Aritalab:Lecture/Biochem/Proteomics

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Proteomics

超低流速LC

プロテオミクスでは、細胞からのタンパク質抽出物をトリプシン等プロテアーゼで処理し、数十から数百万のペプチド断片に分解する。これを網羅的に計測するため、超低流速LCを用いる。ナノリットル程度の流速で分離すれば、単位時間あたり質量分析計に導入される試料の量が少なくなるので高濃度を達成できる。


プロテオミクスでは、超低流速 LC-MS を用いて数時間の測定で約 1000 個のタンパク質同定が可能になっている。検出感度は一般的に f mol (10-15) レベル、質量計測の誤差は数十 ppm になる。

Standard Hybrid Platforms in Proteomics
Type Characterstics Advantages Usage
QQQ
三連四重極
High speed 測定質量を絞ると更に高感度 SRM 用
IT
イオントラップ
High sensitivity MSnが可能 同定用
Q-TOF
四重極-飛行時間型
High accuracy バランスが良い 同定、定量用
Orbitrap (IT-FT)
High accuracy & sensitivity  検出器を二つ持つ  同定、定量用


タンパク質の測定法

SRM (Selected Reaction Monitoring), MRM (Multiple Reaction Monitoring)

三連四重極質量分析計は測定する質量範囲を狭めて感度を高めることが可能です。

  1. 三つの四重極の一段目で、特定質量のペプチドだけを選択
  2. 二段目で、アルゴンガスと衝突させ、MS2フラグメントを生成
  3. 三段目で特定の断片化ペプチドだけを選択

これには、あらかじめ測定する質量値を入力しておきます。この処理を複数のターゲットに対しておこなう場合は MRM と呼ばれます。


リン酸化タンパク質の測定

UniProtKBデータベースによると、2 万タンパク質のうち 6 千タンパク質がリン酸化されています。これらのリン酸化タンパク質は、いくつかの手法で濃縮することができます。

  • 3 価の金属イオン (Fe3+, Ga3+ など) を用いた固定化金属イオンアフィニティークロマトグラフィー (Immobilized Metal ion Affinity Chromatography: IMAC)
ただし金属イオンはペプチド表面にあるヒスチジンも捕らえるため、目標タンパク質の網羅性は下がります。
  • 酸化金属 (TiO2, ZrO2, Al2O3) などを用いた酸化金属クロマトグラフィー (MOC)

さらに、カラムと溶媒の両方にヒドロキシ酸[1]を加えておくと、MOCの結合強度が

酸性タンパク質 < ヒドロキシ酸 < リン酸基

となるためにリン酸化タンパク質を効率よく濃縮できます。これを Hydroxy-Acid modified MOC = HAMMOC 法といいます。

細胞表面タンパク質の測定

ビオチン試薬はペプチドにおいてリジン残基の側鎖(アミン)と反応して網戸結合を作ります。これを利用して細胞表面のタンパク質だけを濃縮できます。

ビオチンビーズ
  1. 培養細胞にビオチンを加えてラベルしたあと、超遠心機で膜画分をとってくる
  2. トリプシンで処理した後にアビジンカラムで生成
  3. LC-MS解析すると、108 程度の細胞から、200-300 のタンパク質を同定できる

タンパク質の定量法

SILAC 相対定量法

SILAC (Stable Isotope Labeling using Amino acids in Cell culture) は定量精度が高く実用的です。

  1. 標識したい細胞培地に 13C ラベルしたアルギニン、リジンを入れる
  2. 抽出したタンパク質を、通常の培地で培養した細胞由来のタンパク質と混ぜる
  3. トリプシンで処理し、LC-MS で測定

ただし、アルギニンが多いと生体内でプロリンに変換されるため、濃度を最適化することが重要。

ICAT 化学標識法

ICAT (Isotope-Coded Affinity Tag) は細胞を培養する必要がないため、動物組織や臨床検体にも使えます。

  1. 別々の試料からタンパク質(ペプチド)をそれぞれ抽出する
  2. 片方には同位体標識をした化合物、もう片方には標識していない化合物を結合させる
  3. 混合してトリプシン処理したものを、LC-MS で測定

バリアントが考案されています。

iTRAQ 法

レポーター、バランサー、アミノ酸反応基を含み、質量の総計が同じになるように設計された iTRAQ試薬 4 種を使って標識します。

  • <L+3>− < R >− peptide
  • <L+2>− <R+1>− peptide
  • <L+1>− <R+2>− peptide
  • < L >− <R+3>− peptide

4つのサンプルを標識後に混ぜて比較すると、MS解析では全てのラベルしたペプチドが単一のピークとして検出されますが、MS/MS解析をすると<A>から<A+3>までのレポーターイオンが観測され、定量データが得られます。ただし酵素消化後や濃縮をした後に標識するのが一般的で、精度は下がらざるをえない。

文献、参考
  1. TiO2には乳酸、ZrO2には3-ヒドロキシプロピオン酸を用います。
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