変化をみるアプローチが過去20年とられてきた。インフォマティクスも利用されている。
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アミノ酸どうしはペプチド結合でつながり、この結合は平面構造を取る。この形状はφとψの二面角で表現される。
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====αヘリックス====
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ヘリックスは半径、ピッチ、ターンあたりユニット、ヘリックス内の総ユニット数のパラメータで記述されます。αヘリックスは5-20アミノ酸からなり、パラメータはテーブル5.5のようになります。Met, Ala, Leu, Glu, Lysがよく含まれ、Pro, Gly, 負のAspなどは含まれません。水素結合で安定化しますが、そのエネルギーは水和のため -2 から -6 kJ/mol しかありません。
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立体構造を作る相互作用
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#水素結合 -2 . -6 kJ/mol
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#イオン相互作用 -4 kJ/mol
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#双極子相互作用 -10 kJ/mol
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#疎水性相互作用 力を測ることはできませんが二種溶媒における分配割合から指標を割り出せます。疎水性スコアをウィンドウ幅9で計算し自由エネルギーの指標に使えます。膜貫通部位等の予測に使えます。水分子は疎水性相互作用で整列しエントロピーを下げる働きも持ちます。
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#ジスルフィド結合 タンパク質の1.4%はシステインで、酸化によってジスルフィド結合を構成します。αケラチンのようなタンパク質はFig.5.21に示すようにαヘリックスが寄り集まってジスルフィド結合でつながっています。サソリ毒のタンパク質もジスルフィド結合に富むカリウムチャンネル阻害剤です。
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βシート
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立体構造で矢印で表現されるのがβシートです。向きが並行な場合と互い違いな場合があります。βシートは線維状タンパク質と球状タンパク質の中にみられます。
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線維状タンパク質の代表はケラチンで直径7-15 nm の繊維を作ります。哺乳類はαケラチン、鳥類と爬虫類はβケラチンを持ちます。ヘリックスは3.6アミノ酸毎に1ターンするので4残基毎に疎水性アミノ酸があると螺旋状に疎水基が並ぶヘリックスを作り、ヘリックスのヘリックスを作る素地になります。
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コラーゲンはプロリン―ヒドロキシプロリン―グリシンが左巻きになったポリマーで脊椎動物に最も多いタンパク質です。グリシンの水素原子が反対側のプロリン酸素原子と水素結合して、曲がりにくい強固な構造をとります。それらが右手方向に3本よじれ合って直径 1.4 nm のヒモをつくります。これが集まって繊維になります。皮膚にはAla, Gly, Valなどからなる柔らかいエラスチンもありますが、構造はよくわかっていません。筋繊維にはモータータンパク質のような動く要素もあります(15章)。
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====球状タンパク質====
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球状タンパクはアミノ酸が密に充填された構造で繰り返し配列や規則性はありません。酵素は多くが活性サイトに金属イオンを持ちます。(ヘムのように。)これらの物質や金属はアミノ酸との相互作用でタンパク質にくっついておりヘムの場合50 kJ/mol もの力になります。Table5.9に触媒基と酵素をリストします。こうした化合物(コファクター)を失うとタンパク質の安定性も失われる場合もあります。ゆるやかに結合するものは補酵素と呼ばれます。
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タンパク質の構造は結晶のようにきまったものではなく、熱運動で揺らいでいることも知られています(ほとんどは 0.2 nm 以下)。PDBに登録される構造の多くは「動き」を可視化もできます(Fig 5.27)。
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DNAとRNA
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DNAとRNAにはセントラルドグマにそって情報を伝達し、複製、転写、翻訳、組換、修復というプロセスに関与します。DNAはAT, GCとが対合し(シャーガフ則)、二重らせんの形を取ります。Figure5.30にある形状のうちB型が一般的でZ型はGC含量が高く塩濃度が高い時にとる右巻きです。
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二重らせん構造を安定させるには水素結合だけでは不十分です。塩基隣接することで生じるスタッキングエネルギー(Table 5.11)により構造が安定しています。その地形はFigure 5.31のようになり、ここから値を測定できます。またDNA/RNAはリン酸基により負電荷を帯びています。これはらせんを解く方向に働きます。また理由は不明ですが2価のイオンのほうがDNAとよく結合します。DNAの融解温度は大体以下の式で表されます。
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Tm = 41.1 X<sub>GC</sub> + 16.6 log[Na+] + 81.5
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RNAはDNAより水酸基が多く、ウラシルはチミンのメチル基がとれた形を指定ます。そのため形状が柔軟です。4塩基から分子内ループをとることもできます。DNAとの差は構造だけでなく、1本鎖に結合するタンパク質の存在も影響します。
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===そのあと===
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遺伝子構造の説明と、tRNAの説明、リボザイムの説明。遺伝子修復の話。
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ランダムコイルとは、天然の構造から外れたものをおおまかに指す目的で使われる。

Revision as of 15:58, 11 November 2014

Contents

小さなイオン

生体に重要なイオンは H3O+, Na+, K+, Mg2+, Ca2+, NH4+, OH-, Cl-, SO42-, PO43-, CH3COO-などです。こうしたイオンは生体分子の帯電部分に対イオンとして対合します。ただその位置が固定されているわけではありません。まれに固定されている場合はX線結晶解析の結果として位置がわかります。酸と塩基は pH に従って乖離し、ときに緩衝液として機能します。

塩基と補酵素

NTP は三リン酸のため、ポリリン酸基部分に4つまで (0 ∼ -4) 電荷を持ちえます。

生体内で還元力を持つ補酵素は NADH と NADPH で、リン酸基部分で連結された2塩基、アデニンとニコチンアミド、からなります。細胞内の酸化還元状態は NAD+/NADH 比で表されます。植物では光合成によりNADP+がNADPHに戻ります。

ヘムやクロロフィルは補欠分子族(タンパク質に結合する非タンパク性の小分子)の1つで、結合するタンパク質があります。それぞれポルフィリン環の中央に鉄かマグネシウムイオンが配位しており、まわりの窒素原子とは結合手がはっきりしない平面状態をとっています。(クロロフィルには炭化水素の尻尾もあります。)

ヘムとクロロフィル

ポルフィリン環は半径 0.48 nm の平面構造で、中央にFeイオンを持つのがヘムです。ヘム a と ヘム b があり、それぞれシトクロム a, b タンパク質の活性部位に含まれています。ヘム b は 鉄プロトポルフィリン IV とも呼ばれます。クロロフィルはマグネシウムが中心にあり、疎水性の尾部を持ちます。 いずれも環上の電子は緩く共有されており、可視光域を吸収します。

アミノ酸、塩基

塩基にはプリン (アデニンとグアニン) とピリミジン (シトシンとチミン) があります。 グアニンはプロトンを供与できる NH2, NH グループとそれを受け取る二重結合のOを持ちます。アデニンも NH2 と、隣にアクセプターとなる N を持ちます。シトシンとチミンも同様で、これらの部位が塩基の対合に使われます。DNAとRNAとの違いは、糖であるリボースの2位に酸素があるかどうかです。Figure 5.12 にはよく出てくる糖が記されています。

分子間の力

ポテンシャルエネルギー V(x) と力 F(x) の関係は F(x) = d V(x) / dx で表されます。 バネの場合は V(x) = k x2 / 2 と書けるため、F(x) = - kx になります。バネの力は究極には原子間の力からくるものです。熱力学では多分子の系でギブスの自由エネルギーが G = H - TS ≒ (K+V) - TS と習います。力学的エネルギーが K, ポテンシャルエネルギーが V です。

F(x) = - d G(x) / dx = ...


タンパク質

1次構造から4次構造まである。構造に関する3つの問題。 ・配列から3次元構造を予測 ・折りたたみ過程の記述 ・構造から機能の予測 配列に変異を入れて構造変化をみるアプローチが過去20年とられてきた。インフォマティクスも利用されている。

アミノ酸どうしはペプチド結合でつながり、この結合は平面構造を取る。この形状はφとψの二面角で表現される。

αヘリックス

ヘリックスは半径、ピッチ、ターンあたりユニット、ヘリックス内の総ユニット数のパラメータで記述されます。αヘリックスは5-20アミノ酸からなり、パラメータはテーブル5.5のようになります。Met, Ala, Leu, Glu, Lysがよく含まれ、Pro, Gly, 負のAspなどは含まれません。水素結合で安定化しますが、そのエネルギーは水和のため -2 から -6 kJ/mol しかありません。

立体構造を作る相互作用

  1. 水素結合 -2 . -6 kJ/mol
  2. イオン相互作用 -4 kJ/mol
  3. 双極子相互作用 -10 kJ/mol
  4. 疎水性相互作用 力を測ることはできませんが二種溶媒における分配割合から指標を割り出せます。疎水性スコアをウィンドウ幅9で計算し自由エネルギーの指標に使えます。膜貫通部位等の予測に使えます。水分子は疎水性相互作用で整列しエントロピーを下げる働きも持ちます。
  5. ジスルフィド結合 タンパク質の1.4%はシステインで、酸化によってジスルフィド結合を構成します。αケラチンのようなタンパク質はFig.5.21に示すようにαヘリックスが寄り集まってジスルフィド結合でつながっています。サソリ毒のタンパク質もジスルフィド結合に富むカリウムチャンネル阻害剤です。

βシート 立体構造で矢印で表現されるのがβシートです。向きが並行な場合と互い違いな場合があります。βシートは線維状タンパク質と球状タンパク質の中にみられます。 線維状タンパク質の代表はケラチンで直径7-15 nm の繊維を作ります。哺乳類はαケラチン、鳥類と爬虫類はβケラチンを持ちます。ヘリックスは3.6アミノ酸毎に1ターンするので4残基毎に疎水性アミノ酸があると螺旋状に疎水基が並ぶヘリックスを作り、ヘリックスのヘリックスを作る素地になります。 コラーゲンはプロリン―ヒドロキシプロリン―グリシンが左巻きになったポリマーで脊椎動物に最も多いタンパク質です。グリシンの水素原子が反対側のプロリン酸素原子と水素結合して、曲がりにくい強固な構造をとります。それらが右手方向に3本よじれ合って直径 1.4 nm のヒモをつくります。これが集まって繊維になります。皮膚にはAla, Gly, Valなどからなる柔らかいエラスチンもありますが、構造はよくわかっていません。筋繊維にはモータータンパク質のような動く要素もあります(15章)。

球状タンパク質

球状タンパクはアミノ酸が密に充填された構造で繰り返し配列や規則性はありません。酵素は多くが活性サイトに金属イオンを持ちます。(ヘムのように。)これらの物質や金属はアミノ酸との相互作用でタンパク質にくっついておりヘムの場合50 kJ/mol もの力になります。Table5.9に触媒基と酵素をリストします。こうした化合物(コファクター)を失うとタンパク質の安定性も失われる場合もあります。ゆるやかに結合するものは補酵素と呼ばれます。

タンパク質の構造は結晶のようにきまったものではなく、熱運動で揺らいでいることも知られています(ほとんどは 0.2 nm 以下)。PDBに登録される構造の多くは「動き」を可視化もできます(Fig 5.27)。

DNAとRNA

DNAとRNAにはセントラルドグマにそって情報を伝達し、複製、転写、翻訳、組換、修復というプロセスに関与します。DNAはAT, GCとが対合し(シャーガフ則)、二重らせんの形を取ります。Figure5.30にある形状のうちB型が一般的でZ型はGC含量が高く塩濃度が高い時にとる右巻きです。

二重らせん構造を安定させるには水素結合だけでは不十分です。塩基隣接することで生じるスタッキングエネルギー(Table 5.11)により構造が安定しています。その地形はFigure 5.31のようになり、ここから値を測定できます。またDNA/RNAはリン酸基により負電荷を帯びています。これはらせんを解く方向に働きます。また理由は不明ですが2価のイオンのほうがDNAとよく結合します。DNAの融解温度は大体以下の式で表されます。

Tm = 41.1 XGC + 16.6 log[Na+] + 81.5

RNAはDNAより水酸基が多く、ウラシルはチミンのメチル基がとれた形を指定ます。そのため形状が柔軟です。4塩基から分子内ループをとることもできます。DNAとの差は構造だけでなく、1本鎖に結合するタンパク質の存在も影響します。

そのあと

遺伝子構造の説明と、tRNAの説明、リボザイムの説明。遺伝子修復の話。 ランダムコイルとは、天然の構造から外れたものをおおまかに指す目的で使われる。

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