Aritalab:Lecture/Basic/Report

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論文・レポートの書き方

大学に入ると長いレポート(といってもA4用紙に5枚ぐらい)を書かされます。レポートを課す先生側は研究者として論文を書き慣れているため、その形式を「論文形式で」とか「自分のやったことがわかるように」と簡単に言う場合が多いです。しかしほとんど書いた経験のない学生の側からすると、内容のあるレポートを書き上げるのは一苦労でしょう。ではレポートをどう書けばよいのか、その形式を簡単に紹介します。 みなレポート書く際には苦労します。その苦労を上手に表現できることが重要です。


論文・レポートには決まった書き方がある

章立てをしよう

学術論文はたいてい

  1. Introduction (またはBackground)
  2. Results
  3. Discussion
  4. Materials and Methods
  5. References

という構成になっています。構成は分野によって異なります。例えば Materials & Methods といった要素がない数学や計算機科学の場合は

  1. Introduction / Background
  2. Related Works
  3. Results / Algorithms 等
  4. Discussion
  5. References

となるでしょう。数学の問題や証明が課題となっている場合、Related works や Discussionは不要かもしれません。章立てはレポート内容にあわせましょう。いずれにせよ、適切な「章立て」は必要です。

章の中身を書き分けよう

次に各章で書くべき内容を簡単に解説します。レポートは、それを初めて読む人でも内容がわかること、そして自分が実施したことを(大まかにでも)再現できるようにすることが重要です。

Introduction/Background
日本語では「序論」や「背景」とも書きます。レポートの場合はまず課題の内容を記し、その位置づけや重要性を簡潔に記してください。学術論文の場合は半年ぐらい文献調査に費やします。その結果を冒頭に記述するので「背景」という見出しになります。
良くないレポートの書き出し 良いレポートの書き出し
私は〇〇を題材に選びました。これは私が以前から気になっていた内容で、常々〇〇したいと考えを温めてきたものです。そこで〇〇よりデータを収集し〇〇しようと考えました… 課題: 〇〇のデータを収集して〇〇処理すること

利用データ: 次のサイトより取得 …

背景

〇〇とは東アジアを中心にみられる自然現象であり、様々な角度より…

左は感想文のスタイルで書き始めていますが、自分の主観が前面に出ていて客観性がありません。日本語で「~と考えました」と書く人は多いですが、そもそもレポートとは考えたことを記載するものです。わざわざ書く必要はありません。 それに対して右はまず取り組む課題と利用データを手短に示した上で「背景」の記述を始めています。

Results
日本語では「結果」や「結論」になります(結論が背景の次にくることに注意)。自分が課題に取り組んで得た結果を記してください。数学の証明問題であれば、数式を含めた証明の道筋を記述します。プログラミング演習であれば、プログラムの概要と得られた結果を記述します。ここでプログラムのソースコードをそのまま貼り付けたり、あるいは逆に結論だけを記載してはいけません。プログラムの概要と、そのプログラムに行き着いた経緯を記すことが重要です。他の人がその内容を読んで、結果を再現できるように解説します。内容は可能な限り客観的にします。
良くないレポートの結果 良いレポートの結果
結果を図1に示します。うまく分類することができました。◯◯と〇〇は似たような傾向がみられます。この原因として考えられるものに〇〇があるかもしれません。 分類の結果、◯◯と〇〇は同じグループとなった(図1)。この結果はパラメータを◯から◯まで変化させても変わらなかった。このパラメータは◯◯をモデルしており、その値の変化は〇〇に相当している。

左は結果の解釈を図1に任せてしまっており、何がうまく分類できているのか、どんな傾向が見られるかが文章で表現できていません。図表の解釈や印象は人によって思いのほか異なります。文章のみでできる限り客観的に記載し、図は補助的に利用しましょう。また原因の考察や推測は「結果」ではなく「考察」の部分に記載します。

Discussion
得られた結果の「考察」です。数学の問題であれば応用先、プログラミング演習であればエラーの可能性や実行時間の考察、実現できなかったことや結論の一般性、今後の課題などをここに記します。ここに個人の見解や意見を反映させてもよいです。要するに、ある程度の私見が入る部分になります。
良くないレポートの考察 良いレポートの考察
今回のデータはフォーマットが揃っておらず、修正にとても苦労した。非常におもしろい課題だったが、個人的にはもう少し課題の出し方を工夫してほしかった… データを扱う際にはフォーマットの統一が重要である。これを手作業で実施することは難しいうえ、各所で同じ作業を繰り返すことは非効率であろう。興味深いテーマであることと解析の簡便さは必ずしも両立しない…

同じ内容を記載するにも「苦労した」とか「こうしてほしい」と書くと自分の意見になってしまいます。一般性をもたせる書き方をするだけで(同じ意味でも)立派にみえるでしょう。

Materials and Methods
生命科学の実験に関する論文では、ここに試薬や実験手続きの詳細を記します。証明やプログラムの内容が煩雑になる場合は、この部分に詳細を書いても良いでしょう。
References
日本語では「参考文献」にあたります。参考にした論文や書籍は必ず記述してください。参考にすることは「書き写す」こととは違うことに注意しましょう。また文献情報は読んだ人がその文献を探し出せるように記述することが必須です。参考文献の情報がきちんと書かれていると、印象がとても良くなります。
  • 書籍を引用する場合 ... 著者、書名、出版社、出版年(出版地)を記してください。場合によっては文献として利用した章やページの番号を記すとより親切です。
    • 木下 是雄 「理科系の作文技術」 中公新書, 1981
    • Darwin C "On the Origin of Species by Means of Natural Selection, or the Preservation of Favoured Races in the Struggle for Life" John Murray, 1859, London
  • 論文を引用する場合 ... 著者、論文名、雑誌名、巻号ページ、年を記してください。(Science誌やNature誌のように誌面が非常に限られる雑誌は論文名を省略しますが、大多数の学術論文は引用する論文のタイトルまで詳細に記述します。
    • Watson JD, Crick FHC "A structure for Deoxyribose Nucleic Acid" Nature 171:737,1953
  • ウェブサイトを引用する場合 ... サイトの概要と http アドレスを記載します。アドレスだけを記載しないように。
  • SNS や blog を引用したい場合 ... 基本的に、書き換えや削除が可能なSNSやblog記事は引用できません。

論文・レポートの文体

レポートを書く際に文体は重要です。日本語なら「ですます」調でも「である」調でも構いませんが、全体を一つの文体で統一しましょう。英語で書く場合、ラテン語系の言葉で書くか、口語調(アングロサクソン系)の言葉かの選択になります。両者が混ざると文章としておかしな雰囲気になります。

Style Manual

論文の書き方は時代背景や分野によっても大きく変化します。論文や原稿の書き方を示したものはStyle Manualと言われ、以下のものが有名です。

  • "The Chicago Manual of Style, 15th ed." University Of Chicago Press, 2003 (オンライン版)

アメリカ化学会の出す論文のスタイルマニュアル

  • Coghill AM, Garson LR (2006) "ACS Style Guide: Effective Communication of Scientific Information, 3rd ed." American Chemical Society and Oxford University Press: Washington, DC and Oxford.

受身か I か We なのか

英語論文において、客観性を保つために論文は受身で書くというスタイルが昔は主流でした。しかし最近は、"We tested ..." のように主語を明示的に書くことを推奨する英文誌もあります。例えばGenome Research誌のガイドラインには "We prefer the manuscript be written in active rather than passive voice. " と書かれています。 さらに、単著でも主語は we にするというスタイルが昔は常識でした。しかし最近は、I で記述する論文も見かけます。論文の場合は各雑誌の編集方針に合わせてください。学位論文の場合は単著であることを強調するので I で書くことが多いようです。日本語のレポートで「私は」と書いても全く問題ありません。ただし「面白かった」とか「困った」といった主観的な言葉は極力避けましょう。

読むとためになる参考書

  • 木下 是雄 「理科系の作文技術」 中公新書, 1981 (古い本のため受け身で書こうとか、今の時代にそぐわない内容もあります。それでも非常に勉強になります。)
  • Strunk Jr W, White EB "The Elements of Style, 4th ed." Pearson Education Company, 2000 (これは全ての学生に勧めている名著です。)

プログラミング課題のレポート

プログラムの課題を出すと、自分で書いたプログラムや実行結果だけを送ってくる人がいます。 いったん課題を提出された側の立場にたって、それで成績評価が可能かどうか考えてみてください。(無理ですよね。) 自分がどのような工夫を施して、それをどのように実現したのか、過程を書いた上でプログラムを添付するようにして下さい。

またプログラムを提出する際はソースコードを添付します。実行形式を添付されても、何もわかりません。(こちらで実行ファイルを開くことはしません。)

困った課題提出メールの例
学籍番号○○の××です。課題を提出します。

以下が出力結果です。プログラムコードは添付します。

(としてテキストファイルが添付されている。)

入力

...


出力

...


よってうまく動いているようです。


好ましい課題提出メールの例
学籍番号○○の××です。○月×日の課題を提出します。

PDFの中に考察とプログラムコードがあります。

(としてPDFが添付されている。)

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